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週末読書メモ57. 『ピクサー流創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

創造が生まれる世界を作る、そのことに全力を注いだ経営者の軌跡。


『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』、『ニモ』等、創業以外、多くのヒット作品を生み出し続けてきたピクサー。

本書には、その共同創業者であり、現社長、エド・キャットムルさんにより、創造的組織作りの肝が会社の歩みとともに描かれています。

アイデアをきちんとかたちにするには、第一にいいチームを用意する必要がある、優秀な人材が必要だと言うのは簡単だし、実際に必要なのだが、本当に重要なのはそうした人同士の相互作用だ。
(中略)アイデアは人が考えるものだ。だからアイデアよりも人のほうが大事だ。

私は知覚の限界についてよく考える。隠れて見えないものがどれくらいあるのだろうか。経営という文脈では常にこう考えるべきだ。「自分はどこまで見えているのだろうか。隠れて見えないものがどれくらいあるのだろうか。耳を傾けるべきカッサンドラはいないだろうか」。ないしは、善意に関係なく、呪われていないだろうか。
(中略)”隠れしもの” ー とそれを認識すること ー は、進歩を妨げるもの ー うまくいくとわかっていることにしがみつき、変化を恐れ、自らの成功における自らの役割について自らをだますこと ー を根絶やしにするために絶対に欠かすことはできない。率直さ、安心感、調査、自己評価、そして新しいものを守ることは、どれも未知に立ち向かい、不安や混乱を最小限にとどめるために用いることができるメカニズムだ。

創造的組織の根幹は、人であると。上記の通り、アイデアは人が考えるものであるため。その上で重要なことは、本来創造的なちからを持つ、ピクサーの仲間達が、相互作用できるか否かだと

そのためにも、筆者であるエドさんは、人々の相互作用を妨げる(進歩を妨げる障害)「隠れしもの」を、いかに認識できるか・立ち向かえるかに全力で取り組んでいきました。


創造性を阻害するものは数多くあるが、きちんとしたステップを踏めば創造的なプロセスを守ることができる、というのがこの本のテーマだ。
(中略)私がとくに重視しているのが、不確実性や不安定性、率直さの欠如、そして目に見えないものに対処するメカニズムだ。

私は、自分にはわからないことがあることを認め、そのための余白を持っているマネジャーこそ優れたマネジャーだと思っている。それは、謙虚さが美徳だからというだけでなく、そうした認識を持たない限り、本当にはっとするようなブレークスルーは起きないからだ。
(中略)成功するリーダーは、自分のやり方がまちがっていたり、不完全であるかもしれないとう現実を受け入れている。知らないことがあることを認めて初めて、人は学ぶことができるのだ。

詳細は本に譲るとして、そのアプローチは大きく2つ。

心理的安全性とオープンネスを高める組織運営、そして、マネジャー・リーダーの人材・文化の構築です。

特にピクサーにとって重要だったのは、上位層が知覚の限界と向き合っていたことです。

※「アンコンシャス・バイアス」(自分自身が気づいていないものの見方や捉え方の歪みや偏り)のその一つ。

これは、誰もが、必ず持っているもの。責任範囲が広いマネジメント層であるほど、全てを具体的に捉えることができないために、想像・推測が不可欠となり、それゆえ、知覚の限界やバイアスの度合いが大きくなります。

その結果、「隠れしもの」、進歩の妨げになるものを解決できなくなること。これが、創造するちからを失う大きな理由の一つだと、筆者は考えていました。

組織の創造性を蝕む問題の認識漏れ・解決漏れが生まれないよう、自分自身はもちろん、組織文化の管理に苦心し続けた結果が、ピクサーヒット作品の一因であった軌跡を、読者は知ることが出来ます。

取り組むべき課題が現れば、必ずまちがいはまた発生する、それが現実だ。我々の仕事に終わりはない。問題はつねに起こり、その多くは隠れて見えない。それらを明るみに出し、たとえそれによって葛藤が生まれようとも、それらの問題における自分の役割・責任を問わなければならない。問題に遭遇したら、全力をあげてその解決に取り組まなければならない。だから本書の書き出しも、そのようにした。
繰り返しておきたいことがもう一つある。社員に創造性を発揮させるためには、我々がコントロールを緩め、リスクを受け入れ、社員を信頼し、彼らの行く手を阻むものを取り除き、不安や恐怖をもたらすあらゆるものに注意を払わなければならない。これらをすべて実践しても創造的な組織文化を管理することは必ずしも楽なことではない。けれども、目指すべきは楽になることではなく、卓越することなのだ。


ピクサー本といえば、有名なのが、本書と『PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』。

創造性を持った組織作り、創造性とファイナンスの両立、というテーマにおいて、両者ともに素晴らしい内容であるとともに、一つのドキュメンタリーとして、大きな魅力があります。

