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お先真っ白、後ろ真っ黒

漫画みたいな人生でした。これまでも、これからも。


私の大好きだったアーティストさん、椎名もたさんのアルバムに書いてあったキャッチフレーズだ。

アルバムのタイトルは「生きる」

pvは漫画みたいで、彼の人生についていろいろ想像できた。

それがすごいうれしくて、あなたのことについて知りたいって言っていて、私もどうなっているんだろうって、考えていた。


……。

彼が死んで三年がたってしまった。


もう三年。

彼の曲は私の耳元でガンガン流れ、彼は今も私の中では話してくれる。

でも、もういない。ずっと前から、いない。

多分、それなりに忘れ去られてしまっているんだろう。

インターネットは、名前を打てば本人がいたことを示してくれるけど。でもそんなのは名前を知らないと出てこないんだ。


あんなにいい曲を作る人も、死んじゃったらもう曲は作ることができない。


何回彼の曲に救われたかわからない。

彼は決して明るい曲を作る人ではないけれど、でもその言い回しがフレンドリーで、悲しいことがあったとき、つらい時、ずっと聞いていた。

憂鬱を「吹き飛ばす」んじゃなくて

憂鬱と「寄り添う」曲だった。

それが、ティーンエイジャーの、高校生の、不器用なあの時にはぴったりで。今でもたまに聞く。というか、今聞いてる。

落ち込んでダメな時にはちょうどいい温度なんだ。

ただ、隣にいてくれる人って感じのする音楽。

ボーカロイドだから、人を選ぶんだけどね。


彼は今も20歳で、私はもうすぐ同い年になって、追い抜いてしまう。

彼は音楽にあって、いろいろ人生変わったって言っていた。

私も、まあ、それなりに変化はあって。前ならこんなに人生について考えなかっただろうし、前より自分から動くようには、なったよ。

彼は双極性障害だったらしくて。それでも作品を作ってて。

私も、まあ原因があって情緒不安定で。でもいろんなことにチャレンジしてはいるよ。

きっと、そんなんでなんか似ている気がしてしまうんだと思う。

あったこともないのにね。


きっと私の一言一句に、どこか君の歌詞の書き方がすこしだけ、残っている。

君の生きた道をたどっている気分になりながら、一日を歩く。


お先真っ白、後ろ真っ黒。

まさにその通りだと思う。

昔のこととか、あんまりいいような気がしなくて、どこか塗りつぶして。

未来のことは、全然わからなくて。

君も、同じようなことを考えていたのだろうか。

布団で希死念慮とはなしあったりして過ごす夜があったり、何でもできる気がしてすごい人にぶっつけで会いに行ったりとか。

そんなことが、あったのだろうか。

葛藤があって、焦りがあって、健やかなるときも、病めるときも、あったんだろうなあ。

それで、ふいに「それ」が牙をむく時があって。

死んでしまったんだろうなあ、と思う。



なんにせよ、私は今のところ、死ぬ予定はない。

まだ生きる目的とか、いい感じに形にする方法、見つからないし。

こんだけ不安定だけど。

……君もそうだったの、かもね。


最後に、今流れた歌詞を一行。

「20年おいかけて

見つけた『生きる執着』は

『死ぬコト』だったので

もう少し歩こう」


そうしようか。





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