牛に頼らないミルク、鶏に頼らない鶏卵?
牛に頼らないアイスクリームがアメリカで販売されています。
これまで乳製品を植物で代替する、というものはいろいろありましたが、今回のこれは全く違います。遺伝子改良(?)した微生物を使い、乳清タンパク質を作る技術です。
ん?
合成生物学というらしいのですが、既存の生物の遺伝子を操作するのではなく、人間がイチから遺伝子を設計し合成生物を作る技術のことです。
この技術で作られた乳清タンパク質はフローラベースミルクを呼ばれて、乳製品の材料として使用できます。
アメリカ食品医薬品局で食品添加物としての安全を確認・承認済みとのことです。
アメリカでは「GRAS」認証というものを出し、この合成生物学からできた食品を推奨する動きがあります。詳しいことは、ここから↓
作ったメーカーはパーフェクトデー、というフードテック企業。
老舗のアイスクリームメーカーなどと提携し、アニマルフリーミルクや、アイスクリームなどをすでに販売しています。ミルクは赤ちゃん用のもできているそうです。
牛を使わない、つまりアニマルフリーであり、気候変動にも左右されず、安定的に供給できる、と。
遺伝子組換えという言葉も、ゲノム編集という言葉も出てこなくて「精密発酵」という何か身体に良さそうな名前でPRされています。
しかし、この合成生物学、人間が設計した生物の遺伝子による合成生物を用いる、究極の遺伝子組換えであると、警告を発する人もいます。
ただ、ちょっと調べてみると、何もこれ、近々の話ではないのですね。
医療の分野では、1979年から人間のインスリンが大腸菌によって作られています。
ヒト由来のインスリン遺伝子を人為的に導入した、組換え医薬品の第1号として米ジェネンテック社により開発されたものでした。
その技術が今、食品にも使われ始めたということです。
Every Cmpany社は、卵タンパク質を製造、2021年には世界初の、鶏を一切使用しない卵タンパク質の販売を開始。
また2022年には卵白を商品化し、有名パティスリーと共同で動物性原料を使用しないマカロンの販売を開始しています。
さて今年9月に、その精密発酵技術で作られた甘いタンパク質を使用したミルクチョコレートが、JALの機内サービスで提供されたことがニュースになりました。
甘いタンパク質を製造しているのはOobliという会社で、JALはサンフランシスコと東京間の国際便で提供されたとのことです。
と、JALは大絶賛しています。
この甘味タンパク質はブラゼインと呼ばれ、砂糖の500倍から2000倍の甘さを持つたんぱく質、血糖に影響を与えない特性がある、とのこと。西アフリカに自生する果実に含まれていて栽培、量産が難しいため、Oobli社が精密発酵技術により、53個のアミノ酸配列を持つ「プラゼインー53」の製造に成功したものです。
更に、日本でも今年7月から味の素が米スタートアップShiruと提携し、飲料などに使用する甘味タンパク質を共同開発することが報じられました。
知らない間に、人間が作った遺伝子を微生物に組み込み、様々なタンパク質を作らせ、そしてできた商品が私たちの身近に迫っている、ということですね。
もちろん今のところ、日本では、精密発酵へのなんの規制もありません。