120万円の自転車が逝った日
夫の自転車が逝った。
レースで落車に巻き込まれ、フレームにヒビが入り、フロントブレーキと前ギヤ変速機もお亡くなりになった。
ホイールもどうやらダメらしい。
BKB48(分割払い48回)で購入した自転車。
半年で逝ってしまったので、心のダメージもでかい。
セミオーダーで作って塗装もデザインし、息子の名前も入れたその名も「息子号」。
速くてかっこよくて私も「いいな」と思っていたので、私も残念。
そしてローンだけが残った。
悲しい話だがこれは現実だ。
自転車にも適用できる金利の低いマイカーローンを夫が探し出して買ったもの。
息子が生まれた直後だったので「子どもが生まれたばかりなのに、ローンなんか組んで…って思ってる?」などど言う夫が面白かった。
エキセントリックな割に常識的なところもあり、よく気がつく人なのだ。
多少思うところもあったけれど、レースでいい結果を出してして、本人にとって今必要なものなんだろうなと感じたので特に止めなかった。
実はこういうハイエンド車は落車なぞにはほぼ無縁の真のトップ選手しか買わず、半年で大破させた客がいることにメーカー側も戸惑っているらしいと後で聞いた。
周りに趣味人が多く、趣味に100万くらいかけるのもまぁアリかな、と思っている私の感覚を見直した方がいいのかもしれない。
で、ローンである。
ローンだけが残ったので、また同じレベルの自転車をローンで買おうとするなら全力で止めようと思った。
今でもギリギリなのでそんな余裕はない。
ところが夫は「次は鉄のフレームかな」とあっさり。
ハイエンド車に乗る、という経験を出来たので(失う経験もしたので)それで満足らしい。
ほっとした。
なかなか面白い夫である。
冷静に考えれば、レース用の自転車は以前乗っていたものがあったのだった。
それをすっかり忘れていたので、夫の心痛を考えてはやたら気を使いすぎ、無駄に疲れ果ててしまった。
ちなみに最初に「フレーム折れた」と聞いて心配したのは夫の体だ。
フレームが折れるほどの落車ということは、怪我もしてるんじゃないか。
幸い擦過傷と打撲程度、ということでホッとしたが、後で病院に行ったら肋骨にヒビが入っていた。
当時の状況を聞くと、目の前で落車が起こり、巻き込まれて背中から落車。
平均時速40〜50キロで走っているからこれはもう仕方ない。
転んだ自分の上に息子号が乗っかり、そこに後続の人や自転車がどんどん突っ込んできたとのこと。
もう完全に自転車が身代わりになってくれたのだと思う。
これで体がもろに衝撃を受けていたら、肋骨が折れて内臓が傷ついていたかも。
それに比べたら全然おっけーだ。
落車して自転車が逝って、完走ポイントすら得られなかったので本人は意気消沈していたけれど、この程度の怪我で済んだことを私はありがたく思う。
夫は心身ともにダメージがあるけれど、力強く生きて欲しい。
ローン返済とレース環境を整えるため、働き方、稼ぎ方を見直すことも考えているようだ。
(落車を避けきれなかったのは、日々の長時間・ほぼ休みのない労働の疲れもあるのだろう)
私はなんだかんだ言っても会社に雇われ、いいように使われるくらいが気楽なタイプだけど、夫は大組織には合わないが賢くクリエイティブなタイプなので、今後の動向に期待したい。
自転車は逝ってしまったけれど、それを買ったことで自転車屋さんがすごく可愛がってくれて、パーツやホイールを格安でおろしてくれたり、遠征時に車を貸してくれたりした。
あと販促品の洗剤をたくさんくれて私が喜んでいる、と伝えたらさらに追加でくれたりもした。
自転車仲間にも面白がられてますます人との繋がりが強くなった。
体育会系というわけではなく、どちらかというと不思議系なのに、謎の可愛いがられ力をもつ夫はつよい。
物質的には失ったけど、得たものの方が大きかったんじゃないかな。
※この記事に頂いた投げ銭だけは、夫の自転車ローンの返済に使おうかなと思います。
(他の記事のものは主に養育費か私の癒しに生まれ変わります)
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