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結局、カルロスゴーンってなにしたん?


カルロス・ゴーン元会長逮捕事件の真相

はじめに

2018年11月19日、日産自動車の会長であったカルロス・ゴーン氏が金融商品取引法違反の疑いで逮捕された事件は、日本社会に大きな衝撃を与えました。世界的に有名な経営者が、突然逮捕されたというニュースは、国内外で大きく報道され、様々な憶測を呼びました。

この記事では、ゴーン元会長が逮捕された理由とその背景、事件の経緯、裁判の経過、そして事件後の影響について、詳細に解説していきます。

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逮捕の理由

ゴーン元会長が逮捕された直接の理由は、金融商品取引法違反です。 具体的には、有価証券報告書に自身の役員報酬を実際よりも少なく記載していたという容疑でした。ゴーン元会長は、2010年から5年間で約100億円の実績報酬を受け取る権利を有していましたが、そのうち約50億円を退任後に受け取ることで合意していたとされています。 しかし、この合意は有価証券報告書に記載されていませんでした。検察は、この未記載部分が金融商品取引法に違反すると判断し、ゴーン元会長を逮捕したのです。  

また、ゴーン元会長は、会社法違反(特別背任)の疑いでも逮捕されました。 具体的な容疑としては、以下が挙げられます。  

  • 個人的な投資で生じた損失を日産に付け替えたこと

    • 2008年のリーマンショックでゴーン元会長が個人で契約していたデリバティブ取引で多額の評価損が発生し、その損失を日産に付け替えたとされています。

  • サウジアラビアの実業家側に日産の資金を不正に送金したこと

    • ゴーン元会長は、サウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏に、日産の子会社から複数回にわたり、計1470万ドル(約16億円)を不正に送金したとされています。ゴーン元会長側は、ジュファリ氏への送金は、サウジアラビアでの販売代理店とのトラブル解決や、現地政府へのロビー活動に対する正当な報酬だったと主張しています。

  • オマーンの販売代理店に日産の資金を不正に送金したこと

    • ゴーン元会長は、オマーンの販売代理店「スヘイル・バワン・オートモービルズ(SBA)」に、日産の子会社から複数回にわたり、計約500万ドル(約5億6000万円)を不正に送金したとされています。ゴーン元会長側は、SBAへの送金は、販売促進や販売網の構築に対する正当な報酬だったと主張しています。

事件の背景

ゴーン元会長の逮捕は、日産自動車内部の権力闘争が背景にあったとされています。 ゴーン元会長は、1999年に日産の最高執行責任者(COO)に就任し、大胆なリストラを断行することで、経営危機に陥っていた日産をV字回復させました。 しかし、その強引な手法や高額な報酬は、社内の一部で反発を招いていました。 特に、成果主義を重視するゴーン元会長の経営スタイルは、年功序列を重視する日本の伝統的な企業文化と相容れない部分があり、軋轢を生んでいた可能性があります。  

また、ゴーン元会長は、ルノー・日産・三菱自動車の3社連合のトップとして、ルノーとの経営統合を画策していました。 しかし、日産側にはルノーの傘下に入ることに抵抗があり、ゴーン元会長の解任を画策する動きがあったとされています。 ゴーン元会長の逮捕は、こうした社内抗争の結末として起きたという見方もあります。  

裁判の経過

ゴーン元会長は、2018年11月19日に金融商品取引法違反の疑いで逮捕された後、東京拘置所に勾留されました。 弁護側は保釈を請求しましたが、認められず、長期にわたる勾留が続きました。 ゴーン元会長は、勾留中に「人質司法」だと批判し、日本の刑事司法制度を非難しました。 特に、長時間の取り調べや、弁護士の立会いがないまま行われることが多かったこと、保釈が認められにくいことなどを問題視していました。国連の恣意的拘禁に関する作業部会も、ゴーン元会長の勾留は国際人権規約に違反するとして、日本政府に釈放を勧告しました。  

2019年3月、ゴーン元会長は10億円の保釈金を支払って保釈されましたが、同年4月には再び逮捕されました。 その後、5億円の保釈金を支払って再び保釈されましたが、厳しい監視下に置かれ、妻との面会も制限されました。 ゴーン元会長は、この保釈条件は不当であり、人権侵害にあたると主張していました。  

2019年12月、ゴーン元会長は保釈条件に違反し、日本からレバノンに逃亡しました。 逃亡の経緯は、楽器ケースに隠れてプライベートジェットで出国したというもので、世界中で大きな話題となりました。 ゴーン元会長は、レバノンで記者会見を開き、日本の司法制度を批判し、自身は「不正なシステムから逃れた」と主張しました。  

ゴーン元会長の逃亡により、裁判は中断されました。 東京地検特捜部は、ゴーン元会長の身柄の引き渡しを求めていますが、レバノン政府はこれに応じない姿勢を見せています。 共犯として起訴されたグレッグ・ケリー元代表取締役は、2022年3月に懲役6カ月執行猶予3年の有罪判決を受けました。 しかし、罪に問われた8年間分の虚偽記載のうち7年間分については、ケリー元取締役には報酬隠しの認識があったとは認められませんでした。 法人としての日産も、求刑通りの罰金2億円を支払っています。  

