燃やしのエイコ、火消しのエイコ
慢性炎症という言葉を始めて知ったのは
2012年発行の
『青魚を食べれば病気にならない』
〜万病の元「慢性炎症」を防ぐ〜という本。
生田哲さんという薬学博士が書かれたものでした。
通常、怪我をしたり感染したりすると、免疫の働きで炎症が起きます。腫れたり熱が出たりするのは炎症が起きているからです。そして外敵の排除や損傷の修復が終わると、炎症はおさまっていきます。
ところがどういう理由か、ちゃんと収まらずに、くすぶって長く続く炎症があり、そのことを慢性炎症と呼びます。
炎症をひきおこす、または収束させる、どちらも「エイコサノイド」というホルモンです。
著者は炎症を起こす方を「燃やしのエイコ」
炎症を鎮める方を「火消しのエイコ」と呼んでいらっしゃいます。
なんだか、かわいい。
「燃やしのエイコ」が役目を果たしたあとに、「火消しのエイコ」がうまく働かない状況、それが慢性炎症であり、そしてこの慢性炎症こそが、あらゆる病気の根本原因である、という内容でした。
心臓疾患、脳疾患、がん、認知症、アレルギー、糖尿病、ウツや花粉症、肥満までもが、そうだと書かれたことに、とても驚き、また興味を持って読みました。
その後、地中海食とかアンチ・インフラマトリーダイエットなどの言葉が流行りました。
抗炎症ダイエットというような訳され方もしました。
最近では『最高の体調』鈴木祐著
これは、すべての不調(病気)はたった一つの理由、文明病がもたらす「慢性炎症」という趣旨の本です。
ベストセラーになりましたね。
慢性炎症、つまりは免疫の異常、それこそが現代病の原因らしいということが分かってきました。
コロナで亡くなった方々もサイトカインストーム、免疫の暴走が死因でした。
私たちの大切な免疫システムを危機的な状況へと追いやっている最大の理由が、文明の進化にあるのだとすると、キレイ、便利、快適さを長年追い求めてきたツケ、とも言えるのかもしれませんね。
しかし、かと言って暖房・冷房のない時代に戻ることはできないでしょうし、痛みがあれば鎮痛剤を使わずにはいられない人も多いでしょうし、
せめて、これ以上の進化をストップさせることはできないものでしょうか?
最近、老化細胞のメカニズムがだんだん分かってきています。
老化細胞を抑制するために、すでにグルタミナーゼ1阻害薬という新薬候補まで出ているそうです。
(東京大学医科学研究所、中西真教授などのグループ)
120歳まで健康寿命を伸ばすことも夢ではない、のだそうです。
不老長寿は太古の昔から、時の権力者たちの永遠の夢だったわけで、今もなお、それを追い求める人間がいて当たり前なのかもしれないけれど、70歳までの人生と120歳までの人生を比べたら、何が変わるのでしょう。何歳まで生きたとしても、その後、死ぬことだけは確かな約束事です。
3歳で死ぬ子供も、60歳で死ぬ大人も、100歳まで元気なおばあちゃんも、その生命の尊さにどんな違いがあるというのでしょうか。いのちは、その長さに価値があるのではない、と、私は、妙に強く言いたくなります。
絶対にそんなことはない、すべての「いのち」は、比べようがなく、かけがえがなく尊いのだ、と。
科学は今後、どちらの方向を向いて進化し続けるのでしょうか?
その方向性は誰が決めるのでしょう・・・