3度目の挑戦を終えて
「2024プレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会」
あれから約1ヶ月も経過してしまいました。
大会終了後も終わらない忙しさから中々整理できず、ここまで時間が掛かりましたが、温度が下がりきらない内に書き留めておこうと思います。
今大会、クラブとしては5度目、自身としては3度目の挑戦となりました。
「3度目の正直」なのか「2度あることは3度ある」なのか。
当然ながら前者を望んで闘いましたが、ご存知の通り悔しくも後者となってしまいました。
大会に向けて
遡ること4月。
なでしこリーグより加盟募集の案内を受けて、すぐさま社内での承認を取り、大会出場に向けての申請を進めてきました。
3度目の挑戦ともなると、当初は苦戦していた審査準備も板に付いてきました。
社内外の方々のご協力のお陰で無事、審査通過となり、通算5度目の予選大会出場の権利を頂きました。
今大会は少し驚きの5チーム構成。
これまでの2グループ分けではなく、1グループの総当たり戦。
前大会は3チームの内、2チーム(D出雲・FC今治)は対戦経験のあるチームでしたが、今回は4チームの内、対戦経験のあるチームは南葛SCのみ。
つまり他3チームは初対戦。さらに、西日本はレノファだけ。
対戦相手全てが関東以東で、情報も少なければ、レベル感も掴みきれないという、何とも難しいチーム構成となりました。
7月末に中国リーグ前期を終えてから立て続けに、国民スポーツ大会・やまぎんカップ・皇后杯中国予選・中国リーグ後期と、いわゆる予選大会に専念する時間が無い中で、主に、自分たちが積み上げてきたスタイルを磨いていく作業と試合の運び方にフォーカスして、公式戦の中で修正しながら準備をしました。
日が近づくに連れて、選手主体のミーティングが増え、選手からのリクエストも増え、当然のようではありますが、この大会に賭ける想いが、強く鋭くなっていくのを感じました。
第1節 vs 南葛SC WINGS
いよいよ初戦。
相手は前大会で最終日に対戦して、0-1で敗れた南葛SC WINGS。
昨年の借りを返す、と言っても対戦相手は監督が代わり、スタイルがガラッと変わってまるで別チーム。
2位以内に入って入替戦本戦に進むためには、参加チームの様相を見た時に、ここが一番鍵になるだろうと思っていました。
尚且つ初戦ということで、実際のスピード感や強度は試合が始まってみないと分からない、特に難しさが現れる試合です。
この組み合わせが決まってから、念入りに分析して、準備して来ました。
システムからメンバー構成、個々の特徴からチームのスタイルまで。
擦り切れるほど観たお陰で、南葛SCのチャントを幾つか覚えることが出来ました。
試合開始。
序盤の流れはこちらにありました。
シンプルな攻撃で相手を押し込み、1stシュートからセットプレー獲得まで、今季一番の入りが出来ました。
しかし、強度の高い関東リーグ1部のチームはそう簡単にゴールを割らせてくれず、前半飲水タイム後から徐々に相手に流れを掴まれてしまいました。
何度も際で相手の攻撃を耐えていましたが、前半28分、脅威に感じていた、相手のパスワークから先制点を許してしまいました。
立て直しを図った後の後半も、流れを取り戻すことが出来ずに、後半26分にはCKを直接決められてしまいます。何とかパワープレーで相手ゴールに迫ろうとしますが、決定的なシーンまで持っていくことが出来ずに、後半は僅かシュート1本で試合終了を迎えることとなりました。
0-2
この試合が持つ意味や価値を考えると痛すぎる敗戦。
ですが、まだ4分の1が終わっただけ。
翌日に向けて顔を上げていく他に、必要なことはありませんでした。
第2節 vs FCゼブラレディース岩手
悔しい敗戦から翌日。
連戦という過酷なこの大会で、敗北を引きずっている時間はありません。
