びよういん
「今日は振替休日かなにか?」
ふと、美容師が言う。
この人に髪を切ってもらうのはもう3回目ぐらいになるだろうか。
特に髪型へのこだわりはない。
髪が伸び、寝癖がすごいことになり、鬱陶しくなってきたら切る。それだけ。
小洒落たことはせず、ただいつもと同じように切ってもらえればそれでいい。
ので、同じ美容師に切ってもらった方がいいという結論に至った。
この世界では、子供が平日に外にいると、必ずと言っていいほど何か聞かれるように仕組まれている。
高校生にもなると自分のことを子供と言うのはなんだか憚られるが、分かりやすく言うとそういうことだ。
「いや、通信制の高校なんで…」
声が小さすぎて3,4回ぐらい言い直した気がする。
同じことを何回も言っていると、だんだん恥ずかしくなってくるのはよくあること。
「そうなんだー。自分のペースの勉強できていいね。」
その言葉に、作った笑顔でうなずく。
なんて返せばいいか分からないときは、だいたいいつも笑ってうなずいてごまかしている。
悪いくせだと思う。
というより、自分のペースもなにも、勉強なんてまったくもってしていない。
その事実が自分の内側で蠢いていて、なんだかとても可笑しかった。
2,3週間ぐらい放置しているから、そろそろレポートもやらねば。
そんなことを思いながら、目の前に積もっていく、抜け殻みたいな髪の毛を眺めていた。
気が向いたらやる。
いつかやる。
たぶんやる。