IT’S TIME TO BUILD - 作る時がきた
※本noteはMarc Andreessen(@pmarca)のエッセイ(https://a16z.com/2020/04/18/its-time-to-build/)の翻訳(非公式)です。
意訳・超訳は大目に見ていただけると幸いです。
西欧社会は、多くの事前の警告にもかかわらず、コロナウイルスのパンデミックに備えていなかった。制度的有効性のこの重大な失敗は、今後の10年間に大きな影響を与えることになるが、この問題について、われわれが何をすべきなのか、そしてなぜすべきかを問うのに早すぎることはない。
私たちの多くは、その失敗の原因をある政党や政府のせいにしたいと考えている。しかし、すべてが失敗したというのが、厳しいが現実である-西洋のどの国も、どの州も、どの都市も準備ができていなかった-これらの組織で働く人々のハードワークやとてつもない犠牲にもかかわらず、である。つまり問題は、槍玉にあがりやすい対立政党や自国の内側だけのことではなく、より深いところにあるのだ。
明らかに、問題の一側面は、先見性、想像力の欠如である。しかし、私たちが事前に”しなかったこと”、そして今私たちが失敗していることが、問題の別の側面である。それは行動の失敗であり、具体的には、様々な領域において”作る”能力が欠如していることだ。
緊急を要するにも関わらず、用意できないものがあることが、この問題を表している。コロナウイルス検査、および検査材料が不足している。驚くべきことに、綿棒や一般的な試薬も足りていない)。人工呼吸器、陰圧室、ICUのベッドも十分ではない。そして、手術用マスク、アイシールド、医療用ガウンも。これを書いている今、ニューヨーク市は、医療用ガウンとして使用するための雨合羽を切実に必要としている。2020年のアメリカで雨合羽!
何年も前から、コウモリが媒介するコロナウイルスについて警告あったにもかかわらず、治療法もワクチンもない。科学者たちが治療法やワクチンを発明してくれることを期待するが、それでも生産規模のスケールに必要な製造設備を準備できるかはわからない。さらに、治療法やワクチンの導入が迅速に実施可能かもわからない。2014年のエボラ出血熱では、規制当局から新しいワクチンの試験承認を得るのに5年かかり、その間多くの命が犠牲となった。
アメリカは、連邦政府の救済金を必要とする人々や企業に届ける能力さえない。何千万人ものレイオフされた労働者とその家族、そして何百万もの中小企業が、深刻な状況にあるまさに”今”、迅速に政府から彼らにお金を直接振り込む方法がない。毎年、すべての市民と企業からお金を集める政府は、国民が最も必要とするときに、お金を分配するシステムを構築していないのである。
なぜわれわれはこれらを持っていないのか?医療機器や旧最近の分配方法は、ロケット科学ではない。少なくとも治療法やワクチン開発は難易度が高い。しかし、マスクを作るのも、送金するのも難しいことではない。われわれはこれらを持つこともできたが、そうしないことを選んだのである-われわれはこれらを作るためのメカニズム、工場、システムを持たないことを選んだのである。われわれは”作らない”ことを選んだのだ。
このような自己満足、現状肯定感、作ることへの無頓着さは、パンデミックや医療の世界に限られた話ではない。西洋の社会全体、特にアメリカ社会全体に見られるものである。
住宅市場や物質的な都市の成り立ちにも、この問題は現れている。急激な経済的成長を遂げている都市では、十分な数の住宅を建設することができていない。その結果、サンフランシスコのような場所では、住宅価格が異常に高騰し、一般の人々にとって、そこで暮らし、仕事に就くことがほぼ不可能になっている。また、都市自体を作ることもできなくなっている。HBOの「ウエストワールド」のプロデューサーは、アメリカの未来の都市を描くため、シアトルやロサンゼルス、オースティンではなく、シンガポールで撮影を行った。すべてのアメリカの最高の都市には、きらびやかな超高層ビルや、すばらしい生活環境など、現状を遥かに凌駕するものがあるはずだった。(どこにある?)
教育にも表れている。一流の大学はあるが、18歳になる子供は、アメリカで毎年400万人、世界で毎年1億2,000万人いるが、そのごく一部にしか教えることができない。なぜ、すべての18歳に教育を与えないのか?それがわれわれできる最も重要なことではないか?なぜ、もっと多くの大学を作らないのか?または、今ある大学の規模を拡大しないのか?K-12教育における最後の大きなイノベーションは、1960年代にまでさかのぼるが、モンテッソーリの業績である。その理論について多くの教育研究が行われてきたが、50年間、実用化には至っていない。なぜ、これまでの研究結果をもとに、より多くのK-12教育を普及させないのか?研究から、1対1のチュータリングが学習成果を2標準偏差(ブルームの2シグマ効果)向上させることができるとわかっている。なぜ、若い学習者と年長のチューターをインターネットでマッチングさせ、生徒の勉強を飛躍的に改善するシステムがまだ作られていないのか?
製造業にも問題を見ることができる。常識に反して、アメリカの製造業の生産高は歴史上最も高い水準にあるが、なぜ、これほど多くの製造業の企業が、肉体労働の賃金の安い海外・地域へのオフショアリングを進めてきたのか?われわれは、高度に自動化された工場を構築する方法を知っている。われわれは、それらの工場の設計、建設、運営により、膨大な数のより付加価値の高い仕事が生み出されることを知っている。われわれは、重要な物品をオフショア生産に依存することの戦略的課題を知っており、今まさにそれを実感している。なぜ、イーロン・マスクが言うところの地球外弩級戦艦(alien dreadnoughts) -巨大で、きらびやかで、考えられるあらゆる種類の製品を、可能な限り最高の品質で、可能な限り最低のコストで生産する、最先端の工場-を、国内に建設しないのか?
