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アセスメントとはなにか? 〜障害のある人をよく知るために〜

先日、日本職業リハビリテーション学会第52回兵庫大会のプレ大会を開催しました。
会場には50名以上の方にご参加いただき、さらにアーカイブ配信も含めると100名近い申し込みがありました。
関心を寄せてくださった皆さまに改めて感謝申し上げます。

さて、今回のプレ大会のキーワードは、「アセスメント」と「インクルーシブ」。
8月22日(金)、23日(土)に開催される本大会(兵庫大会)に向け、プレ大会では「アセスメント」の重要性を改めて考える機会となりました。
今回は、その内容を振り返りながら、アセスメントとは何か?について再考してみたいと思います。

アセスメントとは?

まずは、「アセスメント」について。
アセスメントという言葉は、福祉、教育、企業など様々な分野で使われていますが、その意味や取り組み、活かし方は立場によって異なるように思います。
アセスメントを簡単に表現してみると、「障害のある人をよく知るための作業」となるでしょうか。
本人の特性等を正しく把握し、面談でのヒアリングや様々な場面で行動観察をし、アセスメントに取り組んでいく。それは、支援者として、もしくはプロとして、「根拠ある支援」「説明できる支援」を行うための重要な取り組みがアセスメントでもあります。

環境との相互作用を考える

プレ大会では、基調講演、実践報告会、シンポジウムの3部構成で開催しました。登壇者の方のご発表内容はまたの機会にできたらと思いますが、4名の登壇者の皆さんは、「環境との相互作用」を重要なキーワードとして取り上げておられました。
現在、障害に対する考え方は「社会モデル」が主流になっているかと思いますが、本人と環境の「相性」はアセスメントに取り組む上ではとても重要な視点であると思います。

*社会モデルとは
障害は個人の特性だけでなく、環境との相互作用によって生じるものと考えるモデルのこと。
モデルには、社会モデルと医学モデルがある。

社会モデルを前提にすると、アセスメントでは以下の視点が求められるように思います。
3つの視点を簡単に書いてみます。

1. 本人の特性を理解する視点
どのような特性、強みがあるのか?
どのような理解と配慮があれば、力を発揮できるのか?

2. 環境を調整する視点
職場や学校、地域等の環境について、本人との相性はどうか?
周りの環境をどのように調整すれば、本人らしく働くことができるか?

3. ニーズを把握する視点
本人の願いや希望はなにか?
潜在的なニーズはどのようなことか?

アセスメントは単に評価をするだけの作業ではなく、周りの環境との関係性を把握した上でアセスメントすること、環境との相互作用の視点を忘れないようにしてアセスメントすることが求められるように思います。

「関心」と「想像力」、そして「感性」

プレ大会のシンポジウムでも話題になっていましたが、アセスメントに取り組む上で何より大切なのは、目の前の障害のある人に関心を寄せることです。
それはアセスメントのための単なる情報収集ではなく、その人がどのように生き、どのように働いていけるのかを一緒に考えることでもあります。
また、これも実践報告とその後のシンポジウムで感じたことですが、アセスメントの先には、「支援者の想像力」がとても重要になるように思います。

まずは、本人に関心を寄せる。本人からの話について、関心を持って聞き取りを行う。その上で、さまざまな作業場面等で取り組む本人の様子を行動観察する。
アセスメント情報は、環境との相互作用でどのように変化するか?、本人のニーズや希望と照らし合わせるとどうか?、環境が変わることで本人の様子はどのような変化か予想できるか?など、このような問いは支援者の「想像力」があってこそ成り立つものです。

もちろん、知識や経験による想像力の発展もありますが、相手に関心を寄せることによる想像力の広がりがアセスメントを支援へと繋げる重要なベースとなるように思います。

アセスメントの本質

改めて言うまでもないですが、アセスメントは単なる評価ではなく、より良い支援を提供するための重要なプロセスです。
本人の強みや特性を理解し、環境との相互作用を踏まえながら、その人の可能性を見出していくことが求められるように思います。

適切なアセスメントが行われることで、本人の就労や生活の充実につながる支援が可能になる。
つまり、アセスメントこそが根拠のある支援の基盤となり、本人にとって本当に意味のある支援へとつながっていくんだと思います。

今回のプレ大会では、アセスメントの本質を改めて確認できたことが、大きな収穫でした。
8月の本大会では、さらに議論を深めながら、より良い支援のあり方を考えていきたいと思います。

皆さま、8月22日(金)23日(土)の第52回兵庫大会も、よろしくお願いいたします!

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