晴れ、ときどき バトル
管理員さんに快く働いて活躍してもらうことが、マンション担当者の職務の一つだ。
管理員さんは、マンション管理の要であり、居住者さんからのマンション管理満足度を大きく左右する。
管理員さんさえしっかりしていれば、担当者が少々間抜けでも新人でも、そのマンションは“取扱注意マンション”にはならない。
わたしは、管理員さんの仕事がスムーズに行えるよう細心の注意を払って、最大限のバックアップを行うことを肝に銘じて業務に当たっていた。
しかしながら、どんなに敬意を払い協力してもすべての人から受け入れられることがないことはこの世の常だ。
わたしもごく数人だったが、どうしてもうまくいかない管理員さんがいた。
なかでも一人の方と神経をすり減らすバトルを半年ほど続けた経験がある。
男性の管理員さんの中には稀に、年下のそれも女性の元で働くことに拒否反応を示す方がいる。当然、わたしの依頼は聞き入れられず、他の同僚(管理員さんや清掃員さん)との関係も上手くいかない。
この、管理員さん同士(管理員さんと清掃員さん同士)の関係を良好に保つこともフロント(マンション担当者)の職務の一つであるのに、その担当者であるわたしと管理員さんがこじれた関係になってしまい、非常に厄介だった。
担当者や同僚の仕事ぶり、理事会での発言それら些細なことをあげつらい、わたしの上司に報告する。上司ならまだよいが、理事長や居住者に報告したりした。
理事会でも、その管理員さんが
「さっさと決めてしまいましょう」とか、
「これでいいですね」とか、仕切ってしまう。
自分の理解する方法で理事会を運営しようとするのだ。
あるときは、提出された総会の議決権行使書に〇がついていない項目に関して、電話までして、賛否を確認し自分で丸を付けてしまった。
(賛否に〇をつけずに意思を表明する方もいるというのに・・・)
とどめは、火災報知器点検の日程調整票を提出しなかった住戸に対し、当日押しかけて業者に点検をさせた上、業者が退室した後もその住戸に留まり、一人で留守番をしていた若い女性の居住者を怖がらせたというのである。
管理員業務にはコミュニケーション能力が必要だ。これは間違いがない。
居住者と良好な関係を築くだけでなく、適度に距離を保ち、場合によっては毅然とした態度で臨み、その上で信頼関係を構築する必要がある。
管理会社で働いていた頃のわたしは、同僚である管理員さんたちに支えられて業務をこなしてきた。
だから、「支え」が「揚げ足取り」になったとき、いっぺんに業務出来なくなった。
その管理員さんのいるマンションに足が向かわなくなってしまったのだ。
結論から言うと、そのバトルになった管理員さんは他のマンションに移動になった。
そしてわたしは、人間関係には努力では超えられない感情の壁があり、他のフロントのようにドライに処理するには、わたし自身が未熟であることを思い知った。
しかし、そんなことがあっても、管理員さんをバックアップし、よい関係を構築するんだ!というわたしの方針に少しも揺らぎはなかった。
それは、良好な関係がいかにスムーズな業務を可能にするのかを、多くの管理員さんとの経験から学んでいたからだ。
その点で、わたしは非常に幸せ者であった。