前日から2人を入れ替え、挑んだ2戦目。
初対戦となる相手。選手の特徴やチームスタイルも未知で、得られる情報は前日の試合映像からのみ。
当然ながら、油断は許されません。
試合開始からボールを保持し、想定していた5バックで構えて守る相手を崩しに掛かります。
ゴール前までは迫るものの、決定的なシーンは創り出せず、もどかしい時間が続きます。
そんな中、前半21分。
ゴール前に放り込まれたボールを競り合う過程で、相手を倒してしまい、PKを与えてしまい、またしても先制点を許してしまいます。
僅かな不安が頭をよぎる中、その2分後、左サイドを突破した伊藤さくらが、角度のないところから、おしゃれループでゴールに流し込み、その不安を拭い去ります。
前半終了間際の34分にはCKから伊藤さくらが蹴ったボールを、ニアサイドで相手が触り、そのままゴールイン。前半で逆転に成功しました。
まだまだ緩めず、ギアを上げて行こうと臨んだ後半。
後半6分には相手のハンドで得たPKを、またしても伊藤さくらがゴールに沈め、更に突き放します。
その後も追加点こそ奪えませんでしたが、試合の流れを離さず、3-1で勝利を掴みとることが出来ました。
自身3度目、8試合目にしてこの大会で初めて、勝利を味わうことが出来ました。
凄く遠く感じた勝利。ホッとしました。
第3節 vs 北海道リラ・コンサドーレ
前日の勝利により、1勝1敗で迎えた3日目。
対戦相手は予選大会常連の北海道リラ・コンサドーレ。
同じタイミングで共に出場しながらも、これまで顔を合わせることなく、今回が初対戦となりました。
高校生が多くて若いチーム。
2日間の試合を観た雑感として、ボール保持を主体とし、コンパクトな守備と素早い切り替えでゴールを堅く閉ざす。
また、環境に慣れてくる3日目というタイミングと、勝点3を掴んだ翌日ということで、ゲームの入りには特に注意したい試合前でした。
試合開始早々、前半3分。
VOの一角を担っていた津永佳琳がアクシデントにより、交代。
全体的に疲労も少しある中、流れを掴みきれない入りとなりました。
相手の横にコンパクトな守備に対して、幅を使いながら、高い位置まで運び、フィニッシュで仕留めるという、チームとして磨いてきた攻撃で徐々にペースを掴む。
前半16分。高い位置でのスローインの流れから、田中萌のクロスに逆サイドの戎谷亜美がワンタッチボレーで叩き込む。素晴らしいファインゴール。
1-0リードで折り返した後半。
10分が経過したところ。藤原瑞季のフィードに左サイドを抜け出した伊藤さくら。
相手の股を通して交わし、マイナス方向に送る。
後ろから走り込んだ小川真名美のワンタッチシュートは、ゴール左上に突き刺さって、追加点。
このゴールはびっくり仰天。スーペルゴラッソ。
今季初ゴールをこの重要な舞台で、しかも利き足と反対の足で撃ち抜くという勝負強すぎる1点でリードを重ねる。
一方、守備陣も集中したオーガナイズで決定的なシーンを創らせず。
クリーンシートで勝点3を手繰り寄せ、大きすぎる2勝目で最終日に望みを繋ぎました。
第5節 vs VONDS市原FCレディース
前節から1日の休息を挟んで迎えた最終日。
疲労もピークに達する中、関東1部チャンピオンの強豪チームと対峙。
ここまでの結果から、入替戦本戦を自力で掴むためには、4点差以上での勝利が必要という、厳しい状況で迎えることとなりました。
ここまでの2連勝で自信に満ちた選手たちは、予選大会突破最有力と目されたチームとの対戦を一切怖がらず、楽しみにしているようでした。
絶対的な自信とチームの一体感が生み出す、絶対に食ってやろうという雰囲気に包まれていました。
皇后杯関東予選チャンピオンは個々の能力が高く、相手を上回るイヤな攻撃を展開してくるチーム。
4点奪いにいくためには攻撃的に展開しなければいけませんでしたが、当然失点してしまえば、その分必要な得点数が増えていくため、守備の安定を求め、普段とは異なるプレッシングをほぼ即席で採用。
