デザインと断熱 両方のいいとこ取り
先日内覧会でアーキテクチャーフォト編集長の後藤さんに「建築に携わる若い人にこの断熱とデザインの取り組みを伝えるのが鹿内さんの役目かもよ?」と言われ・・・なるほど自分がこの考えに至った経緯を伝えるのはいい事かもと思いました。
最初のきっかけは、数年前立て続けに○億円規模の住宅を失注した事でした。どのお客様も我々の建物デザインは気に入っているが・・・事前に訪問をしたハウスメーカーで熱心な営業もあり、全館空調の知識を刷り込まれていました。「お客様:鹿内さん、全館空調ってどう思いますか?」「鹿内:う〜ん、10年後はメンテナンスで費用がかかりますしね・・・」と返答をしていました。そうしている内に正式依頼はハウスメーカーとなっていました。全館空調を導入する事で生まれる快適さもありますが、ハウスメーカーがそれを入れざるを得ない理由を当時理解ができず、ただ危機感を感じていました。
次のきっかけは、事務所のメンバーである渡辺が村越邸の設計の時に言ってきた事からです。「渡辺:鹿内さん、エアコンってメーカーの畳数表示よりも少なくて良いですよ。このHPで計算式があります」「鹿内:え・・・そんな事無いでしょ?(また変な情報のサイト見つけてきたなぁ)」と最初は軽く受け流していました。高気密・高断熱の取り組みをしている人やそれを求めるクライアントさんには当然の知識ですが、エアコンの畳数表記は昭和40年代の木造住宅の作り方を基準に計算されている事を知りました。50年前レベルの住宅の作り方を基準に、設計者はエアコンを選定し、いまでも多くの人が今年の夏は暑くなるかと量販店で14畳のリビングに14畳用のエアコンを買おうとしています。でも建物が高気密・高断熱を実践すると実はエアコンは1台(しかも驚くほど畳数の少ない機器)で成立してしまいます。
では何故全館空調を導入する必要があるのか?1台でも良いのに・・・そうせざるを得ない理由がありますが、これは全館空調に対するネガティブキャンペーンになってしまうので興味がある人は調べてみてください。
「エアコンなんてどうでも良いでしょ。建築デザインには関係ないし」というのが多くの建築家の意見だと思います。そうして多くの化石燃料由来のエネルギーが窓から壁からコンクリート表しの基礎立ち上がりから垂れ流されているのも現状です。この環境時代に消費者が求めているニーズは確実に変わってきています。一方で建築家側は、そのような数値的なロジックで形やデザインを決められてしまうのに対して拒絶感を持っています。そこには建築家が言語化できないけど各人が培ってきた「良いな」と思っている事や提供したい価値がありますし、数世紀に渡る建築の歴史から積み上げてきた空間の良さもあるという事を僕は建築デザインをしているので判ります。その両方の良さが分かるからこそ、断熱もデザインも良いとこ取りできないか?というが僕らがこの取り組みをする理由です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?