初心者による初心者のためのDAO解説
みなさん、こんにちは。仮想通貨関連スタートアップでインターンを行なっている大学4年生のryuuuです。
今回は、「自立分散型組織(DAO)」について僕の思うところを書き綴っていきたいと思います!
ちょうど先日、前澤さんがTwitterで「みんな、DAO作ろうよ!」という旨のツイートしていましたね。あの前澤さんがDAOについて言及するとは…。ようやくDAOもマス層に認知され始めてきましたね。
このようにDAOやweb3.0がマス層に普及することが嬉しい一方、web3.0やDAOなどの言葉だけが一人歩きしてしまい、誇張されて捉えられているようにも感じます。
現状のDAOってそんなに革新的なのでしょうか??
このnoteでは、そうした僕が抱いている疑問を書き連ねていきます。僕はDAOの専門家ではありません。2019年に仮想通貨に触り始めたばかりの新参者です。
そのため、このnoteに書いてある内容が正しいとは限りません。むしろ、僕よりDAOに詳しい方に僕が抱いている疑問に答えてもらいたいと考えています。
ぜひ、有識者の皆様のご回答をお待ちしております!
DAOの定義
ウィキペディア(英)によると、DAOは以下のように定義されています。
日本語に訳すと、こんな感じでしょうか?
これだけでは、DAOがどのように機能するのかがイマイチわからないので、もう少しわかりやすいものを探してみましょう。
富田さんの図解を引用させていただきました。この図解すごくわかりやすいですよね。
株式会社は、「所有と経営の分離」という考えをもとに設計されているため、会社のオーナーシップは株主にあり、ガバナンスは取締役会に委任されています。また、報酬の多くもこの両者に分配されるのではないでしょうか?
つまり株式会社の場合、同じ組織の一員である従業員への貢献に対する還元が株主や取締役会と比較して、不十分であると言えます。
こうした組織におけるステークホルダー達の「差」を無くそうという思想で生まれた組織形態が「DAO」であると考えています。
DAOでは、ステークホルダー間に差異はありません。誰もがDAOの「所有者」であり、「意思決定者(正確には意思決定に参加する権利を持つ者)」です。
大体このような理解で大丈夫ですかね?
DAOのメリット
ここで、少しDAOのメリットについて考えてみます。一般的には以下がメリットとして挙げられていました。
ブロックチェーンによる組織内部の透明性確保
組織内の公平性の確保
組織内の手続きの簡略化
ブロックチェーンによる組織内部の透明性確保
DAOはブロックチェーン上に存在する組織です。そのため、組織に関連する情報は全てブロックチェーン上に記録されます。ブロックチェーンでは、あらゆるデータを誰もが自由に閲覧可能であるため、DAOに関するあらゆるデータも同様に外部に公表されます。
株式会社のように情報が秘匿されることがないため、DAOを活用することで汚職や検閲リスクなどを大幅に低下させることができます。
組織内の公平性の確保
上述した通り、DAOには組織内部における上下関係がなく、ステークホルダー間の関係は「フラット」となっています。
ガバナンストークンを保持していれば、誰でもDAO内の意思決定に参加可能という点で、DAOは「公平性」があるということができます。
組織内の手続きの簡略化
株式会社など既存の組織の場合、組織内の様々な手続きはその都度処理されることとなります。こうした手続きの方法は、業務コストを引き上げる上に、執行する人間によって「手続きに差が生じる」リスクもあります。
DAOであれば、事前にスマートコントラクトによって手続き方法が定められているため、手続きに係るコストを減らすことができ、手続き方法に関しても公平性を保つことが可能です。
DAOのデメリット
では、DAOのデメリットはどういった点にあるのでしょうか?一般的には以下の内容が挙げられています。
意思決定スピードが遅い
意思決定内容が正しいとは限らない
ハッキングリスクがある
意思決定スピードが遅い
意思決定のスピードとステークホルダーの人数は逆相関の関係にあると考えています。株式会社は、会社の重要事項については株主総会にて採決を取る意思決定方法を用いています。
しかし、会社運営における日々の業務に関する意思決定は取締役会に委任されているかと思います。「会社運営における日々の業務」に関しては、逐一株主総会で話し合っていては会社運営に支障が出ると考えられているためです。
つまり、株式会社は「会社の重要事項についての意思決定」と「日々の業務における意思決定」で、意思決定に関わるステークホルダーが異なっている点が特徴であると言えます。
