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【2024】COMIC OF THE YEAR (前編)

2024年の漫画読みライフを振り返り。
基本的に10作品選ぶつもりが半分しか選べなかった去年の反省を生かして、なんとか10作品をチョイスして、前編&後編で発表します。2024年のCOMIC OF THE YEARです。
毎年言っていますけれど、コンセプトとしては「次に来る漫画大賞」なんかに近いので、20巻・30巻レベルで連載が続いている作品はチョイスしない。コミックでもだいたい既刊5巻以内の作品が多くなっていると思います。

2020年からやってます。これまでの記録などはこちら。




「36」西馬宗志

2024/12/29時点:既刊1巻

STORY:あたし自身と世界を変えろーー「声」を、「歌」を、振り絞れ。母の用意した「不自由のない環境」の下、母の意志に逆らうことなど考えられない家庭で過ごす女子高生・杏(あんず)。スマホも持てず、小遣いもなく、数少ない娯楽は親の目を盗んで通う「CDショップの試聴コーナー」。そんな彼女はある日、夜の駅前ロータリーで出会ってしまった……悪魔みたいな顔で天使みたいなギターを弾く「やばいやつ」に。22歳の新星が描く、胸を打たれるストーリーに身震いせよ。

音楽漫画が好きだ。
ロックでもジャズでもクラシックでも。「BECK」「BLUE GIANT]「ソラニン」はもちろん「とんかつDJアゲ太郎」でも「のだめ」も、音楽がメインテーマにある作品は何かと贔屓にしてきた。自分が無類の音楽好きと自負しているからでもあるし、ライヴ空間で何度も最高の体験をしてきたからでもあるのだと思う。
22歳の新鋭が描く「36」は、抑圧されてきた少女と、飄々として自由で鋭利な刃物みたいな少年の物語。少女は歌い、少年はギターを弾く。CDショップが主な舞台になっているというのも、15年間CD屋で働いてきた僕が惹きつけられるには充分な理由だろう。若い世代は「CD屋で試聴」という至福の時間を体験した人、少ないと思うんだけど、これを22歳の著者が描いているというのは面白くもある。まだ1巻しかリリースされていないけれど、ビッグバン寸前で小爆発を繰り返す宇宙みたいで、なんだかよい予感をむんむん感じさせる作品。ブレイクするかな。月刊ビッグコミックスピリッツ連載中。




「バーサス」原作:ONE / 漫画:あずま京太郎 / 構成:bose

2024/12/29時点:既刊4巻

STORY:天敵“魔族”の台頭と侵攻により、人類が虐げられ続けて数百年―――。世界は“大魔王”と、その配下である47体の“魔王”により支配されていた。人々は怯えて暮らしながらも、世界中から選び抜かれた47人を“勇者”と名付け、魔王軍に対抗すべく準備を進めていた。そして今、人類の存亡を懸けた決死の作戦が始まろうとしていた―――。

この手の「異世界モノ」はあまり読まないのだけど、「バーサス」は面白かった。転載したSTORYでは本当に触りしか書いていないけど「47人の勇者が魔王軍に挑むのね、はいはい」って、これだけだと面白そうに感じないと思うんですよ。筋を少し言ってしまうと、13の異世界が融合します。お前は何を言っているんだ。そんで、その13の世界にはそれぞれ人間と、天敵が存在するわけです。つまり「13の異世界の複数の頂点捕食者たちが融合したひとつの世界になだれ込んできた」という最悪のシチュエーション主人公チームは驚異的なチート能力を持っているわけではなく、人間としては強いかもしれんが天敵たちにとっては虫けらみたいなもん。さて、どう乗り越える?
天敵たちも魔族、ロボット、宇宙人、パラサイト、大自然、神、ゲーム、巨人族、大怪獣と闇鍋ごちゃまぜカオス状態宇宙人と魔族がばったり出会ったら?みたいな「ありえない」バトルが描かれます。面白そうだろ。
問題は「こいつが強いと思ったらこっちはさらに強い」
みたいなパワーインフレが起こりつつあるので、どこかで手詰まりになるのではないかという不安。さて、どう回収するのかな。原作は「ワンパンマン」のONE。月刊少年シリウスにて連載中。既刊4巻。




「相席いいですか?」河上だいしろう

2024/12/29時点:既刊3巻

STORY:部下との関係に悩む社会人・椿。 バイトに四苦八苦の大学生・桃子。 年齢も経歴も違う二人が偶然相席して──…? ほっと一息。憩いのランチタイムコメディ♪

STORYだけみると、なんだか軽い感じの作品かと思われるかもしれません。「バーサス」からの落差もすごいしな。しかしながら!片やバリキャリだが人間関係不得意で部下にどう接していいかわからない社会人。片や愛されコミュ強だがカフェのバイトで皿を割りまくるドジっ子大学生。まったくタイプの違う女子2人の相席ランチタイムを通じてコミュニケーションとは?を考察しまくる哲学的作品であります。作者の前作「三十路病の唄」でも見られた通り、ギャグの切れ味も鋭く、女の子もかわいい。特にちょっと抜けたボケボケの女の子を描く力は天下一品かと思われます。
週刊ヤングジャンプにて連載中。既刊3巻。


「全部救ってやる」常喜寝太郎

2024/12/29時点:既刊2巻

STORY : 例えば猫は、毎日26匹が殺処分されている。例えば犬は、毎日6頭が殺処分されている。さまざまな理由で殺される動物たちを少しでも減らそうと日夜奮闘する人々がいる—— そして、どんな世界にも"ヒーロー"は存在する!!「動物保護」の世界を『着たい服がある』『踊れ獅子堂賢』の常喜寝太郎が徹底的に描く!!

既刊1巻モーニングで連載してた「踊れ獅子堂賢」の作者が、動物保護の世界を描く最新作。カリスマ美容師のもとでスタイリストを目指す星野と、動物保護活動を行う寡黙な男・久我の出会いから始まる物語。動物(※ペットの犬・猫はもちろん蛙や亀も)のために全て捧げ、救える命は全部救うと活動を続ける久我、そして保護活動のことなど何も知らずに久我の活動に関わり始めていく星野。多頭飼育崩壊の現場、ペットショップ、動物愛護センターなどでのリアルな現実。命を預かるとはどういうことなのか。ペットに少しでも関心のある人はぜひ読んでもらいたいです。裏サンデーにてWEB連載。既刊1巻。
過去記事より文章転載。




「CHANGE THE WORLD」田川とまた

2024/12/29時点:コミック未発売

STORY : ひとりの人間がなにもない空間を歩いて横切る、もうひとりの人間がそれを見つめる」演劇とはなんだろう? 演じるって? 自分のことすらよくわかってないのに、他の誰かの生を演じることなんてできるの? わからないから、演じる。わかりたいから、演じる。演劇に情熱を注いできた作家と編集がタッグを組み描く、青春舞台。

まだコミックス未刊行なんだけど、「36」と同じく期待枠として。堂々としていて迷いのない作風、そして映画みたいな台詞まわしが素晴らしい。野田秀樹に憧れて劇作家を目指す高校1年生・浜野陽太。そして学生演劇のレベルを超越した演技力をもつ少女・村岡茉莉。作家と演者、2人の出会いを主軸に描かれるストーリーだが、よくあるボーイミーツガールものかと思えば全くそんなことはなさそう。冒頭でも触れたけど、とにかく映画的。好きな人はめちゃくちゃ好きだと思います。裏サンデーにてWEB連載。
過去記事より文章修正のうえ、転載。


後編はこちら!


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