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「適正なオフィス賃料」に正解なんてない

「住宅の家賃は給料の3割以内が理想」とかって、よく聞きますよね。

では、オフィスの賃料は売上高の何割にすべきなのか?これは正直なところ、正解がありません。

その企業がどんな事業をやっているか、オフィス=投資ととらえるかどうかによって、賃料は変わってくるからです。

オフィス賃料は、住宅家賃と同じように考えてはダメ

そもそも、オフィスの賃料と住宅の家賃は、まったく別物と思った方がいい。これには明確な理由があります。

一つは、オフィス内の人が増減するから。企業というのは、人が入ったり辞めたりして、人数が変わっていくものです。

そしてもう一つは、売上が変動するから。事業を増やしたり畳んだりすることもあるし、景気によって左右されることもあります。

人数も売上もずっと一定をキープし続けている企業であれば話は別ですが、おそらく、常に変化し続けている企業のほうが多いはず。

つまり、オフィス賃料を決める上での判断材料自体が、住宅と違って不確定要素ばかりなわけです。

たとえば、坪単価の安いエリアにして広さを優先するのか、あるいは広さよりも立地の良さを重視して採用活動や営業活動をしやすくするのか。これだけでも、かなり選択肢が変わってきます。

経営戦略の筋道を描けていることが大事

世の企業の賃料比率は、実際どのくらいなのか。参考までに、平成30年(2019年)中小企業実態基本調査から、データを一部ピックアップして貼っておきます。
(※売上高と地代家賃は、1社あたりではなく該当企業の累計金額となります)

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見てもらうと分かる通り、業種や企業規模によって地代家賃(つまりオフィスや店舗賃料)の占める割合は全然違うんですよね。

あと、不動産サイトなんかの記事を見ていると、「賃料は、売上高に対して10%未満であれば適正」と書いてあったりします。

ただ、正直この情報はあまり当てにしてほしくない。というか、これだけを判断材料にオフィス賃料を決めたところで、なんの意味もありません。

ここ数年で事業をどう成長させていくか、人をどのくらい増やすのか。経営戦略の筋道をしっかり描けていることが何よりも大事です。

残念ながら、「売上高の◯割」と数字に答えを求めること自体が間違っています。

オフィス賃料=人件費と考える

ここで一つ、大事なポイントをお伝えします。

オフィス賃料を、単なる「コスト」と考えるのか、事業や組織をドライブさせるための「投資」と考えるのか。これによって、オフィスに対する向き合い方はガラッと変わります。

ワークプレイス(働く場所)の重要性を訴えている僕としては、ぜひオフィス=投資と思ってほしいわけですが、さらに言うならオフィスづくりは人事施策の一つ。

つまり、賃料を賃料としてとらえるのではなく、人件費としてとらえます。

たとえば、従業員の給料を月1万円アップするのと、オフィスを従業員の人数×1万円分グレードアップするのと、どちらがパフォーマンスが上がるか。

こういう見方ができるようになると、オフィス賃料をいくらにするべきか、他社の事例を参考にしようとは思わなくなります。

「とにかく年収をアップしたい」と思っている従業員が多いなら、給料を上げた方が絶対にパフォーマンスは上がるだろうし、働きやすい環境を求める従業員が多いなら、オフィスをグレードアップした方がいい。

どちらが正しいとかではなく、企業それぞれの方針があってしかるべきです。

それでも何かの数字を指標にしたいということであれば、下記のように人件費と坪単価の掛率をあわせるのがいいかもしれません。坪単価×広さで、家賃が決まります。

同業界の平均年収:500万 → 自社従業員の平均年収:400万(掛率80%)
希望エリアの平均坪単価:2万 → 自社オフィスの坪単価:1万6千(掛率80%)

あと余談ですが、オフィス賃料=広告宣伝費としてとらえるのも見当違い。

オフィスというのは、あくまで中で働いている人たちのためにあるもの。社外へのアピールとして考えてしまうと、一番大切なことを見失います。

この話は長くなりそうなので、また今度。