アニメーションと実写の違いは?メリットとデメリット、選択基準を徹底解説
普段からアニメーション制作をしているのですが、今まで得た知識に加え、実写に関してはネットから得た知識も踏まえて徹底的に解説します。
この記事を書いている私は、アニメーション制作をして4年ほど。
キャラクターアニメーションを中心にアニメーション制作をしています。個人デザイナーとして活動し、多数の制作実績があります。
アニメーション動画と実写動画の根本的な違い
まず始めに、アニメーション動画と実写動画の根本的な違いはわかりますか?
アニメーション動画は、手描きあるいはパソコンのソフトによって作り出された動画です。実際には存在し得ないキャラクターや世界観、目に見えないものなど、自由に表現することができます。
一方実写動画は文字通り、実在するものを撮影した動画のことです。実際の場の雰囲気や人の表情変化など、物事をよりリアルで正確に伝えることができます。
これらの根本的な違いから、それぞれメリットとデメリットが生じてきます。ここからアニメーション動画と実写動画をもう少し掘り下げていこうと思います。
アニメーション動画のメリット
まずはアニメーションのメリットから見ていきます。3D動画もアニメーションとして見ています。
撮影が難しいものを表現できる
「どうやって撮影したら良いのだろう?そもそも撮影できるのか?」と頭を悩ませる内容なら、アニメーションの出番です。
例えば「体内で起こっている仕組みを伝えたい」という場合。体内のように撮影が難しいものやそもそも目に見えないものは、対象物をデザインで可視化し、アニメーションを使って伝えます。
また形の無いサービスや規模の大きなサービスの紹介もアニメーション表現がよく採用されます。例を挙げると、「保険サービスの紹介」や、「電力の発電から供給まで行うサービスを紹介」といったものです。
中でもアニメーションと相性が良いのが、ITサービス関係です。アプリ紹介や、サイバーセキュリティサービス紹介など、アニメーション表現が使われているのをよく目にします。
その他に抽象的な内容もアニメーションが向いています。企業理念やビジョンを動画にしたものを見かるようになりましたが、アニメーションやモーショングラフィックスを使用した事例も結構あります。
複雑、難しい情報を伝わりやすくすることができる
具体例を挙げた方がわかりやすいかと思うのですが、「企業が海外へ進出する際の手続き」といった複雑な手順を説明する動画や、「IOTを活用した物流システム」のような体系的なサービスを紹介する動画です。
複雑な情報を整理しわかりやすく可視化することにより、理解しやすいアニメーション動画になります。
実写ではどうしても不要なものが写り込んでしまい情報過多になりがちですが、その点アニメーションではポイントを絞った情報を伝えることができます。
また難しい内容を整理してわかりやすくするだけでなく、興味が惹くように演出も加えることも可能です。数値やグラフにアニメーションを用いたIR動画や、子供向けの学習動画などがその例です。
表現の自由度が高い
アニメーションは表現の自由度が非常に高いので、演出で目を引いたり、想像力を掻き立てたり、関心を持ってもらう工夫ができます。実写にアニメーションを加えて、アニメーションを演出に使うこともあります。
一般的に知られていない商品を紹介する際、可愛いキャラクターを使用して親近感を持たせたり、手描きのアニメーションを使ってブランドの世界観を表現したりもできます。
逆にマニュアル動画のように表現をシンプルにして、ターゲットを限定しないようにできることもアニメーションの長所です。
修正や量産がしやすい
例えば「補助金申請手順の説明動画」といった度々内容に変更がありそうな場合は、アニメーションがおすすめです。実写で作ってしまい、変更の度に撮影し直し…なんてことは大変です。
またターゲットに合わせて何パターンか必要なCMや、シチュエーションによって内容が異なるマニュアル動画など、似たような内容の動画を複数量産するケースもアニメーション表現は力を発揮します。
テンプレートとなるアニメーションを1つ制作して、それをベースにいくつかパターンを作ると、効率良く量産ができます。
アニメーション動画のデメリット
次にアニメーションのデメリットを見ていきます。
正確な雰囲気や空気感が伝わらない
「採用動画で社内の雰囲気を伝えたい」「Webサイトの動画で店内の様子を見せたい」「観光地の魅力を伝えたい」といった場合、アニメーションは不向きです。
こういった内容をアニメーションにすると、「実際の様子はどうなんだろう?」と想像で補う必要になり、誤解も生まれてしまいます。
人の表情や人柄、その場の空気感など伝えたいのなら、撮影した方が間違いないです。
感情移入、共感しにくい
アニメーションに出てくるキャラクターに感情移入、共感させることは簡単なことではありません。
「ジブリアニメや新海誠監督のアニメは、感情移入するんじゃない?」と思うかもしれませんが、そのようなアニメは細部までとことん拘って作っているので、企業用アニメーションではなかなか再現できません。
ただ漫画を使用した動画は、アニメーションの中でも比較的感情移入しやすく、作りやすいです。 注意点として、アニメーションのテイストに視聴者の好き嫌いが出やすいため、気を使う必要があります。
感情移入の妨げにならないように、前もってターゲットの好みをしっかり把握することが重要になります。
完成イメージの共有がしづらい
このデメリットは企画やコンテ段階の問題なのですが、実写よりアニメーションの方が完成イメージを共有しづらいです。
私の実体験ですが、コンテで動きの説明書きはしているのですが、お客様が「実際どのように動くの?」と思われてしまう状況が結構あります。
