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『かがみの孤城』に学ぶコミュニティの大切さ
2024年、子どもの自殺が過去最多となった。
2024年、子どもの自殺者数が過去最多を記録した。
原因として最も多かったのは「学校問題」(44%)で、学業不振や進路の悩みが主な要因とされる。次いで「健康問題」(36%)、「家庭問題」(19%)が続く。
この事態を受け、国は子ども1人1台に配布されたタブレット端末を活用し、「死にたい」「虐待」といった約5000の登録ワードを検索した際に、相談窓口の連絡先などを表示する「SOSフィルター」を導入した。しかし、そんな検索をしている時点で、すでに心が追い詰められている可能性が高い。これでは根本的な解決にはならないだろう。
出生数は過去最少、自殺者数は過去最多。この重大な問題に、もっと本気で向き合う必要がある。
根本的な問題とは何か?
私は 「疎外感」 こそが、子どもを追い詰める根本的な要因だと考える。
大人になってからも、「学校という閉鎖的な環境で、好きでもない人とうまくやらなければならないのが苦痛だった」という声をよく耳にする。特に日本の学校文化は、「カースト制度」 のようなヒエラルキーが生まれやすく、それが疎外感につながることも多い。
子どもは精神的にも経済的にも自立しておらず、他者に依存せざるを得ない。だからこそ、家庭や学校など限られたコミュニティで疎外感を感じると、逃げ場を失い、心を病んでしまうのではないだろうか。
「依存先」を増やすという解決策
では、他者に依存するしかない子どもは、どうすればいいのか? 私は 「コミュニティを増やすこと」 が最も有効な解決策だと考える。
数年前、辻村深月の『かがみの孤城』という作品を読んだ。今まで読んだ本の中で一番泣いた作品だ。ぜひ読んでほしい(映画化もされている)。
簡単なあらすじを紹介すると——
中学1年生の安西こころは、いじめを受けて不登校になり、フリースクールにも通えず、自室に引きこもる生活を送っていた。そんなある日、鏡の向こう側に「孤城」という不思議な世界が広がり、そこには同じような悩みを抱える6人の中学生がいた。彼らは「願いの鍵」を探すという共通の目的を持ち、次第にお互いを支え合う関係を築いていく。
この物語が示しているのは、「似た境遇の人が集まることで、疎外感は和らぎ、居場所が生まれる」 ということだ。新たなコミュニティに身を置くことで、人は救われるのだ。
私自身の経験
私自身、疎外感を味わったことがある。
小学生の頃、所属していたスポーツチームで、同学年5人の中で私だけ市の選抜に落ちた。みんなが選抜の練習や試合に行く中、私はチームの下の学年と混じって練習するしかなかった。選抜落ちを告げられた日のことは今でも鮮明に覚えているし、人生で一番悔し涙を流した。
さらに、同学年のブラジル人の友達が誕生日パーティーを開いたとき、私だけ呼ばれなかった。陰湿な仲間外れだった。
それでも 「毎日が辛い」「苦しい」 とは思わなかった。それは、小学校に仲の良い友人がいて、毎日のように遊んでいたからだ。別のコミュニティがあったことで、心のバランスを保てたのだ。
この経験からも、「コミュニティづくり」と「そこにどう人を引き込むか」をもっと議論すべきだと強く思う。
半ば強制的にコミュニティへ
例えば、宗教もひとつのコミュニティだ。
フィリピンに留学した際、毎日のように教会に人々が集まり、祈りを捧げ、歌い、楽しそうに食事をしている光景を見た。宗教のように、人々が自然と集まり、つながる仕組みがあるだけで、人は孤独になりにくい。
だからこそ、どんな形であれ 「半ば強制的にでも、子どもたちを新たなコミュニティに引き込む仕組み」 が必要なのではないか。フリースクール、オンラインのつながり、地域活動、スポーツクラブ、趣味のグループ——選択肢はいくらでもあるはずだ。
「SOSフィルター」に頼るのではなく、子どもたちが自然と頼れる「人」や「場所」を増やしていくこと。それこそが、本当に必要な対策なのではないだろうか。