【第１１話】ファーストキス（ただし女子制服着たまま）

「うわー、なんか異世界に行ってた気分」

　夕方の人混みの中でそう呟き、陵は鞄を抱えてもう一度、大きな息を吐いた。辺りには賑やかな人の声と、ビルの壁面に設えられた大型ビジョンから流れる流行曲の音が満ちている。

「公園、寄っていかない？」
「いいね。行こうか」

　結衣の申し出に頷き、陵は近くにある大きな公園に向かった。清陵センター前から少し歩くと喧噪が遠くなる。二人はやがて広々とした公園にたどり着いた。夕刻になった公園の中にはぽつぽつと外灯が点いている。遊歩道をゆっくりとした足取りで歩きつつ、陵は改めて深い息を吐いた。