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管理員さんの洞察力 とある大規模修繕工事のはなし

わたしがマンションのフロント業務に従事していた頃、同僚であり、チームメンバーである管理員さんにはとても恵まれていた。

中でもお一人、とても優秀な人がいたのでエピソードの一つを紹介したい。

当初、そのマンションは大規模修繕工事を控えていたが、居住者の間で工事に対する盛り上がりに欠けていた。
ある日、新しく所有者になったと言う方が管理室に挨拶に来て、「わたしは仕事上大規模修繕工事に関して知識があるので、理事会の理事に立候補したい。」と申し出られた。

マンションの所有者で理事に立候補したい人は珍しい。少なくともそのマンションではめったにない申し入れだった。それも引っ越してきたばかり・・。

管理員さんは「このような申し入れがあった。」とすぐに報告してくれた。当時、私は特段引っ掛かりもなく、「珍しい人もいるもんですね」と返事しただけだったが、管理員さんは「なにかあるかもしれない」と心に引っかかったようだった。

そのマンションでは管理組合の理事は輪番制となっていたので、立候補は出来なかった。その旨、例の所有者さんに返事をしたが、「それでも理事会に出席したい。」と申し入れられた。

結果を先に書いてしまうと、その所有者さんは、当時流行っていた大規模修繕工事の利権に絡む新手の会社に勤めていて、大規模修繕工事直前のマンションの所有者となり、理事会に入り込み、特定の業者さんに工事を誘導する役目を果たすことを生業としている人だった。
(実はこの部屋の所有は企業名であったが、その企業名でnet検索するとすぐにその手法が明らかになった)

管理員さんは、「なにかおかしいな」と直感で感じ取り、それを都度報告してくれた。この「引っ掛かり」を軽視せず、以後の出来事と結びつけて警鐘を鳴らす能力は、管理員さんの人生経験からくるものであるだろうし、常にマンションのことを気に掛けるまじめさがなければ発揮されないだろう。

紆余曲折はあったものの、そのマンションは管理員さんと理事長や理事会役員さんの協力が功を奏して、このような生業の方の介入を防ぎ、大規模修繕工事を乗り切ることができた。

わたしは、このとき本当に管理員さんの力の程を思い知った。管理員さんの活躍はマンションの居住者さんや管理組合からの信頼を得る原動力であり、管理組合が動いてくれなければ、おかしな業者さんの付け入る隙を与えたことだろう。

この騒動は、一冊の本にできるほどだとわたしは思っているのですが・・・。
機会があれば、詳しく書こうと思う。

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