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全裸中年男性、皇居に侵入する

「君を男と見込んで我々のメッセージを持っていって欲しい」

 これまで数々のテロを起こしてきた極右団体「食べて応援!日本フレフレ会」の総裁は全裸中年男性に一通の手紙を渡した。

「これを皇居の長和殿の前に置いてきてほしい。我々が皇居のなかに侵入しようとすれば大変な騒ぎになるが、全裸の君なら逮捕されても奇行で終わる」

「で、謝礼は?」

「2億円だ。逮捕されずに無事に帰ってきたら渡そう」

 むろん総裁は全裸中年男性に1円も払うつもりはなかった。長和殿の前に手紙を置かせた直後に、警察に逮捕させるよう計らっていた。

 全裸中年男性は手紙を受け取るといちど家に帰ると言って自宅に戻り、手紙を勝手に開封して読み始めた。手紙には次のように書かれていた。

《うちのこどもは再来年、小学生になります。そのときにはチューリップを育てさせてお届けします。》

 それが言葉にするのも恐ろしいテロを意味する暗号の報告書になっているとも知らず、全裸中年男性は

「なんだ大仰なことをする。チューリップなら俺が来年には届けてやるよ」

 と言い、手紙を精子を拭く紙として使って捨てた。総裁に指示されたタイミングでは皇居に行きすらせず警官に阻まれたから金はいらないと嘘をついた。

 春になると全裸中年男性は花屋でチューリップを買い求めた。妖術を使って立派な鯉に化け皇居の壕を泳ぐと長和殿の前に本物のチューリップを置いてきた。全裸中年男性はそのあと後醍醐天皇を乗せた龍に化けて永田町を驚かせて自宅に帰った。

 監視カメラに妖術は通じず、全裸中年男性がチューリップを長和殿に置いていく様子はバッチリ写っていた。自由民衆党の幹部に警察から全裸中年男性は総裁と接触していたことが報告された。

 数日後、総裁は山のなかで首を吊って死んでいるのが発見された。「食べて応援!日本フレフレ会」は解散となり遺産は全額孤児の団体に贈られた。

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