HARD&SOFT全曲解説1「阿婆擦戦隊ビッチマン」~ニッチマン:音楽としてのBITCHMAN~
Key: Gm→G→Gm→G→Gm→A♭→A→Am
Artist: RIZARDI feat. Ryusei
BPM: 185
読み: あばずれせんたいびっちまん
タイアップ: Webアニメ「阿婆擦戦隊ビッチマン」OPテーマ(※架空のアニメです)
<令和に産み落とされてしまった日本一下品な”H-ERO"ソング!>
※この曲は制作期間が長く、書きたいことが溜まってしまってます。前編後編に分けても尚長文になりますが、ご了承ください。本人はいたって本気(マジ)です。
この秋、音楽や映像の即売会「M3-2020秋」に合わせ、16曲(+オフボーカル)収録の新作「HARD&SOFT」をリリースしました。音源の差し替えなどちょいちょい動いておりましたが、後追いでbandcampでのデジタル販売および各種サブスクでの配信も始まりました。
あれからだいぶ落ち着いてきたので、記憶が薄れないうちに、例によって全曲を着実に書き残していこうと思います。
まずはもちろん、1曲目からです。
ビッチマン誕生
「阿婆擦れ」「戦隊」「ビッチ」「マン」。ミスマッチかつ猥雑な言葉を陳列させて狙った、今作きってのセンセーショナル(悪い意味で)枠をまずはご覧に入れましょう。又の名を「センセーには内ショの音がナル」枠にございます。
この度、Ryuseiが大事にしてきたキテレツ感あるポップを地で行きつつ、別の顔・RIZARDIのアグレッションとエキセントリックな異形ユーモアに長けた音楽表現ができるようになったのが全ての基点でした。「HARD&SOFT」はタイトルでありモットー・スローガンとも言えます。
そして音楽芸人を目指すなら”劇薬”も扱いたいという野望の為にも、
”劇薬”=「下ネタ」解禁です。
恐らく本当にこんなWebアニメがあるなら、「サウスパーク」あたりを執拗にリファレンスしてくるんだろうなかとか思ってしまいます。
ただ所詮はニッチ、笑わすためだったら平気で淫語をぶっ込んじゃっても良かったのかもしれません。しかし適度に脳内が活性化してくれたおかげでそうもならず、痛々しくない程度に楽しく(脳が)イッた有様を導けたと思います。
楽曲展開(89秒で100%を詰め、265秒で100%に照りが増す)
確か去年のうちには構想が始まっていて、当初は1番のみの予定でした。そこに、アニメ化する予定もないクセにピッタリ89秒(TVアニメの主題歌の尺として規定されている)に揃えるという”渾身の一ネタ”を据えて臨みました。185BPMだと89秒で68小節強が使えるので、
イントロ前半…アウフタクト+4小節
イントロ後半…4小節
Aメロ…16小節
Bメロ…8小節
名乗り…8小節
サビ…16小節
阿婆擦戦隊ビッチマン!(タイトルコール)…4小節
エンディング(イントロを元に)7小節強+余韻
と、予め構成を組んでいます。”ないアニメ”なのに「タイトルが表示されるタイミング」「戦隊シリーズなら名乗りが欲しい」と思慮するわけです。取り越し苦労どころかこれは努力の無駄遣い…可笑しいかもしれませんが、これはベラボウにクリエイティブなことだと信じています。
一応ロングバージョンになると…
イントロ前半…アウフタクト+4小節
イントロ後半…8小節
1番Aメロ…16小節
1番Bメロ…8小節
1番名乗り…8小節
1番サビ…16小節
阿婆擦戦隊ビッチマン!…4小節
2番イントロ前半…4小節
2番イントロ後半…8小節
2番Aメロ…16小節
2番Bメロ…8小節
2番名乗り…8小節
2番サビ…16小節
阿婆擦戦隊ビッチマン!…4小節
間奏1…8小節
間奏2(シナリオ)…25小節
2番サビ(嬰ト短調へ転調)…8小節
2番サビ(イ短調へ転調)…16小節
阿婆擦戦隊ビッチマン!…4小節
エンディング(イントロを元に)7小節強+余韻
こうなります。
長くなっても特に目立った発展はしていないので、これでも表現は100%な感じです。でもその分100%は深みを増し、更に照りが出ます。やっぱりフルを聴いてこそなのです、奥さん!
のちに89秒バージョンは「阿婆擦戦隊ビッチマン(早撃ち★TVサイズ)」としてトラックリストに残るのでした。フルバージョンはリリース直前にミックスを直していますが、訳あってこっちは4月先行公開当初のミックスのままにしています。
早…撃ち???TV?????
5人寄れば…?
まず大前提として、「阿婆擦戦隊ビッチマン」という5人の戦隊がいます(いません)。
※何かのアニメでも語られていましたが、物語というのは大抵突飛な設定をいきなり突きつけられるものなので、どうか広い心で進んで下さいませ。
名前はそれぞれ
赤=「ストイコビッチ」
…ビッチマンきってのいじられ・ツッコミ要員!
青=「ショスタコービッチ」
…ビッチマン随一のナルシスト要員!
黄=「リトルビッチ」
…ビッチマンを代表する不憫・童貞・愛犬家要員!
緑=「ワサビッチ」
…ビッチマン最強の無味無臭人畜無害・まったり要員!
