海が見える

8月21日、映画「うみべの女の子」を観てきたので感想などを書いていこうと思う。
原作の漫画はだいぶ昔に読んでおり、映画の公開を知って最近また読み直した。浅野いにおのことは大好きでほぼ全作品読んでいる。率直な感想はとても良かった。終わってしばらくエンディングの曲をダウンロードして聴きながら外のベンチに座ってぼんやりするくらいは余韻を引きずった。
映画のレビューをいくつか読んだけど、浅野いにおはこういう人間のめんどくさい部分をこうやって描くよっていうのを分かっているか分かっていないかで全然とらえ方が違うのだなと思った。

※以降ネタバレを含みます。

内容としてはかなり原作に忠実だったと思う。最初の方は一言一句そのまんまで思わず笑ってしまいそうだった。これは昔から言っているんだけど漫画2冊と映画の尺はぴったり合うから相当バカなことしない限りハズレはない。そして、なんといってもキャストの素晴らしさ。前情報見たときからまんまじゃんと思ってたけど、君たち漫画から出てきましたか?というくらい青木柚くんと石川瑠華さんは磯部と小梅だった。成人が中学生を演じているのに全くの違和感を感じさせなかった。

原作に忠実だったと言ったが、多少の改変はあり、気になったところが1点と好きだったところが1点。

気になったところは、兄のブログがTwitterになっていたところ。原作から10年経っているのでいろいろ考慮した部分があるらしいけど、個人的にはブログのままで全然よかった。Twitterだとなんか軽い感じがしてしまうから。

好きだと思ったシーンは塾の合宿からの帰りに小梅が磯部の家に行くところ。少しやりとりが荒っぽくなってて、磯部こんなに怒る?あれ?ってなってたら、何しに来た?の返答として小梅が最終的に「会いにきたんだよ!!」って叫ぶのよかったなぁ。胸が苦しくなった。
私が好きな人に用もなく会いたがる人間で、いつも、「会いに来たんだよ」って思ってるから刺さったのかもしれない。

文化祭のシーンは、荒れ狂う海とゆるやかな音楽「風をあつめて/はっぴいえんど」が合わさって進んでいくところはやっぱり音楽と映像で表現されるとより良かった。CDを捨てるところで泣きそうになった。

ロケ地はどこだったんだろう。画や色味がすごく好きな感じだった。
小梅がイソベやんのTシャツ着てたり部屋にイソベやんのぬいぐるみあったりしたのも浅野リスペクトを感じてよかった。

最後に、久しぶりに会った磯部と船着き場で話すシーン。元気で明るくなった磯部を見るのはほんとにつらい。人の気持ちは変わって行くものだと知っているけど、好きだった人を好きじゃなくなったり、近かったものが離れていったりすることはいつも受け入れ難い。その度に「人は二度同じ川に入ることはできない」って言葉を思い出して自分を納得させようとしている。

生物学的に人間は一緒に居続けるとお互い好きになってしまうのだけど、私はけっこうそれが苦手で。いつも流れに従うのが嫌で抗って、会うべきでない人に無理やり時空を捻じ曲げてでも会って生きてきたから。
でも、この作品はそうならないから好き。
変わっていくことがつらいと言ったのと少し矛盾しているかな。

今も聴きながら書いているんだけど、エンディングテーマの「Girl/world's end girlfriend」ほんとうに良いからみんなも聴いてほしい。薄暗い、湿気の強い夏と秋の間の海が見える。

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