成功[インスタントフィクションその15]


「本日未明、不信任決議案が提出され〜」
「本日時点のコロナウイルスによる死者は〜」
「宇宙旅行の権利がオークションで〜」
「大坂なおみ選手が精神的な〜」
「新庄剛志さんが女性と〜」
「狩野英孝さんが一般女性と〜」

妻が見てるテレビはいつだって情報をくれる。いろんな情報があって、目まぐるしく世界が進んでいることをいつも私に知らせてくれる。たとえそれが望んだものでなくたって。
今日は富嶽を使う日だったな。どんな結果が出るだろう。この日のために幾度も書いたコードを確認した。目を皿にするなんて言葉を聞いたことはあったが、こういうことではないだろうかと思いながら鏡を見ると、そこには目が真っ赤な男が立っていた。これではまるで血眼ではないか。
この世界にはいろんな情報が溢れている。望んでないものは手に余るものや背負いきれないもの、知らなくたって良いことや知りたくないものまで、調べればなんだって出てきてしまう。でも私が望むものに限っては何の答えもくれない。それは世界中の誰もが知らないことで、調べてもわからないもので、だから自分で答えを出すしかない。世界中の人が知っていることになんの価値があるだろう。くだらない論争に加わってなんの役に立つだろう。私は世界の常識など知りたくはない。世界が知らない私だけの何かが掴めれば、世界に対して自慢できれば、私は満足だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?