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オシャレなオフィスと、働きやすいオフィスは違う

「新しいオフィスで採用を強化したい」という声をよく聞きます。特に、急成長中のスタートアップやベンチャー企業に多い例です。

オフィスの良し悪しは、採用に大きな影響を与えます。ただし、採用効果だけを意識すると大事なことを見失ってしまうため注意が必要です。

木のイスで8時間、働けますか?

採用のためのオフィスづくりでは、「とにかくオシャレにすればOK」と考えてしまう経営者が非常に多いですが、はっきり言ってこれはナンセンスだと僕は思います。そして、お金をかければかけるだけいい訳でもありません。

たしかに、求人票に載せるオフィス風景がオシャレだと応募が増えたり、自社ブログが書きやすくなったりするというのは一理あります。ですが、大事なのは「働きやすさ」をしっかり意識できているかということ。これは、多くの経営者が見落としているポイントです。

たとえば、オシャレに全振りして内装デザインを考え、すべての席を木製のイスにしたとします。面接でオフィスに訪れた求職者からは、「カフェみたいで素敵ですね!」と言われたりして、第一印象はいいかもしれません。

ただ、実際に木のイスに8時間座って仕事をすると想像してみてください。間違いなく、身体のあちこちに不調が出ます。ほとんどの従業員は耐えられないはずです。

つまり、オシャレさよりも機能性の方が圧倒的に重要ということです。

見た目だけで「オシャレなオフィス!最高!」と安易に思ってしまう求職者側にも問題はありますが、採用ウケを意識しすぎて企業側が本質を見落としていることの方がよっぽど問題だと考えています。

新たに人を採用するより、入った人を定着させる方が大事

そもそも、採用というのは目的ではなく、人を増やすための手段です。

たとえば新たに10名を採用できたとして、同時に50名が退職したら?はたして「採用が成功した」と胸を張って言えるのでしょうか。

組織を大きくしていくなら、採用力が強いことよりも定着率が高いことの方が遥かに大事。そのためにできる施策はたくさんありますが、「働きやすいオフィスづくり」はどんな企業においても必要不可欠ですし、オシャレなだけで満たされるものではないと僕は思います。

たとえば、最近増えつつあるのが、執務スペースに全席違うイスを入れている企業。弊社もそうですが、従業員一人ひとりが自分の体格にあったイスを選べるようにしています。

はじめてオフィスを見た求職者からは、「統一感がないな…」と一瞬マイナスに思われるかもしれませんが、あえてそうしている目的をしっかり説明すれば、「従業員想いだな」とプラスの印象に変わります。

オフィスを通じて、どのようなメッセージを伝えたいか

オフィスは、単に「働く場所」というだけではありません。コロナ禍でリモートワークが浸透しつつあるこの時代に、あえてオフィスを構える理由がきっとあるはず。オフィスは、企業から従業員への、そして求職者へのメッセージそのものです。

従業員の働きやすさを意識しているか。ミッション・ビジョン・バリューを体現しているか。コミュニケーションを活性化させようとしているか。僕はワークプレイスのプロなので、オフィスを見ればその企業が何を重視しているかと、そこに強い想いとこだわりを持っているかどうかが大体分かります。

逆に、残念ながら言っていることとやっていることが違う、と感じることもあります。たとえば、ホームページでは「従業員を大切にしている」と謳っているのに、オフィスに行ってみるとエントランスや来客用の部屋だけが豪華で、執務スペースは安い机とイスを並べただけ、とか。それは違うのでは?と僕は正直感じてしまいます。

経営者の皆さんにはぜひ、企業として何を大事にしたいのか、どんなメッセージを従業員や求職者に伝えたいのかを改めて見つめ直し、それを体現できるようなオフィスづくりをしてほしいと思います。