全裸中年男性、自宅を核爆発させる
ある全裸中年男性の実家はキリスト教徒を自称していた。全裸中年男性の母親は80歳の老婆になるまでいちども教会に行ったことがなかったが、躾と称して息子の頭を聖書の角で殴るのが趣味だった。
教会に行ったことのない老婆は全裸がキリスト教の本来の姿であると勘違いしていたため、全裸中年男性を咎めなかったが、外には出るなと厳命していた。
全裸中年男性はやることもなく部屋でポテトチップスを食べたり雑誌を読んだりして暮らしていたが、あるときからパソコンに熱中するようになった。そして全裸で動画配信を始めた。
全裸動画配信の数日後には警察が自宅を訪問した。23日で釈放された後、全裸中年男性は懲りずに動画配信を再開した。異変を察知した老婆が部屋に怒鳴りこんできた。
「あれほど外はサタンばかりだから出るなって言ったのに、この馬鹿、死んじまえ。
いったい何人が見ているんだい。解散、解散、はい解散。とっとと解散。」
老婆が怒鳴り込んでくるハプニングはたちまちSNSで拡散され、視聴者は激増した。パソコンの画面に表示されるコメントに老婆は激昂し、聖書でパソコンのディスプレイを殴った。
老婆はパソコンのディスプレイが完全に破壊されるところまで聖書で殴り続けたが、カメラは回り続け、視聴者はさらに増えた。
「やりやがったな、このババア。」
全裸中年男性は怒り狂い、押し入れから核兵器を取り出した。
「なんでそんなものがあるんだい。」
「うるせえ。ネットで作り方を教えてもらったんだ。パソコン舐めんな」
全裸中年男性がスイッチを押すと、核兵器は天井を突き破って上空1000mに到達し、核爆発が起こった。テレビのニュースは周辺4kmで数十万人の犠牲者と深刻な放射線汚染が発生したと伝えた。動画の視聴者からも犠牲が出た。アメリカ大統領が緊急演説を行い、核爆発の混乱に乗じた北朝鮮の侵攻、すなわち朝鮮半島有事を引き起こすリスクに言及し、米軍に待機を命じたと発表した。
全裸中年男性は目を覚ました。
「なんだ夢だったか。」
全裸中年男性が自宅を捨てて山でお経を唱える修行をするようになってから数年が経っていた。《だいぶ時間が経ったが、自分はまだあのババアが忘れられないんだ》と全裸中年男性は思った。不愉快な夢だったが、目が覚めてみると大自然の清浄な空気がいつもより気持ちよく感じられた。
全裸中年男性が空を見上げると、雲ひとつない青い空に太陽が昇ってきた。