どちらの本でも登場する共同創業者であるスティーブ・ジョブズさんと買収先責任者・元ディズニーCEOのロバート・アイガーさんの存在も際立ちますが、ピクサー社の歴史には様々な人々が存在していたことが分かります。

トルストイの『戦争と平和』にあったように、歴史とは、人々の思考・行動が折り重なった先に、紡がれていくもの。ピクサーの歴史も、まさにそうであったことをまざまざと感じ、感動すら覚えるものでした。

(なお、ロバート・アイガーさんの著書『ディズニーCEOが実践する10の原則』も超良本)


そのように、大きな歴史を紡いでいくためにも、筆者が取り組んだように、知覚の限界を乗り越え、創造・進化し続ける組織・文化は不可欠。

そして、『ビジョナリー・カンパニーZERO』にもあった通り、文化は創業者・創業初期から形作られるものだと。

である以上、今から向き合い続けていくしかない。頑張ろう!


【本の抜粋】
缶詰向上だった場所に建てられたピクサーの六万平方メートルのキャンパスは、サンフランシスコからベイブリッジを渡ったところにあり、隅から隅までスティーブ・ジョブズによってデザインされた。社員同士が自然に顔を合わせ、会話しやすいように、人の動線が考え抜かれている。建物の外には、サッカー場、バレーボールコート、プール、そして六〇〇人を収容する円形劇場がある。この場所を訪れる人の中には、無意味に凝っているだけだと勘違いする人もいる。そういう人は、この建物全体が「ぜいたく」ではなく、「共同体」という思想で統一されていることに気づいていない。スティーブは、建物でも社員のコラボレーション能力を高め、仕事を支援したかったのだ。

ピクサーを特別たらしめているもの、それは「問題は起こる」と思って仕事をしていることだ。問題の多くは隠れて見えない。それを明るみに出すことが自分たちにとってどれほど不快なことであっても、その努力をする。そして、問題にぶち当たったときは、前者全精力を挙げてその解決にあたる。

創造性を阻害するものは数多くあるが、きちんとしたステップを踏めば創造的なプロセスを守ることができる、というのがこの本のテーマだ。
(中略)私がとくに重視しているのが、不確実性や不安定性、率直さの欠如、そして目に見えないものに対処するメカニズムだ。

私は、自分にはわからないことがあることを認め、そのための余白を持っているマネジャーこそ優れたマネジャーだと思っている。それは、謙虚さが美徳だからというだけでなく、そうした認識を持たない限り、本当にはっとするようなブレークスルーは起きないからだ。
(中略)成功するリーダーは、自分のやり方がまちがっていたり、不完全であるかもしれないとう現実を受け入れている。知らないことがあることを認めて初めて、人は学ぶことができるのだ。

アイデアをきちんとかたちにするには、第一にいいチームを用意する必要がある、優秀な人材が必要だと言うのは簡単だし、実際に必要なのだが、本当に重要なのはそうした人同士の相互作用だ。
(中略)アイデアは人が考えるものだ。だからアイデアよりも人のほうが大事だ。

私は知覚の限界についてよく考える。隠れて見えないものがどれくらいあるのだろうか。経営という文脈では常にこう考えるべきだ。「自分はどこまで見えているのだろうか。隠れて見えないものがどれくらいあるのだろうか。耳を傾けるべきカッサンドラはいないだろうか」。ないしは、善意に関係なく、呪われていないだろうか。
(中略)”隠れしもの” ー とそれを認識すること ー は、進歩を妨げるもの ー うまくいくとわかっていることにしがみつき、変化を恐れ、自らの成功における自らの役割について自らをだますこと ー を根絶やしにするために絶対に欠かすことはできない。率直さ、安心感、調査、自己評価、そして新しいものを守ることは、どれも未知に立ち向かい、不安や混乱を最小限にとどめるために用いることができるメカニズムだ。

取り組むべき課題が現れば、必ずまちがいはまた発生する、それが現実だ。我々の仕事に終わりはない。問題はつねに起こり、その多くは隠れて見えない。それらを明るみに出し、たとえそれによって葛藤が生まれようとも、それらの問題における自分の役割・責任を問わなければならない。問題に遭遇したら、全力をあげてその解決に取り組まなければならない。だから本書の書き出しも、そのようにした。
繰り返しておきたいことがもう一つある。社員に創造性を発揮させるためには、我々がコントロールを緩め、リスクを受け入れ、社員を信頼し、彼らの行く手を阻むものを取り除き、不安や恐怖をもたらすあらゆるものに注意を払わなければならない。これらをすべて実践しても創造的な組織文化を管理することは必ずしも楽なことではない。けれども、目指すべきは楽になることではなく、卓越することなのだ。

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