一方、DAOでは全ての意思決定が「会社の重要事項に関する意思決定」に該当します。そもそも、DAOはステークホルダー間に差異を生み出さないという思想を持った組織であり、そのため取締役会と株主といった明確な役割分担がされているわけではありません。誰もが取締役であり、株主です。したがって、全ての意思決定について株主総会のように議決権の行使(ガバナンストークンの行使)というプロセスを経る必要があります。
そのため、DAOの意思決定スピードは遅くなってしまいます。
意思決定内容が正しいとは限らない
上述のように、DAOの意思決定は議決権による投票の結果に従います。そのため、株式のようにガバナンストークンの保有量が多い人間ほど、自分が有利となるような意思決定を行うことが可能です(1ガバナンストークン=1票の場合)。こうした人間が、DAO全体の利益を考えた行動をするという保証はありませんので、注意が必要です。
ハッキングリスクがある
DAOは、スマートコントラクトというプログラムによって会社の運営が為されます。これは人間による業務コストを引き下げることが可能であるというメリットがある一方、プログラムに完全依存した状態であると言えます。
つまり仮にプログラムに脆弱性があり、そこを突かれた場合、DAO全体が崩壊する可能性があります。
実際に、スマートコントラクトのハッキング事例(The DAOなど)は多く、DAOがマスアダプションするためにはこうしたハッキング対策が問題となってくることは間違い無いかと思います。
DAOによる意思決定の流れ
ある程度DAOの概要を理解できたところで、DAOの意思決定の流れを見ていきましょう。
ユーザーはガバナンストークンを購入することで、DAOに参加
(プロジェクトを利用することで、ガバナンストークンが付与される場合もある)ガバナンストークン保有者は、必要に応じて自分で提案を提出(一定量以上のガバナンストークンを保有する必要あり?)、もしくは提出されている提案に対する採決に参加
DAOが定める投票量に達した場合、その提案の採決が決定する
これだけでは、少し分かりにくいと思うので、実際にDAO化しつつあるプロジェクトを例に挙げて意思決定プロセスを見ていきましょう。
Uniswap
みなさん、Uniswapという分散型取引所をご存知ですか?DAO化しつつあるプロジェクトとして今注目を集めているプロジェクトです。
Uniswapについての解説は割愛しますので、詳細は以下をご覧ください↓
Uniswapは、ガバナンストークン「UNI」を保有するユーザーでプロトコルの意思決定がなされているプロジェクトです。
Uniswapは、2020年9月にガバナンストークン「UNI」を活用した組織体制へ移行することを公表し、同月過去にUniswapで流動性マイニングや取引を行っていたユーザーに対して、1.5億UNIを配布したことで大きな話題を呼びました。
その後、UNIは各取引所でも扱われることとなり、現在は誰でも自由にUNIを購入してUniswapのガバナンスに参加することができます。
では、Uniswapにおける意思決定プロセスの中身を確認してみましょう。
<提案する場合>
フォーラムに提案内容を投稿する
Uniswap DiscordのAdminsと連絡を取り、コミュニティコールやTwitter Spaceで提案について議論する
再度ブラッシュアップした提案を作成し、2-5日の投票時間でスナップショット投票を公開する
(このアクションには、少なくとも1,000 UNIトークンの委譲または自己委譲が必要である。スナップショット(投票結果)が有効であるためには、少なくとも25,000 UNIが投票に扱われる必要がある。)コミュニティのフィードバックを受け、提案内容の更新を行う
スナップショットを公開する(コンセンサスチェック)
(このアクションには、少なくとも1,000 UNIトークンの委譲または自己委譲が必要である。スナップショットが有効であるためには、少なくとも50,000 UNIが投票に利用される必要がある。)提案をオンチェーン投票に移行させる
(このアクションには、少なくとも250万UNIが委任されていることが必要である)
<投票する場合>
Uniswapやその他の分散型取引所(DEX)、またはFTXなどの仮想通貨取引所にてUNIトークンを購入
投票画面にて、採決内容への賛成/反対を示す
投票する側にはUNIを保有する(数量は関係なし?)以外の制約がない一方で、提案する側には一定以上のUNIを保有する必要があります。おそらく、よりUniswapにコミットしていないユーザーからの無意味な提案を排除するためだと考えられます。
今回はUniswapを例に挙げましたが、おそらく多くのDAO化を目指しているプロジェクトは同様の意思決定プロセスをとっていると考えられます。(他の意思決定プロセスがあれば、教えていただきたいです!)