交通機関にも表れている。超音速機は?配達用ドローン?高速列車、そびえ立つモノレール、ハイパーループ、そして空飛ぶ車はいつ実用化されるのか?
お金が問題なのだろうか?そうではないだろう、なぜなら中東で終わりの見えない戦争をし、銀行、航空会社、自動車メーカーを繰り返し救済するためのお金はあるからだ。連邦政府は、2週間で2兆ドルのコロナウイルス救済パッケージを可決した。問題は資本主義か?私はニコラス・スターンの、資本主義とは、われわれが知らない人々の手助けをするやり方、という考え方に賛成だ。上述した業界はすべて、すでに非常に利益率が高く、資本家による投資の踏み台となるべきであり、そうなることは投資家にとっても、サービスを受ける顧客にとっても良いことである。問題は技術力だろうか?確実に違う、もしそうであれば、今あるような住宅や高層ビル、学校や病院、車や電車、コンピュータやスマートフォンは存在しない。
問題は必要にある。われわれはこれらを”必要”としなくてはならない。問題は惰性にある。われわれは、阻止したいと思うより強く、これらを望む必要がある。問題は規制にある。私たちは、たとえ現存する企業が嫌ったとしても、新しい企業にこれらを作ってもらう必要がある。そして問題は意志にある。私たちはこれらを作る必要がある。
そしてわれわれは、イデオロギーや政治と、これらを作る緊急性を切り離す必要がある。双方が作ることに貢献しなくてはならない。
右派は、妥協するとはいえ、より自然なところからスタートする。右派は一般に生産活動を支持するが、市場ベースの競争と物を作ることを妨げる力により、あまりにも頻繁に腐敗している。右派は、顧客の方を向いた(長期的には、投資家にも良い結果となる)イノベーションのため、縁故資本主義、規制、硬直化した寡占、リスク誘発的なオフショアリング、および投資家の方を向いた自己株買いに対して戦わなければならない。
今こそ、新製品、新産業、新工場、新科学、大躍進への積極的な投資に向けて、右派による全面的な、そして妥協を許さない政治的支援を行う時なのだ。
左派は、多くの分野で公共部門に強く偏重しているが、優れたモデルであることを証明してほしい!公共部門がより良い病院、より良い学校、より良い交通機関、より良い都市、より良い住宅を作れることを示してほしい。古い考えに基づく、固定化された、無関係なものを守ろうとするのを止め、公共部門を未来に完全にコミットさせてほしい。かつて、ミルトン・フリードマンは、公共部門の大きな間違いは、政策やプログラムを、結果ではなく、その意図で判断することだと言った。それを侮辱や誹謗として受け取るのではなく、挑戦として受け止めてほしい-新しいものを構築し、結果を見せてくれ!
公共部門の医療の新しいモデルは、安価で効果的であることができることを示してほしい-VAから始めてはどうだろう?次のコロナウイルスが来たら、われわれを驚かせてほしい! ハーバードのような私立大学にさえ、公的資金は惜しみなく投入されている。なぜ、10万もしくは100万人の生徒を毎年ハーバードは受け入れることができないのか?なぜ、規制当局や納税者がハーバードに作ることを要求してはいけないのか?作ることで気候変動問題を解決する-エネルギーの専門家は、地球上のすべての炭素ベースの発電は、数千基の新しいゼロエミッションの原子炉で代替できると言っている。まずは10基から始めてはどうか?それから100基?そして残り?
実際、作ることがアメリカンドリームを再起動する方法ではないか。大量に作るもの(コンピュータやテレビのようなもの)は、急激に価格が低下する。そうでないもの(住宅、学校、病院のようなもの)は、価格が急上昇する。アメリカンドリームとは?自分の家を持ち、家族を養う機会がアメリカンドリームではないか。われわれは、すべてのアメリカ人が夢の実現を可能にするために、住宅、教育、医療において、急速にエスカレートする価格曲線を直す必要がある。そしてその唯一の方法は作ることである。
作ることは簡単ではなく、すでにわれわれはこれらすべてをやっているだろう。われわれは、政治家やCEO、起業家、投資家にもっと要求しなくてはいけない。われわれは、われわれの文化、社会にもっと要求しなくてはいけない。そして、お互いにもっと要求しなくてはいけない。われわれは皆、作ることに必要であり、そして皆、作ることに貢献することができる。
人々に問いかけるべきだ。あなたは何を作っているのか?他の人が作るのを助けているのか?他の人に作ることを教えているのか?作る人の助けをしているのか?もしあなたの仕事が、何かを作ることにつながっていないか、人の助けに直接関係していないのであれば、われわれはあなたを失望させてきたことになります。そしてわれわれは、作ることに貢献できる職務、職業、キャリアにあなたを就かせる必要がある。どんなに壊れたシステムであっても、優秀な人材は常に存在している。われわれは可能な限りすべてのタレントを、われわれの抱える最大の問題に立ち向かわせ、解決する方法を作る必要がある。
このエッセイが批判の的になることを期待している。ここで、批評家へのささやかな提案をさせてほしい。何を作るべきかについての私のアイデアを攻撃するのではなく、あなた自身のアイデアを考えてみてほしい。あなたなら何を作るべきだと思う?私があなたに同意する可能性は十分考えられる。
われわれの国と文明は生産と構築の上に築かれた。われわれの先祖は、道路や列車、農場や工場を作った。その後、コンピュータ、マイクロチップ、スマートフォン、そして数え切れないほどのものを作り、われわれはそれを当たり前のものとして使い、それらが日々の生活を定義し、幸せをもたらしている。彼らの遺産に敬意を表し、自分たちの子供や孫のために望む未来を創造する方法は一つしかない。それは作ることである。
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