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ミュージカル『NEVER SAY GOODBYE』にクソデカ感情が止まらない話

おはようこんにちはこんばんは!今日はひさしぶりに宝塚の話を。

星担の私ですが、家族に宙担がいることやロミジュリの死をきっかけに「真風涼帆が好き」と本能が告げているので実は星組の次に宙組をよく観ております。

そんな中迎えた宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』。「憎っくきあいつら」のせいで公演期間が1ヶ月半からたったの2週間になってしまいましたが、幸運にも2度観劇させていただきました。

私はどの公演を観るにしても割と真剣に予習をして臨むタイプなんですが、今回は初演がスカステで放送されなかった(王家もそうだったけど再演するからって放送するわけではないんですかね?)ので

  • イケコこと小池修一郎先生のオリジナル一本ものであること

  • 作曲はあのフランクワイルドホーンさんであること

  • そのフランクさんの奥さんであり元宙組トップスターの和央ようかさん、伝説の娘役花總まりさんの退団公演であること

  • 真風さんたち92期生の初舞台公演であること

これくらいしか予備知識がないままの観劇でした。行きの電車で配役と相関図、あらすじを頭に叩き込み、パンフである程度のビジュアルと世界観を確認して臨んだネバセイ。

メッッッッッッッッッッッッチャよかった。

この作品がここまで重たい意味を持ったのはこのご時世だからではあるけれど、そうでなくても真風さんかのちゃんをはじめとする宙組生の底力を感じました。

「悪人」がいないおはなし

この作品、「悪役」はいるけれど「悪人」はいないのだと思います。ジョルジュたちと対立する側であるアギラールさんもコマロフさんも、(名前しか出てきませんが)フランコ将軍率いる反乱軍やその後ろについているファシズム国家(ドイツ・イタリア)ですら自らの正義を持ち、その正義に共鳴する人がいるからこんなことになっているわけで。

彼らは結局自分のことしか考えていないから、その中で仲間や友を思うジョルジュやキャサリン、ヴィセントたちが「善い人」、アギラールたちが「悪い人」に見えるのだと思います。私が性悪説派の人間だからかもしれないけど。
コマロフさんだってジョルジュたちの大ピンチに突然アギラールを殺すけれど、それもきっとジョルジュたちを助けるためではなくただ「己の正義」を貫くためにアギラールが邪魔だった、ただそれだけなのでしょう。
コマロフさんのアギラールに対する感情が変わっていくさまもオペラで観ていると面白いので、これから生で観られる機会がある人はぜひおすすめします。

ネバセイを最後まで観ても「感動の押し付け感」がないのは、それぞれが己の正義を突き詰めた結末を描いている「だけ」だからなのかもしれません。人の数だけ正義があるし、人の数だけ解釈もあるのでイケコ作品は罪深い。

三角関係

戦争と同時進行する三角関係がいくつかあるこの作品。

  1. エレン→ジョルジュ⇔キャサリン

  2. アギラール→キャサリン⇔ジョルジュ

  3. ピーター→キャサリン⇔ジョルジュ

3に関しては三角関係未遂ですかね。ピーターは想いすら伝えられないまま終わってしまうので…一番不憫……

まず1の話からすると、私はエレンとキャサリンって同族嫌悪みたいなものもあるのかなと思っていて。というのも、2人ともあの時代の女性にしては珍しく社会的にかなり地位があって、かつその辺の男を骨抜きにできる美貌もある。
キャサリンの「仕方ないわ。私はこの国で生まれた。自分が見たことしか書けないもの。」というセリフを究極に開き直らせて自己中にしたらエレンみたいになるのかななんて思って観ていました。環境次第ではキャサリンがエレンみたいな超鼻高自己中女になっていてもおかしくなかったのかなと。
アギラールもそうですけど、相手のことを考えられたからジョルジュはキャサリンに惹かれていったのだと思います。

次に2のおはなし。
こっちはねー、まじアギラール氏どうした?????いやわかるよ、キャサリン綺麗やし、仕事できるし、旦那と別れて心のうちでは多分傷心中だし。にしてもそのやり方でキャサリンに受け入れられると思ったん???????その前髪にその色気でも絶対無理でしょ!!!!!!!!!!!!

