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全裸中年男性、小学生と礼儀を学ぶ

 駒場文蔵の活動は幅広く、マナー講師の肩書きも持つ。

 この日は小学生の前で講義を始めた。

「お辞儀には15度、30度、45度などがあると言いますが、こんなのはそのへんのヤクザでも知っています。本当は1度ごとに『キチガイ』『天才』『死ね』『好きよ』など意味が正反対になります。またお辞儀の際に手の位置を1cm変えることでも意味が正反対に変わります。これに髪の長さ0.1 mmごとの違いが組み合わされます。」

 そう言うと駒場文蔵は小学生にタブレットのPDFファイルを開くよう指示した。そこには45万通りのお辞儀の意味が記されていた。

「全部覚える必要はありません。好きな系統の100通りあれば普段の生活で使えます。」

 これまで異端視されてきた駒場文蔵だったが、園遊会で皇族に無礼を働いたことで有名になった。これを機に多数の若いサラリーマンが上司や取引先に無礼を働くために受講するようになり、小学生への講演依頼も来るようになった。駒場文蔵は有名になり無礼が働きにくくなったらお辞儀のやり方を1億通りに増やす構想を練っていた。

「駒場先生、遅くなりました」

 ドアが開くと、教室のなかに全裸中年男性が入ってきた。全裸中年男性は駒場文蔵に対して90度でお辞儀したのち、イスラム教式のお祈りを始めた。髪型はモヒカンだった。

「駒場先生、これどういう意味?」

 小学生たちは口々に尋ねた。駒場文蔵は沈黙ののち、

「貴様など呼んどらんわ。小学生の前で陰茎を見せるなっつてんだろうが。」

 そう言うと護身用に用意していたマシンガンで全裸中年男性を撃ち殺した。

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