シルバーシートを眺むれば。
今年の春の事故が原因で自分の身体の大半はコルセットで固められた。
支えるための杖もある。
少し歩けるようになってきてからは電車移動で通院するようになった。
生まれて初めて自分がシルバーシートで席を譲られる側になった。
実際に立っているだけで冷や汗が出るほど辛い状況ではあったものの、「ホラ、俺、体が悪いんだぜ」と堂々とシルバーシートの前で立っていていいのか、最初はちょっとした戸惑いがあった。
それでも電車か揺れる度に痛みがくるので、シルバーシートに頼らざるを得なくなった。
気づいてみたら自分はシルバーシートウォッチャーになっていた。
まず圧倒的に若者が座っていることが多い。
そして大半がスマホをいじっていて上を見ようとしない。
次に多いのはシルバーシートに座りながら寝ている(目を瞑っている)若者。
こちらも当然、席をゆずることがない。
そのうちにどのくらいの割合で席を譲ってくれるのかが気になった。
見た目基準になってしまうが、大体10代〜40代くらいの元気そうな層がどのくらい席を譲ってくれるのか。
100人カウントしてみた。1人だけだった。30代半ばと思われる女性1名。
有難う、お嬢さん。
では年代が変わったらどうなのだろう?
50代〜老齢世代。
これは100人数えるまでもない。10人数える前にみんな席を譲ってくれる。
7〜8割と言ったところか。
何度か、年配の女性にも席を譲ってもらった。そのうちのお一人にはさすがに申し訳ないので遠慮しようとしたのだが、
「どう見てもあなたの方が身体が悪いでしょ」と大変気を遣って頂いた。
人情が身に沁みる瞬間だった。
他のケースとして、かなりの確率で外国人の方は席を譲ってきてくれる。
自分がどんなに大きい旅行用の荷物を持っていても声をかけてきてくれる。
片言の英語だって、その気持ちは伝わってくる。本当にありがたい。
自分はそれまでに他人に対して年齢で偏見を持つ方ではなかった。
しかし全体的にここまであからさまだと、世代によって他者に対する気の遣いように明確な認識の違いがあるのかなぁと思わざるを得ない。
もう一つ、何度か見かけた光景。シルバーシートが老人たちや身体の不自由な方々でごった返していることがあった。
6名しか座れない場所にどう見てもそれを必要としている人たちが10人以上溢れている。
そういう人たちばかりの時はその中で席を譲りあっているのだが、一番ひどかったのは若者たちが独占し、まったく譲ろうとしない光景。
何度か自分も声をかけようとしたが、なかなか無視を決めている輩に声をかけるのは大変だ。
ある駅で電車から降りた時、シルバーシートに座っていた若者たちと一緒に降りたことがある。そこでの彼らの会話を偶然聞いてしまったことがあった。信じられない内容だった。「爺さん、婆さん、普通に席譲ってもらえると思って立ってんのウゼエんだよ。俺らの方が疲れてるってんだよ」。何と確信犯もいるのか……
これからどんどん高齢化が進んでいく時代、できることならば一車両丸ごとシルバーシートなんてのがあると良いなぁと思う。
それと今の日本の若者にどうしたら情操教育を施していけるかについて考えるのも急務であるように感じる。