いやアギラールを「本当に自分のことしか考えていない悪役」として、キャサリンを「芯の強い女性」として、ジョルジュを「立場に驕ることのない人」として描くには大正解だと思うんですけどね。それでもツッコミが勝ってしまう。女の扱いがとってもお上手なジョルジュでさえ一筋縄でいかないキャサリンに対してそんなん絶対あかんに決まっとるやん。

えー、失礼しました。以上アギラールに対してはこうなんていうか「お前この野郎……」っていうより「?????なんで?ホワイ??」が終始勝っていた私の脳内でございました。

それに対してのジョルジュの優しさね。もう号泣。
女の扱いが上手いけれど決して驕ることなく(アギラールくん聞いてる?)どんなに自分がやって欲しくないと思った仕事でもキャサリンの気持ちを尊重して(アギラールくん聞いてる?)キャサリンが危険に晒された時は身を挺して助けに行く(アギラールくん以下略)

プロパガンダポスターの目の前で明らかに政治利用される仕事を受けると言い出したキャサリン。止めたいけれど、それは自分のプライドが許さないジョルジュ。
この時代で、「女に命令することが男のエゴ」だと気づいているジョルジュはやっぱり自分のことを客観的に見られている人なのだと思います。おめえさん、偉ぇよ……(突然の徳三郎)(男だろうが女だろうが他人に命令は良くないですよ!もちろん!)

で何よりも最後、戦地へと向かうジョルジュがキャサリンを諭す場面。キャサリンにフィルムを預け(後々)ヴィセントにカメラを預けたジョルジュは、もはや肉体が滅びるのを待っているだけのような状態だったのでしょう。彼は生きて帰ろうなんて思っていなかったはず。だって、彼の命はキャサリンが持っているから。キャサリンがいる限り、彼女の中で生きているから。仲間に人生の真実を見出した彼はデラシネではなくなり、愛する女性が生きていることに希望を見出した。
だから、あんなに優しい顔でキャサリンの涙を拭くことができた。
そしてキャサリンも自分のことだけじゃないジョルジュのことを思いやったから、全てを悟ってジョルジュに背中を向けることができた。

ここのかのちゃん、本当にボロボロ泣いてるんですよね。フィルムを持つ手も、ジョルジュから離れていく足取りも消えてなくなってしまいそうなほど落ち込んでいて。
でも目線だけは前を向いていて、ああジョルジュの頼み事があったからキャサリンは前を向いているんだなと、つくづくジョルジュってすごい男だな……と思わざるを得ません。

そしてキャサリンは使命を果たし、ヴィセントの孫であるエンリケとキャサリンの孫であるペギーが出会う。
エンリケがヴィセントとテレサの子である保証もないし、キャサリンに孫がいるということはキャサリンは新たなパートナーを見つけたということ。

カメラを抱いたペギーを優しく見つめる天国のジョルジュは人として、写真家として、納得できる人生だったなと感じたのでしょうか。
どうか何十年後には天国でキャサリンと笑い合っていますように、と号泣しながら幕が閉じていきました。


でフィナーレ何あれ????????????????????????????????????(台無し)

また長くなるので宣伝だけ。

ロケットのベリーショートぶきちゃんこと山吹ひばりちゃんと、ロケットの後娘役群舞に出るぶきちゃんと、Wトリオ下手にいるぶきちゃんをよろしくお願いします!!!!!!!!!!!

まーたこんなに書いてしまった。
ネバセイは観た瞬間に「贔屓組じゃないけどルサンク、円盤、CD全部揃えよう」と心に決めたほど、大好きな作品のひとつになりました。
このご時世だから、響きすぎたところはあるかもしれない。
それでも、宙組生と夏目さんの熱演があっての2022年版ネバセイだったと思います。最高に素晴らしい舞台をありがとうございました!大千秋楽まで無事駆け抜けられますように…!

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