![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62859116/rectangle_large_type_2_91b5d721b7bb32085d27dc6d38dbfb25.jpg?width=1200)
地域のつむぎ手の家づくり|家とまちとの良い関係を大工がつくる<vol.21/丸正渡邊工務所:山梨県甲府市>
【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。
今回の<地域のつむぎ手>は・・・
山梨県甲府市の丸正渡邊工務所は、創業以来ずっと“つくること”に軸足を置き、建築家やゼネコンとコラボしながら、毎回異なる規模・種類・デザインの建物を数多く建築してきた職人集団です。同社のビジョンは「技術とチームワークで山梨一の大工集団となる」。4代目社長・渡邊正博さんは、「つくること」に軸足を置いて、設計デザインは社内に専門スタッフを置かず、そのお客様の要望や人柄に一番合う地元中心で活動しているパートナー建築家とマッチングし、家づくりを行っています。多様なデザインの設計者と仕事をするので、さまざまなスタイルの住まいが完成します。どんな要望にも対応できる地元の工務店として、小さな修繕からリフォームなど困りごとを何でも相談してもらえる「地域の御用聞き」的な存在でありたいと思っています。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62858807/picture_pc_8059443f4c026cf8f4f5d52c727f2e5f.jpg?width=1200)
丸正渡邊工務所の4代目社長・渡邊正博さん。
意匠と性能を両立した、パッシブデザインの住まい
2019年には、「この甲府盆地で、太陽と上手に付き合いながら、快適・健康・省エネ・省光熱費を叶える住まいをずっとつくり続けてきた会社として、“意匠と性能の融合”に挑戦してみたかった」と、設計を建築家の伊礼智さん、パッシブデザイン監修を野池政宏さんとコラボレーションし、性能をとことん追求した「甲府の家」を建築しました。目に見えるもの(=意匠)、見えないもの(=性能)、住まいにはその両面が大事だというメッセージも伝えたかったのだといいます。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62859784/picture_pc_2dfc1234aa1069c63251b449386dcf1c.jpg?width=1200)
南側外観は、冬の日射取得のために大開口を設けた。
ガレージと低い塀、植栽にさりげなく囲まれた庭が
まちといい距離感を保ちます。造園は荻野寿也景観設計。
この「甲府の家」の断熱性能は多くの住宅会社が目指すHEAT20のG2相当。これは国が定める次世代省エネ基準の断熱性能を大きく上回り、冬の暖房負荷は実に約半分になるといわれている高い断熱レベルです。また、気密も0.96で高気密といわれる1.0未満をクリアしています。日射取得と日射遮蔽、空調計画もしっかりと考えられており、太陽と上手につきあうパッシブデザインを取り入れた高性能な住まいを実現しています。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62859819/picture_pc_56d85395e12497f157d4202d57baf619.jpg?width=1200)
吹抜けのあるダイニングを中心に
縦横に空間が広がる。
左上のスペースは、吹抜け上部の窓の開閉や
掃除をするためのキャットウォーク。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62862899/picture_pc_7803e6155996aa83c1748844d5789608.jpg?width=1200)
2階ホールに設けられたスタディコーナー。
すぐ下はダイニングで上下階でコミュニケーションがとれる。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62862845/picture_pc_de0b5af56cd022acea563508953076e1.jpg?width=1200)
道路に面した西側外観。ガレージと庭の間には、
沖縄の民家に見られるような低い壁(ヒンプン)で
緩やかに仕切り、住居は敷地の北側に配置。
次世代につなげる大工育成とものづくり
同社の一番のこだわりは、「大工を育て、つくることに特化すること」。設計者を育成してくれる場所はたくさんありますが、職人をきちんと育成してくれるところはほとんどないのが現状だそう。また、同社は大正時代から現在に至るまで大工集団として活動してきました。その大工は2015年から2030年にかけて40%減り、全国的に不足していくと言われています。「うちにしかできないことは何かと考えたときに、やっぱりつくる人を育てる道を選ぶべきだと考えました。大工をしっかり正社員として採用してあげないと、なり手はどんどん減ってしまう。安定して働ける環境がないと、せっかく大工になっても県外に流れてしまう」と渡邊社長は話します。そこで、地元の大工を増やしていきたいと考え、6年前から大工の社員化を始めました。同社では現在、社員大工は10人、応援の社外大工も入れると30人もの職人を確保しています。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62860365/picture_pc_e61e67618063c40d2a193a403b7817c8.jpg?width=1200)
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62862710/picture_pc_a62bfbf2681f5891e95afffb157a3bc8.jpg?width=1200)
大工を大事にし、つくることに特化している同社。
ものづくりに対してのこだわりが家づくりにも表れている。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62860307/picture_pc_0cca66fc6a668372cf66b584e7b41802.jpg?width=1200)
目指すのは「ずっと心地よい暮らし」。脱炭素社会が叫ばれるいま、断熱性能の高い住まいは必要不可欠です。住まう人の暮らしをより豊かにするため「パッシブデザイン」に取り組み、快適でありながら、省エネで光熱費を抑えた誰もが幸せになれる住まいをつくり続けます。
文:「和モダン」編集部
写真:丸正渡邊工務所 提供(甲府の家/砺波周平)