アニメーションは全てデザイナーがイメージして作り出すものなので、事前に完全な完成イメージを共有することは至難の業です。最初にしっかりヒアリングをし、時には参考イメージを共有しながら進める必要があります。
長くなればなるほど費用がかかる
撮影は一通り準備が大変ですが、その後の撮影時間に応じて費用が比例的に増えることはありません。一方アニメーションの場合は、時間が長くなればそれに応じて作業が増え、その分費用も発生します。
情報量が多く、時間の長くなりそうな動画を制作する場合は注意が必要です。
実写動画のメリット
続いて実写動画のメリットを見ていきましょう。基本的にはアニメーションと相互補完するような関係になっています。
リアルに伝わる
ありのままの様子を伝えるには実写が非常に効果的です。
形のある商品の場合は、実写で伝えた方が正確に伝わります。実際の大きさ、質感、使用している様子など、このような細かい部分までそのまま伝わります。
観光PR動画で撮影された綺麗な風景をよく見るかと思いますが、それをアニメーションに置き換えたら変ですよね?実際の場の様子や雰囲気を伝える時は実写を選択すべきです。
信頼性や説得力がある
実写は、実際に存在する人やものを撮影するので説得力を持ちます。
採用動画で実際の社員が出てこず、代わりにキャラクターが働いているアニメーションを見せられたらどう思います?信頼性や説得力はかなり低くなりますよね。
信頼性や説得力を持たせたい場合は、実写表現を取り入れてみてください。
感情移入、共感しやすい
実写は、人の表情やその場の空気感、臨場感がそのままダイレクトに伝わります。それによって感情移入や共感もしやすくなります。
映画やドラマを見ていると、実際に目の前で起こっているように思えたり、実際に体験しているように思えたりしますが、アニメーションで実現しようとするとかなり大変です。
商品を実際に使った人の体験談やインタビュー、実話を交えた会社案内は、実写表現が有効です。
実写動画のデメリット
次は実写のデメリットを見ていきます。
複雑な内容を表現しにくい
例えば「海外から食品を輸入する手順」を実写でどう表現しますか?「法律や規制を調べて、申請書類を準備して…」といった複雑な手順を実写だけで伝えることは困難で、明確な撮影対象もありません。
気をつけないと情報過多になり、内容が理解されづらくなってしまいます。
撮影できるものに限度がある
まず目に見えないものは撮影できません。その他のケースでは、海外での撮影が必要だったり、撮影に大掛かりなセットが必要だったり、現実的でないことが多々あるのではないでしょうか?
建物によっては撮影できないものもあり、他人が映り込むと肖像権の問題にもなってしまいます。 社員インタビューでも後にその社員の都合で使用不可になることもあり、肖像権関連には注意が必要です。
撮影準備やスケジュール管理に手間がかかる
制作する実写の内容にこだわると、出演者のキャスティングやロケ地選び、撮影機材の準備に多くの手間や費用を費やします。
外での撮影は天気の影響も受け、スケジュール管理に手を焼く場合もあります。
後から修正が難しい
「撮影が終わってから起用したタレントの問題を起こして使えなくなった」ということは偶に聞きますよね。編集してどうにかなることもあるかもしれませんが、再撮影になると大変なことです。
アニメーションは後から修正は可能ですが、実写の場合、一旦撮影してしまうと修正がききません。 後々内容更新がありそうな場合は、あらかじめ対処方法を考える必要が出てきます。
アニメーション動画と実写動画の選択基準は?
アニメーションと実写のメリット・デメリットについて説明してきましたが、最後にこの2つの選択基準を挙げようと思います。ほぼ今まで述べてきたことをまとめた内容になっています。
信頼性や説得力、正確性が必要か?
信頼性や説得力、正確性が必要な場合は、実写の使用は有効です。説明部分だけアニメーションを使う方法も考えられます。
明確な被写体があるか?撮影できるものか?
明確な被写体があり、撮影も難しくない場合は、実写でも良いかもしれません。 被写体が目に見えないものや、撮影が困難であれば、アニメーション表現でカバーする必要があります。
雰囲気や空気感を伝える動画か?感情移入や共感を狙った動画か?
お店や観光地の実際の様子を伝える場合は、よほどのことがない限り実写一択です。また感情移入や共感が目的の場合は、実写の方が作りやすいと思います。
例外的に漫画を使った動画やテレビのようなアニメなら感情移入が不可能ではないため、拘って制作することも選択肢に入ります。ただテレビアニメのようなアニメーションは相当予算がある場合に限ります。
複雑な内容か?規模の大きな内容か?
複雑な内容や、規模が大きく撮影が難しい内容なら、補足的にでもアニメーション表現を加えた方が伝わりやすくなります。 「実写だけでは伝わらない可能性がある」ということだけ頭に入れておくと良いでしょう。
今後修正があるか?いくつかパターン分けした動画が必要か?
改定などで今後修正が入る場合は、修正の入りそうな部分はアニメーションで制作すべきです。実写を後から修正するのは手間も予算かかってきます。
またいくつか異なるパターンの動画を作る場合は、アニメーションの方が作りやすいので覚えておいてください。
まとめ
長々と書いてきましたが、アニメーションと実写のメリット・デメリットは理解できましたでしょうか?それぞれのメリット・デメリットを見ながら、どちらを選択するか考えてもらえれば幸いです。
基本的にアニメーションと実写は相互補完の関係になっています。双方のメリットを生かし「実写+アニメーション」と合わせて使うこともよくありますので、どちらか一方を補足的に使うことも選択肢になります。
私はアニメーションをメインに制作していますので、アニメーション制作をお考えでしたらお気軽にご連絡ください!