「サークル砂漠」 #にじいろメガネ 連載(2024年4月号)
このポストは「アイユ」(公益財団法人 人権教育啓発推進センターの月刊誌)の連載からの転載です。諸事情により先方HPでの公開がなくなってしまったため、発行後にここで無料公開いたします。
試験的に投げ銭機能も設置していますが、全編が無料で公開されています。
2024(令和6)年4月、日本最大の性的マイノリティの人権の祭典「東京レインボープライド」が代々木公園で開催されます。
今年は記念すべき30年目となる節目の年です。100人程から始まったパレードも、今や来場者は20万人を優に超え、1万人を超える人々がパレードを歩くなど、代々木公園の最大級イベントの一つに成長しました(ちなみに、人で混み合うゴールデンウィークの時期、渋谷区民は街の中心部に寄りつかないので、意外やパレードや虹にあふれる街並みの認知は低かったりします)。人権課題を党派イシューにさせず、長らく粘り強く、幅広に取り組まれてきた運営の皆さんのご苦労には、本当に頭が下がります。
渋谷区は会場内にブースを出展してきましたが、2023(令和5)年から区内大学と連携し、学生と一緒にブースを運営しています。渋谷区内に性的マイノリティの公認学生サークルがゼロのため、賛同した大学が、セクシュアリティを問わず参加を募る形をとっています。
私が大学生だった30年前、都内に性的マイノリティの学生サークルは数える程しかなかったかと記憶していますが、その後も同様の状況が続いていたようです。
変化のきっかけは2009(平成21)年に早稲田大学で設立されたReBit(現在はNPO法人)。ReBitの盛り上がりに触発され、色々な大学で性的マイノリティのサークル活動が活発化しましたが、長くは続きませんでした。
学内にポスターを貼ったりチラシを配布するには、「大学公認サークル」であることが条件となります。サークル代表が大学へカミングアウトすることはもちろん、一定規模と活動実績を証明するため名簿の提出も必要です。しかしながら「公な活動」を志向することは、暴露を恐れる学生の敬遠を招くジレンマを生じ、多くが継続性につまづくのです。そしてSNSの浸透がさらなる打撃となりました。コミュニケーション力の高い当事者学生がSNSを通じて学外の当事者と広くつながっていったことで、学内サークルへの居場所ニーズが縮小したのです。
再びサークル砂漠となった現在、SNSでつながることに不得手、もしくは不安を覚える当事者学生がさらに孤立を深める状況が生まれています。
従来はサークル、もしくは社会学系のゼミ室等が居場所の機能を果たしてきましたが、今や孤立支援という観点から、大学として主体的に乗り出すことが求められているように感じます。
実は冒頭で紹介した渋谷区と大学の協働出展も、渋谷区がハブになることで、単体では難しい各大学でのセーフスペースづくりやアウトリーチ活動を、コレクティブインパクトの形で後押しすることを企図しています。
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