ANAマイル散歩旅(4) 香港、迷宮ぐるぐる回る。
旅の4日目。今日はマカオから香港に戻り、主に香港島エリアを散策していきます。カジノのようにキャッチーなことがないのですが、これこそ「散歩旅」だと思ってます。
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昨日、タイパで適当に食べたエッグタルトが衝撃的な旨さだったので香港に戻る前にマカオの名店を訪れてみたが春節なのでがっつり休業してた。
なんか後ぐされ悪いけれど、もういい、香港に戻ろう。
ここで喫煙したらMOP$1500いただきますよーの貼紙。なんか見覚えある数字。数時間前にカジノで負けた金額だ。
なんか後ぐされ悪いけれど、もういい、香港に戻ろう。
香港の主要地は大きく分けてビクトリアハーバーを挟み九龍半島と香港島に分かれる。香港島は中国南端の港町。1842年イギリスの植民地となりアジアとの貿易拠点として栄えた。今日はこちらを散策する。なお、1日目に散策したゴチャっとした印象の残る九龍サイドが発展したのはその少しあと、20世紀初頭からである。
14時ごろ、フェリーターミナル(中環らへん)に到着。さっそく香港感を浴びたくなりローカル感極まりない店に入ってみた。
1日目も思ったが、ファストフード店では相席が当たり前のようだ。現地の人の食事を観察できるのは個人的にありがたい。たとえば麺を音を立ててすするのがマナー違反なのは知っていたが、「もしかしてスープを器に口をつけて飲んじゃいけないとかもある??」と思ってすぐに確認できる。あぶねー。レンゲでチマチマと飲みましょう。
ミッドレベルズ・エスカレーターは、中環地区からミッドレベルズ地区を結ぶ世界最長(全長800m)の屋外エスカレーター。映画『恋する惑星』など数々の映画のロケ地に使用されていることでも知られる。高級住宅街の住民たちが利用するかたわら観光地としても栄え、エスカレーター沿いには数々のショップが立ち並ぶ。こんな急勾配の地形に都市機能をむりやり拡張させる必要があったということだ。
しばらく昇ると途中から観光地としての面影を無くし、人が少なくなってきた。それでもなお、テッペンまで上り続けてみる。
が、エスカレーターは一方通行、時間帯で上り下りが切り変わる仕様ようで、ふたたび中環に戻るにはかなりの回り道をしなければならなかった。歩行者がほとんどいないウネウネと曲がりくねった坂道を下っていく。途中から小雨が降ってきた。ちょっと前まではド派手な中心地にいたのに。なにしてんだろ。まあ、時間や目的に追われているわけでもないから問題ない。
中環から太古まで移動。本日の唯一の目的地、益昌大廈(通称モンスターマンション)に到着。第二次世界大戦後、国共内戦の激化により中国本土からの移民が急増した。それを抱えるために平地の少ない香港は高層マンションを建てるしかなかった。そうして人が増え経済成長を遂げれば今度は仕事を求めて人が押し寄せる。人が人を呼び、都市が発展する。この100年ほどの香港の歴史は街を歩けばいたるところで感じることができるが、それを象徴する圧巻の風景だ。
なおここをロケ地にした作品はたくさんあるが、個人的にはこれを推したい。緊張感、臨場感のある映像演出、満島ひかりの圧倒的なパフォーマンス、大沢伸一の楽曲との高いシンクロ性。香港の夜の街を舞台に、視覚と聴覚の両方から迷宮のような世界に引き込まれる。
歩き疲れた。休もう。尖沙咀でサウナに入ることにした。
国外でのサウナは初めてなので少し緊張した。荷物や衣類を預けることへの不安と、まあ治安は大丈夫だとしてもチップ文化が少なからずあるので流れに身を任せているととんでもない額になるかもしれない。サウナにもまた特殊ルールがあるかも。
だがそれは杞憂だった。食堂やマッサージなどの近所のオバチャン系には英語は通じないがシステムがわかっていれば意思疎通はできる。他人が他人に興味がなく、サウナ好きの住民がたまの贅沢でなにも考えずにひと休みするような場所なのではないだろうか。最初はそのリアルな雰囲気に戸惑ったがサウナで頭がぐるぐる回り出し、すぐに慣れ、少しばかり仮眠した。
なんとなく、また香港島に戻った。
沢木耕太郎の『深夜特急』では、中環(セントラル)が「丸の内、霞が関、銀座、上野をひとつにしたような地域」と表現されているが、今でもその雰囲気が少し残っているような気がする。
ここまで来たし、世界三大夜景とも言われるビクトリアピークからの100万ドルの夜景とやらを見ることにした。少し寂しさを感じた。それはなにもこんなところにひとりで来ていることにではなく(それもあるかもしれないけれど)夜景そのものへのパワーを感じられなかったからだ。天気や時間が悪かったのもあるが、それ以上に、ネオン看板がなくなったことが影響してそう。
それよりも、ありえない角度で運行するケーブルカーの方が興奮した。
不完全燃焼だ。慣れた足取りで九龍の海浜公園に行き、見下ろしていた夜景を見上げながら酒を飲んだ。
今日は香港最終日。目の前には立派な夜景があるけれど、それを見ているようでまったく見ずに別のことを考える。贅沢な時間だ。頭には、明日は無事に上海に入国できるのだろうか、という不安とアルコールだけがぐるぐる回っていた。
雑居ビルの安宿でフィリピン人バックパッカーと話していると、小さなビジネスリュックしか持ってないことを驚かれた。キャリーケースの観光客でもバックパッカーでもなく、ただ散歩してる人なのかもしれない。