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推定無罪

例えばあなたがスーパーマーケットを訪れ、買い物を済ませて店から出ようとしたとします。ところが店を一歩出た瞬間、女性に手を掴まれ、「あなた、盗りましたよね、ちょっと事務所へ」と声をかけられます。
しぶしぶ事務所へ行き、カバンの中を漁ると、見覚えのないお菓子が1点でてきました…。警備員、店員から厳しく詰め寄られます。では、この時点であなたは逮捕されてしまうのか。
答えはNOです。他の人がこっそりカバンに入れた可能性を否定できないからです。

このように、「犯人だと推定される」場合でも、確たる証拠がなければその人は少なくともその時点では「無罪」扱いになります。これを推定無罪の原則と呼びます。

昨日に続き藤田菜七子さんの話になりますが、彼女を叩いている人、断罪している人というのは、何をもって彼女を攻撃しようとしているのか、私には皆目見当がつきません。

前回の記事でも書きましたが、彼女が犯したとされるスマホの持ち込みと虚偽申告については所属先であるJRAから既に処分が下されています。処分に不服があるならばJRAに申し立てれば良いので、処分された側に「お前の処分は軽い!お前はもっと反省すべき」と罵声を浴びせる意味がわからない。それはJRAに苦言を呈すべき内容です。

ところがこう言うと「いやいや、処分が出る前に引退届を書くなんてありえない。その姿勢を問うているのだ!」みたいなことを言う人が出てきます。
では、彼女はなぜ引退届を書いたのか、その真意は今のところ闇の中です。
叩きたい人からすれば「これまでアイドルとしてチヤホヤされてきたのにイメージダウンに繋がるスキャンダルをしてしまったことに耐えられなかったからだ!」なんて言い出すわけですが、それは100%本当の話ですか?と尋ねずにはいられません。

もしかしたら処分の前にJRA職員から「お前の騎手生命はこれで終わりだな」などと声をかけられたのかもしれない。あるいは複数の騎手仲間から、「何やってんだよ、もうお前だけは絶対に勝たせないように妨害してやる」などという脅迫めいたメッセージが届いたのかもしれない。あるいは5月の段階で司法取引のようなことが行われていたかもしれない。

そうです。そういう情報が明らかになるまで、彼女がなぜ引退届を書いたのか(しかも泣きながら)、というのは闇の中なのです。それにもかかわらず、勝手にたくましい妄想を働かせて「推定有罪」に持って行きたがる人が多いのはなぜでしょう?

元ジャングルポケットの齋藤さんの話も、単なる不同意性交という話から少し温度感も変わってきたようで、それまでの間、さんざん齋藤さんを叩いてきた人はどんなふうにしてけじめをつけるおつもりなのでしょう?

日々のストレスの中で、誰かを自分より下の位置に置いておかないと精神の安定が保てない、という人が一定数いることの証左だと思いますが、それにしては数が多すぎやしないかと、現代人の病理のように思えてなりません。

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