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就労選択支援について自分なりに考えてみる
先日、就労選択支援に関する研修会を開催しました。
参加申し込みは100名以上にのぼり、多くの方が関心を寄せてくださったことに改めて感謝申し上げます。
当日は厚生労働省の鈴木専門官をお招きし、制度の概要や意義について詳しくお話を伺いましたが、その内容にも触れながら、自分なりに考えたことを整理してみたいと思います。
就労選択支援の概要と目的
まずは、就労選択支援とはどのような制度なのか、基本的な概要と目的を振り返ってみたいと思います。
概要:
障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援する新たなサービス(就労選択支援)を創設する。
目的:
働く力と希望のある障害者に対して、障害者本人が自分の働き方について考えることをサポート(考える機会の提供含む)するとともに、就労継続支援を利用しながら就労に関する知識や能力が向上した障害者には、本人の希望も重視しながら、就労移行支援の利用や一般就労等への選択の機会を適切に提供する。
キーワードは「本人の希望」に思います。
この制度は、障害のある方が自分の希望に沿った働き方を見つけ、ご本人としての選択と実現を支援するものです。その理念はとても素晴らしいと感じますし、支援者としても大切にしたい考え方です。
理念は共感!でも支援者に求められることは多い⁉︎
就労選択支援では、以下のような具体的な流れが示されています。
①ニーズアセスメント:本人の希望や適性、就労能力を評価するためのアセスメントを行う。
②行動観察を中心とした就労アセスメント:具体的な行動観察を通じて環境との相互作用や強み、適性等を確認する。
③多機関連携によるケース会議:アセスメント結果をもとに本人の可能性を話し合う。多機関から多様な視点による意見をもらい、可能性を探る。
④フィードバック:アセスメント結果をわかりやすく本人や家族に伝える。
これらを見てわかるように、支援者に求められるスキルは非常に高いと感じます。ただ単にアセスメントを行うだけではなく、結果をどうまとめて本人に伝えるか、多機関連携の中でどのように多くの関係機関と協働するか、さらにはソーシャルワークや地域アセスメントの視点も必要になりそうです。
加えて、「自己選択」「自己決定」を支える支援を行うためには、本人との信頼関係を築くことも重要と感じます。就労選択支援は1ヶ月が利用期間でもあるため、短期間で信頼関係を築く難しさもありますが、本人の希望を尊重しながらも、障害特性に応じた分かりやすい情報提供を行い、その選択肢の中でよりよい道を一緒に探していく(本人と協同する)プロセスが大切なように思います。
そう考えると、就労選択支援は「アセスメントをするだけの事業ではない」ということは明確なように思います。この制度が掲げる理念が素晴らしい分、それを実現するためには支援者の成長とスキルアップが求められるでしょうか。
10月1日の施行にむけて
いろいろと書いてしまいましたが、そうはいっても、この制度が目指す方向性には大きな可能性を感じています。特に、障害のある方が「自分らしい働き方」を選べるという理念は、現場で働く私たちにとっても大きなモチベーションになるように思います。
ただ、まだまだ制度の全貌が見えない部分や、運営面での見通しが持ちにくいのも現状です。例えば、どれくらいの人が地域でこの事業を利用するのか、担い手となる事業所はどれくらいになるのか、多機関連携がどれだけスムーズに機能するのか、その仕組みは地域でどうするか、アセスメントツールは地域で共通化したほうがいいのか、アセスメント結果の分かりやすい共有方法はどうするのかなど、実際の運営を進める上で考えるべきことはたくさんあるようにも思います。
まとめ
就労選択支援は、障害のある方が「自分らしい働き方」を自分で選び、実現するための制度です。ご本人の自己選択と自己決定を支えるためには、支援者と本人の協同が不可欠であり、そのためのスキルや知識を現場で積み上げていくことが求められるように思います。
制度の施行に向けて、まだまだ学ぶことや考えることが色々とありそうですが、制度の理念を地域で実現できるよう、引き続き学んでいきたいと思います。