本題 現状のDAOはそれほど革新的なのか?
ひと通りDAOの基本知識をインプットできたところで、僕が抱く疑問を投げつけたいと思います。
結局資本主義化するのではないか?
現状、多くのDAOがガバナンストークンを発行し、ユーザーはそのガバナンストークンを用いてDAOの意思決定に参加します。僕はこのガバナンストークンに問題があると考えています。
それがガバナンストークンが金銭によって取引可能であるという点です。金銭でガバナンストークンが購入可能であるということは、株式と同じようにお金で会社の運営を買い取ることができることを意味するのではないでしょうか?
そうなると、結局のところ富を有する者がDAOでは頂点に立ってしまいます。これでは、現状の株式会社と変わりません。
かといって、ガバナンストークンを金銭と切り離せば良いと結論づけることも難しいと考えています。なぜなら、DAOに集まるユーザーの多くはDAOの価値を高め、ガバナンストークンの価値を高めて、最終的にそのガバナンストークンを売却することで利益を得ることを目的としているからです。
仮にガバナンストークンを金銭と切り離すと、こうしたユーザーはDAOから離れてしまい、DAOの特徴である意思決定者の分散という目的が達成できないと考えます。
現状のガバナンストークンによる意思決定プロセスにはまだまだ議論の余地があるのではないでしょうか?
まだまだ現時点では言語化できていない課題もありますが、そこを考えても現状のDAOは発展途上であり、今のままマスアダプションすることは厳しいのかなと考えています。
DAOとは?
結局、DAOって何でしょうか?株式会社との決定的な違いは何でしょうか?
色々考えてみると、個國光さんが定義するDAOのあり方がとてもしっくりきたので、紹介します。
DAOはそのビジョンに共感したら、トークンを購入するだけで誰でも気軽にコミュニティに参加することを可能にします。やはり、この「参入障壁の低さ」は株式会社とは決定的に異なると思います。
この最たる例がビットコインです。ビットコインコミュニティは、サトシナカモトのビジョンに共感した有志がそのビジョン達成のために自発的に動いているDAOと表現することができると思います。
國光さんは、DAOの最上位から「ビジョン→コミュニティ→独自トークン」と位置付けています。しかし、現状の多くのDAOは独自トークンの価値向上に重きが置かれているというように感じます。言い換えると、短期的に独自トークンを売買する層が圧倒的に多いということです。
ビットコインコミュニティはそうしたDAOとは対照的です。常にビジョンの追求が先にあり、ビットコインの価格上昇は二の次と考えているのではないでしょうか?(既にある程度儲かっているという理由もありそうですが)
DAOを長期的に運営するのであれば、ビットコインコミュニティのように常にビジョンの実現が最上位になければ、短期的な独自トークンの値動きでDAO自体が揺らぐという可能性があると思います。
今後、DAOにとって「どのようにしてビジョンをコミュニティに伝え、DAOを長期的に運営するか」が重要になる気何しています。
終わり
DAOについて、僕が把握している知識内でDAOの基礎や課題について言及してきました。初めに述べたように、僕はDAOについてあまり追っていないため、時代遅れな部分もあるかと思います。(ただでさえ、仮想通貨業界のアップデートは早いので…笑)
「ここ間違っているよ」だったり、「こんなDAOがあるよ」といった意見がありましたら、是非教えてください!
Twitter アカウント:@ryuzo10121