オーバーストーリー もう一度、じっくり読みこんでみたい

読者による文学賞の二次選考 レビュー10冊目です

今回10冊目の本はこちらになります。

オーバーストーリー
新潮社 2019年10月30日 発行
リチャード・パワーズ 訳者 木原善彦(きはら よしひこ)

壮大な物語でした。
大きなくくりとして前半と後半に分かれており、さらに細かくいえば、前半は8つの短編で構成されており、それらの中で語られるのは「樹木」となんらかの関りを持つ人々の物語。それぞれが独立した物語として淡々と語られていきます。
物語が大きく動いていくのは、8つ目の短編から。8つ目の短編はとても短い話なのですが、この短編の主人公が後半部分の冒頭の話へとつながっていきます。
この小説には章タイトルのようなものがつけられているのですが、8つの短編は「根」とタイトルがつけられています。おそらくですが、8つの短編に登場する方々が、樹木の根のように根底ではつながりあっているということを伝えたかったのでしょうか。
後半部分の展開は、素晴らしいとしかいいようがありません。表現としては悪いのですが、前半を読んだ方の中にはよくわからない短編が続いていると感じる方がいるかもしれません。私もそう感じていた部分もありました。そこから、短編でそれぞれの人生を経た登場人物達が、それぞれの長い物語を経て一つの目的に向かって収束していくかのように、物語は展開していく様は、ストーリーの組み立て方の妙に唸ってしまうのではないでしょうか。
誰しもがそうであると思うのですが、頭では樹木の存在が大事であることは理解していると思います。思うのですが、そこに対して何かを行動している人となるとかなり少数になるのではないでしょうか。
もちろん、私も特に何も行動していません。
この作品はそのような方々に問いかけます。それも、物語中に明確に言葉で訴えるのではなく、長い物語を読み終えたときに、自分でも気が付かないほどに自然に、それまでの見方や考え方に変化の兆しが見えることに気が付くでしょう。決して押し付けるわけではなく、諭すわけでもなく。
あまりにも話が大きすぎて、これを老若男女問わずに進めていいのか判断できませんが、気になる方は是非手に取って読んでください。

そして、今までならここからネタバレを含むレビューを続けて書くのですが、このオーバーストーリーに関しては一旦控えます。
もちろん、全て読んだうえでこれまでのレビューを書いているのですが、この作品は読み込みが足りないと感じています。
10冊を読む時間が決められていた中で、この作品の翻訳小説という難解さ、単純なページ量は、読みこむには少々時間が足りなかったかもしれません。
改めて、しっかりと読みこんだときに、もう一度レビューしたいと思います。

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流水
サポートを頂けるような記事ではありませんが、もし、仮に、頂けるのであれば、新しい本を購入し、全力で感想文を書くので、よろしければ…