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イベントレポート:空き家 (余白)があるから面白い ―マーケット(にぎわい)が紡ぐまちの風景 登壇者:小田井 孝夫、 岡西 康太 場所:港まちポットラックビル 名古屋市

2024年3月17日(日)、名古屋市港区築地口駅付近にある港まちポットラックビルに港まちづくり評議会主催のイベント
『空き家 (余白)があるから面白い ―マーケット(にぎわい)が紡ぐまちの風景』
に参加してきました。

登壇者は「港まちづくり協議会」所属で「みなと土曜市」主催であるさかさま不動産の岡西慶太さんと北区清水、尼ケ坂で空き家再利用の活動「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」主催の小田井孝夫さんで行われました。
参加者は12名、「空き家」「まちづくり」に関心のある方々が参加しました。
質疑応答を含めて2時間ほど行われました。
この記事では私が参加してきたこのイベントについてレポートしたいと思います。

【会場の雰囲気】

イベントが行われた港まちポットラックビルは名港線築地口駅2番出口を出てすぐのところにある書店街の一画にある港まちづくり協議会が事務所を構えるビルです。
普段は交流スペース、イベントスペース、展示会スペースとして利用されている3階建てのビルです。
1Fスペースには街づくり関係の書籍や全国の様々なフリーペーパーがあり、広々とした空間です。
2Fのイベントスペースは『ポットラック新聞』『ポットラック新聞かわら版』のバックナンバーや記事で取り上げられた人のパネル展示がなされており、さながら美術館のような空間です。


港まちポットラックビル 外観
港まちポットラックビル 1F内観

【イベントの雰囲気】

イベントは小田井さんの「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」の活動をインスタグラムの投稿画像を見ながら岡西さんが小田井さんに質問をしていく形で進んでいきました。
ですので、内容としては[NAGOYA AKIYA LOOK BOOK]の発刊の経緯から現在に至るまでの流れを当時の画像を通して時系列に沿って振り返っていくという内容でした。

【トーク内容】

話の内容は芸術家の小田井さんの話だけあって企画自体がある意味「エンターテイメント」といった感覚でした。
劇団に所属していた小田井さんの感覚からすれば、演劇を日々街を通して行っている感覚なのかもしれません。

「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」は小田井さんが相続した空き家物件を新しく事業をしたい人に貸していき、事業にしていくといった企画です。
特に興味深かったのは空き家を貸すかどうかは基本的に小田井さんが「面白い」と感じ街に合うと思った方に貸しているそうです。
こういった感覚的な基準で物件を貸すという話は初めてだったので非常に驚きました。
実は私自身まさに清水に住んでいるので「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」関係のお店に何度か行ったことがあります。
そして、どのお店も非常にエッジの利いた個性的なお店です。
この日、小田井さんが先の様な基準で空き家を貸しているからこそこういった強烈な個性を持つ街になっているのだと感じました。

トークは具体的な事例から。「空き家」という概念の話になっていきます。
小田井さんの「空き家」の定義は独特だと感じました。
小田井さん曰く
「空き家と家は厳密には違いはない」
とのことです。

「家も長期で旅行に行っていたり、日中家を空けているときは空き家に過ぎない」

という意見は「確かに」と思いました。

実際、近年物件のオーナーが良好に言っている期間だけ物件を貸すサービスはヨーロッパなどでは一般的なサービスです。
また、オランダなどでは一時期、長期間「FOR RENT」になっている物件をホームレスが占拠する運動があったりしました。
これらの事例を考えると、空き家と家の境界は思った以上に曖昧なのかもしれません。

後半は「まちづくり」に話が移ってきます。
ここでは港まちづくり協議会の説明が少し行われ、その後は「まちづくり」という考え方について話が広がっていきました。
ここで主に話題になったのは「まちづくり」という言葉と町に住む人の考え方の距離感でした。
まず、現在「まちづくり」活動と言われていることの多くは「まち」を「つくる」というよりは街に住んでいる方同士の調整を図ることが主な仕事です。
ですので、空き家を再利用したり、商店街に新たな事業者を誘致したり、まちでイベントを行う事と「まちづくり」は厳密に一致させようとすると違和感を感じてしまうわけです。
おそらく、この違和感は「まちづくり」には街の管理以上に街に関わる人の思いが含まれているからだと感じました。
つまり、「まちづくり」に関わる人はあくまで町の管理調整をしており、実際にまちが作られていく過程ではぞの街に関わる個々の人の「思い」が原動力になっているという事です。
そのため、「まちづくり」という言葉の中には原動力である町の人々の思いがこぼれ落ちている感覚を持つわけです。

このテーマについて私は

「まちづくりと聞くと、身体や生態系の新陳代謝でまちづくりに関わる人はそれに関わる医者や学者のように感じる」

といった意見に対して、小田井さんが

「人は思いによって状況を変え、創る事さえできる」

と答えられたのは印象的でした。

確かに、人間以上の動物は生態系のルールにただ従うだけですが、
人間は「こうしたい。ああしたい」という願望を元に現状を変えることができます。
実際、そういった思いがそれぞれの街を特徴的なものへ変えていくのも納得できます。

【イベントの内容まとめ】

●「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」の活動報告
「まちづくり」自体を楽しんでいる? 感覚的かつ芸術的な試み
●空き家と家の境界線は思った以上に曖昧?
●「まちづくり」といいう言葉の違和感。街のかじ取りと一人一人の思い


【登壇者略歴】

ゲスト 小田井 孝夫/LOOK BOOK:
2020年春、長屋や古民家をカタログ風に編集した小冊子「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」を制作。手描きによる味のある紙面が評判を呼び、「コロッケ屋みね」「呑み処ケケ」「みなみ古書店」といった個性的なショップが次々とオープン。老境羽化した「金城市場」も階層して各種イベントが開かれるなど、古い町並みが残る北区清水~尼ケ坂エリアに新風を巻き起こしている。
Instagram/@2020_akiya_lookbook


小田井 孝夫・康子 夫妻

進行 岡西 慶太/セン:
2021年より「みなと土曜市」を企画・運営。
2023年に「さかさま不動産名古屋みなと支局」を開設。買い物を通して地域内外の人たちが日常的にコミュニケーションができる場を目指す。「一人一人の“やりたい”を街や社会とつなぐ」をコンセプトにコミュニティーづくりや企画・ワークショップなど、さまざまな形でつながり方をサポートしている
Instagram/@tensenmen1000

岡西 康太さん

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