変わりゆくアイドルライブシーン

最近、とあるグループのライブイベントに足を運んできました。
今流行りのTik TockやYoutubeなどのSNSを通じて人気が爆発したグループですが、彼女らがデビューして間もない頃は他の地下アイドルグループとなんら変わりのない客層、コンテンツだったといいます。

時代と共に客層にも変化が生じる分、ライブシーンの景色もその時のトレンドを写し出すものだと思いますが、そのグループのライブイベントで見た景色は私に馴染みのある地下アイドルのフロアとは全く異なるものでした。

私がアイドルオタクとして活動していた2010年~2020年頃のフロアの特徴は、小規模なライブハウスで開催されるイベントが多かったこともあり、狭い空間にオタクがひしめき合うまさに豚小屋のような空間でした。そのような空間では自ずとオタク同士の熱量も相乗効果を生み、フロアの熱気がステージ上の演者と呼応するようなライブの盛り上がりが醍醐味だったように思います。モッシュ、ダイブ、リフト、サークル、マサイ、Mixなどのようなライブの楽しみ方が増えていったのも、このようなアンダーグラウンドなライブ空間ならではの文化が背景にあるでしょう。
客層も俗にイメージされる"オタク"っぽい身なりの人から、"ピンチケ"と呼ばれる所謂厄介客まで多彩で、最近の地下アイドル現場で見かける"女オタ"の部類も清楚な服装で巻き髪のヘアアレンジをしたタイプではなく、当時では男勝りなライブキッズ女子というような印象があります。

今でもその色が強いアイドルグループやライブイベントは根強く残っており、フェスイベントが開催されればグループごとにそれぞれ異なるフロアが形成されることも現代の面白い点ですが、爆発的な人気グループに成長する例としては、先に述べたSNSで話題になったことから新規のパイを取り込むことに成功したグループという点でそれぞれ共通点を持っているように思います。そういったグループの客層は、2000年代のライブキッズ文化とは全く異なる所謂"キラキラオタク"のような部類で、オタク文化に馴染みの無いような小綺麗な風貌をした人が多いように思います。
フロアの様子も私が馴染みのある沸騰した火鍋のような姿ではなく、ペンライトを持ってステージを真っ直ぐ見つめアイドルに手を振る中級イタリアンのような雰囲気があります。

SNSの発達で悪評が目立つようになったこともフロアの変化に多少なり影響を与えていると思います。かつてアンダーグラウンド感のあった地下アイドル文化では、先に挙げたモッシュ等の文化に不快感を覚える層は静かにその現場を去る形でした。モッシュ等のある意味"荒れた"現場を好まなくても、そういった客層が少ない現場へ移ることで解決していたように思いますが、現代ではそういった不快感を感じるとSNS上で俗に言う「お気持ち」する層が現れるため、目立った悪評はすぐに拡散されグループのイメージダウンに繋がります。不快感を示す人数が一部であったとしても、SNSでの評判はそれ以上に影響力を持つケースが多いため、イメージダウンを危惧した運営サイドが当該行為を禁止とする場合も少なくありません。最近では、モッシュやダイブ、リフト、サークルといった行為は危険行為として禁止されるイベントが多くなっているかと思います。禁止されてしまえば、楽しみ方を奪われた層が去る側に回ることになるため、客層の入れ替わりによりフロアを形成する種族もキラキラ寄りになるはずです。

どちらが多数派で少数派であったかはアンケートを取っていないため定かではありませんが、かつてのライブハウスがサークルやリフトで溢れていたことを考えると、SNS効果で外部から新規参入したキラキラオタクに当時のピンチケが淘汰されたような状況になっているように見えなくもありません。

大人しくライブを見ることが悪いと言うつもりはありません。しかし、かつて慣れ親しんだ熱気に溢れたライブシーンが廃れていくことには寂しさを感じます。ライブの楽しみ方は自由そのもの、オタクはライブを楽しむ姿を全身で表現し、汗だくで文字通り"沸く"といった地下アイドル、ライブアイドルならではの文化も継承していってほしいなと思います。かくいう私はモッシュやリフトをする元気が今はありませんが、2階からフロアが沸き乱れている様子をみるのが好きなため、現代に生きる数少ないピンチケオタクたちには期待したいものです。

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