試合開始から、相手にボールを持たれる展開。
しかし、これは想定内のため、狙った形でボールを奪い、カウンターに繋げたい。
クロスボールなどゴール前まで迫られるシーンもありながら、DF陣の身体を張った守備でゴールを割らせない。
スコアレスでハーフタイムを迎えます。
残り35分で4得点が必要になってしまいました。
予選大会突破のため全てを捨てて得点を奪いにいくのか、現実的にこのゲームを勝ちに行くのか。
分かれ際でしたが、選手の表情を見た時に、後者を選ぶ必要があったというか、自然とそっちへ導かれました。
変わらず守備での安定から、隙を突いてゴールに迫って行くように継続。
中盤でボールを奪ってから左サイドを中心に攻撃へ。
幾度か高い位置で得ることができたセットプレーもチャンスまでは繋げられない。
0-0で終了のホイッスルを迎えました。
この時点で入替戦本戦出場の可能性は無くなりました。
でも、目の前にはPK戦が待ち構えている。
必ず勝とうとキッカーを決めて送り出しました。
8月からこの大会までの2ヶ月間。毎週PKのトレーニングを重ねてきた。
2人目まで互いに決め、迎えた相手の3人目。
ゴール左に放ったボールを大宮司晴菜が見事なセービングで掻き出し、優位に立つ。
決めれば勝利の5人目は米川愛梨。
短い助走から放ったボールは左ポストに当たって、ゴールに流れ込む。
PK勝利。
苦しくもどかしい試合。
それでもPKながら掴んだ勝利。
ベンチ入り出来なかったサポートメンバーが泣いていました。
それを迎えたメンバーも泣いていました。
強豪チーム相手に得た勝利からの嬉し涙か。
本戦に進めなかった悔し涙か。
PK戦での勝利だったとはいえ、レノファレディースの未来にとって大きな一歩となりました。
この大会で得たもの
2勝1敗1PK勝 勝点8 第3位
またしても入替戦本戦には進めませんでした。
2位との勝点差はわずか1。
だけれど差は小さいようで大きく感じる勝点1。
結果としてはミッション失敗。
でも結果以上に大事なものを得た気がします。
今季言い続けてきた、
「それぞれの立場からチームの勝利のために最大限役割を全うする」
をチーム全員が体現してくれました。
試合に出られない悔しさを押し殺しながらも、プレーしやすい環境を創り出してくれたサポートメンバー。
その想いを背負ってピッチで表現するメンバー。
目指してきた「誰かのために闘うチーム」をまさに象徴する大会でした。
だからこそ得た勝点8。
この大きな財産を確かに持って、次のステップに進む時が来ました。
ライバルたちを見送ってきたこれまでを終わりにして、来年こそは素晴らしい景色を見られるよう、悔しさを忘れずに闘っていきます。
最後に
今大会も多くの方々のご支援を頂き、闘うことができました。
挑戦の場を創り出して頂いた、クラブ関係者の方々。
選手を快く送り出して頂いた、パートナーの皆さま。
選手のために全てを捧げてくださった、チームスタッフの皆さん。
全ての方々に感謝申し上げます。
いつも有難うございます。
そして、何より
レノファレディースの原動力であるサポーターの皆さま。
今回も遠すぎる福島の地まで、当然のように駆けつけて頂きました。
まるでホームかのようにオレンジに染めてくれる沢山の横断幕。
どんな試合も鳴り止むことのない声援。
この過酷な大会を闘い抜くことができたのは、紛れもなく皆さんのお蔭です。
いつも共に進んで頂き、本当に有難うございます。
今大会味わえた2度のやまぐち一番。
来年は全ての試合で味わえるように頑張って参ります。
「艱難汝を玉にす」
2024年の挑戦は終わりを迎えてしまいましたが、闘いの火は消えていません。
来年は必ず成し遂げるため、まだまだ進んでいきます。
引き続きレノファレディースの背中を押してくださると幸せます。