訪れ
新しく買った大きいパーカーはまだタンスの中だけど、なんだかもう冬っぽい。
特に変わりはない日々。
気づけば寝ていて、気づけば夜になっている。
また気づけば朝のほうが近くなっていて、私は2階へつづく階段を上る。
わざわざ外に出てまで日を浴びる気にはならないけど、窓に反射したその光はどこか心地よい。
冷蔵庫からコーラを取り出して、一口。
日の光にあたって黄金色に輝くペットボトルがとても美しく映った。
指の先は、ぴんと冷えている。
人はこんなときに切なくなって、こんなときに、誰かと一緒にいたいと思うのだろうか。
そんなことを考えながら、ぎゅっと布団に包まる。
外側から少しずつ温まっていく。そんな瞬間が好き。
幸せなんて幾つもあるけれど、このなんら特別でもないときが一番幸せなんじゃないか。
今日と同じようないつかの冬にも、そんなことを言っていたような気がする。
何かが終わって、また始まりそうな夜。
なんだか、夜らしい夜。
兄がまだ中学生のころ。
少し寒くなってくるこの時季には、いつもジャージを着ていた。
そんな兄を見ながら、中学生はジャージを着るものなのだと思っていた。
それから月日は経ち、私は高校生になったけど、今もなお、冬はジャージの長ズボン。
着ると、いつも冬を感じられた。
スマホに添えた右手がとても冷たい。
こたつがほしい。
気分だけは、もう年の暮れのほうまで行っている。