ゴーン元会長の裁判は、彼が国外逃亡したため、日本では終了していません。東京地検特捜部は、ゴーン元会長の身柄の引き渡しを求めて国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配をしていますが、レバノンは日本との間に犯罪人引渡し条約を締結していないため、ゴーン元会長が日本に引き渡される可能性は低いとみられています。  

事件後の影響

ゴーン元会長の逮捕と逃亡は、日本の刑事司法制度や企業統治の問題点を浮き彫りにしました。 長期勾留や保釈中の厳しい制限は、国際的な人権基準に照らして問題視する声も上がりました。 ゴーン元会長の事件をきっかけに、日本の刑事司法制度の改革を求める声が国内外で高まりました。  

また、この事件は、日産自動車の企業イメージにも大きなダメージを与えました。 ゴーン元会長の逮捕後、日産は社内調査を行い、ゴーン元会長による様々な不正行為を明らかにしました。 金融庁は、日産に対し、有価証券報告書の虚偽記載を理由に、24億円の課徴金を納付するよう命じました。 ゴーン元会長の後任となった西川廣人社長も、不正に関与していた疑いが浮上し、辞任に追い込まれました。 西川氏は、ゴーン元会長から不正な報酬を受け取っていたとされ、日産から損害賠償請求訴訟を起こされています。  

ゴーン元会長の事件は、日産の企業統治の脆弱さを露呈させました。日産は、事件後、ガバナンス改革を進め、取締役会の独立性を高めるなどの対策を講じています。 しかし、事件の影響は大きく、日産の業績は低迷し、株価も下落しました。 ゴーン元会長が築き上げたルノー・日産・三菱自動車の3社連合も、事件をきっかけに亀裂が生じ、今後の行方が不透明になっています。  

ゴーン元会長は、レバノンで記者会見を開き、自身の潔白を主張するとともに、日産と検察による陰謀だと訴えました。 ゴーン元会長は、日産の幹部らが、自身の権力を奪い、ルノーとの経営統合を阻止するために、検察と共謀して自分を陥れたと主張しています。 2023年には、日産自動車などを相手取り、名誉毀損で1400億円余りの損害賠償を求める訴訟をレバノンの裁判所に起こしています。 ゴーン元会長は、この訴訟を通じて、自身の名誉を回復し、事件の真相を明らかにしたいと考えています。  

専門家や世間の反応

ゴーン元会長の逮捕と逃亡は、専門家や世間の間でも様々な意見を呼びました。

一部の専門家は、ゴーン元会長の逮捕は、日本の検察による「見せしめ」であり、過剰な捜査だったと批判しました。 日本の刑事司法制度は、自白偏重主義や長期勾留などの問題を抱えており、国際的な人権基準から見ても問題が多いと指摘されています。 ゴーン元会長の事件は、こうした日本の刑事司法制度の問題点を改めて浮き彫りにしたと言えます。 また、東京大学の田中亘教授は、ゴーン元会長の報酬に関する合意は、将来の支払いを約束したものであり、直ちに有価証券報告書に記載する義務はないと指摘し、金融商品取引法違反の容疑は成立しないとの見解を示しています。  

一方、ゴーン元会長の不正を厳しく批判する意見も多く、その経営手法や報酬の高さに疑問を呈する声もありました。 ゴーン元会長は、コストカッターとして知られ、大胆なリストラによって日産をV字回復させましたが、その一方で、多くの従業員を解雇し、下請け企業を苦境に追い込んだという批判もあります。 また、ゴーン元会長は、年間10億円を超える高額な報酬を受け取っていましたが、その妥当性についても疑問視する声がありました。  

ゴーン元会長の逃亡については、日本の司法制度を軽視した行為であり、許されるべきではないという意見が根強くあります。 一方、ゴーン元会長は、日本の司法制度は不公正であり、逃亡せざるを得なかったと主張しています。 ゴーン元会長の逃亡は、日本の司法制度の信頼性を揺るがすものであり、国際社会からの批判を招きました。  

結論

カルロス・ゴーン元会長の逮捕事件は、多くの謎を残したまま、現在も係争中です。事件の真相は未だ解明されていませんが、日本の刑事司法制度や企業統治の問題点、そしてグローバル企業におけるリーダーシップのあり方など、多くの課題を私たちに突きつけました。

ゴーン元会長の事件は、今後の日本社会に大きな影響を与える可能性があります。私たちは、この事件を教訓として、より良い社会を築いていく必要があるでしょう。 特に、以下の点が重要になります。

  • 刑事司法制度の改革: 長期勾留や自白偏重主義など、日本の刑事司法制度の問題点を克服し、国際的な人権基準に合致した制度を構築する必要があります。

  • 企業統治の強化: 企業の内部統制システムを強化し、不正行為を防止する必要があります。また、取締役会の独立性を高め、経営の透明性を確保する必要があります。

  • グローバル化への対応: グローバル化が進む中で、異なる文化や価値観を持つ人々と共存していくための相互理解を深める必要があります。

ゴーン元会長の事件は、私たちに多くの教訓を与えてくれました。私たちは、この事件を風化させることなく、より良い社会を築いていくために努力を続けなければなりません。

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