With the moon and the elf(月とエルフと)
どこにも出掛けなかった休日の終わり
彼はいつもスーパーに誘う。
何度ごねても諦めないのはわかっている。
抵抗するのも無駄なので、立ち上がりコーチジャケットに袖を通す。
いつもと同じ三番目の棚の前で彼が立ち止まる。
「これにしよか」
私が好きだと言った物を彼はしばしば買って帰ってくる。
喜んでほしいだけなのはわかっているけれど、優しさが時々苦しくなる。
同じだけのものをどれだけ返せるだろうか、そんな事を考える。
ーーあ、寝癖。
「はるきくん」
高架下で彼が振り返る。
退化してない耳が、エルフみたいで可愛いと思った。