桃=「下谷(しもたに)ビッチョリーヌ」
…ビッチマン誕生以来の下谷ビッチョリーヌ!!!
といい、戸籍の上ではみな男性です。正直なところ歌で表現したいことと言えば「”Man”なのに”Bitch”を名乗る彼らの流儀」であり、特定の人種やジェンダー、性指向等々を侮辱する意図は全くありません。
例えるなら、彼らにとって「Bitch」とはオーストラリア人の「Mate」的なものだと考えてもらえればと思います。
もちろん名乗りのために5人分声を収録したのは私ですが、「1人名乗る直前に他の4人が色の名前を言う」形にしたいと思い、以下のように5テイク録って重ねています。ちょうど映像でいえば、1人が真ん中でポーズをとって脇にヤンヤヤンヤやってる4人といった感じです。
テイク1(ストイコビッチ):
…「ストイコビッチ!」
(ブルー!)…
(イエロー!)…
(グリーン!)…
(ピンク!)…
テイク2(ショスタコービッチ):
(レッド!)…
…「ショスタコービッチ!」
(イエロー!)…
(グリーン!)…
(ピンク!)…
テイク3(リトルビッチ):
(レッド!)…
(ブルー!)…
…「リトルビッチ!」
(グリーン!)…
(ピンク!)…
テイク4(ワサビッチ):
(レッド!)…
(ブルー!)…
(イエロー!)…
…「ワサビッチ!」
(ピンク!)…
テイク5(下谷ビッチョリーヌ):
(レッド!)…
(ブルー!)…
(イエロー!)…
(グリーン!)…
…「下谷ビッチョリーヌ!」
トラックメイク(戦隊アニメ風ハードコア)
キモは何といっても、平歌とサビでトラックの構成がガラッと変わっていることにあります。
イントロ~Aメロ~Bメロは基本的にストリングス&ブラス&パーカッション(ほとんどNative Instruments社のKONTAKT内蔵)で構成されている一方、サビは潰れたバスドラムとベース、シンセ(アルペジオ)に切り替わります。このバスドラムはそれこそガバ~ハードコアテクノと呼ばれるジャンルで使うような、元来重低音の成分が多く過剰に歪んだ音色です。
自慢の音色のはずなんですが、そのまま使ったら全く曲に合わず…”和を乱さない”ようにわざとオイシイ帯域をEQでカットすることになりました。「適材適所」という言葉を3回書いて飲みました。
コード楽器とブラスは乗っかったままというのもありますが、上記の生贄を捧げたおかげでサビへの繋がりの違和感がだいぶ無くなったのではないかと自負しています。これぞチームプレイ、ビッチマン・フォーメーションと申します。
少々音屋向けな知識になりますが、サビ後半「いい加減朝帰り~」の裏で鳴っているドラムは「アーメンブレイク」と呼ばれ、ヒップホップやエレクトロ・ドラムンベースといったクラブミュージックのプロデューサーがこぞって重宝する極めて重要なサンプルです。
自分流ポップの中には、大好きなクラブミュージック的要素が割と濃いめに入ります。しかし、そもそもJ-POPにはロックもバラードもラップもソウルも歌謡曲もEDMも何でも入っています。そんな風に、ジャンルを丁寧に喰い荒らしつつも雑多にならず、ポップであるという一貫した形で聴かせられたらベストだと常々考えています。そういう点でもってインスト版を聴けばもっと楽しめるのではないかと自信は十分です。
この曲は全体的にはアニメやゲームの曲が大きなインスパイア元となっていて、名の知れたところだと
・徒花ネクロマンシー/フランシュシュ(アニメ「ゾンビランドサガ」のOPテーマ)
…パワフルな設定が映えるセンセーショナル(良い意味で)なアニメ。歌メロやブラスの入り方が昭和っぽく、それでいて女性声優が活躍する系の近年のアニソンらしい主題歌です。
・戦闘!チャンピオン/増田順一(ゲーム「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」BGM)
\おんみょーん/
…言わずと知れたシロナ戦です。BGMが始まってしばらくすると聴こえてくるスネアドラムの細かいパターンが強烈に記憶に残っていたので、「ビッチマン」イントロ・Aメロではこれに似せて小さくスネアを連打させました。187BPMとテンポも近いです。というか最近シロナ戦BGMにダンス動画を合わせる映像増えてませんか??
・「エキセントリック少年ボウイ」のテーマ/エキセントリック少年ボウイオールスターズ
…ダウンタウンは芸のみならず、非常に多くの音楽をもたらしてきました。槇原敬之との「チキンライス」、小室哲哉との「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」、テイ・トウワとの「Kick & Loud」など、超有名ミュージシャンとのコラボも果たしています。一方で、往年のテレビ番組「ダウンタウンのごっつええ感じ」で仕掛けたのがこのヒーロー系コミックソングでした。これ自体”ヒーローもの”のパロディであるため、笑かしながらそういう系の要点を痛快に押さえてきます。あとで気付いたことになりますが、「少年ボウイ」も「犬ドッグ」も「阿婆擦ビッチ」も似たものではないか、そういう気がしてなりません。この世はエキセントリックだったのか。
以上のような曲が挙げられます。
歌詞(Bitch Manって何だろう? ちょっと聞かないでくれ)
不肖、下品な文句を吐いときゃ治まるタマではございません。言葉遊びや対句もそこそこに、どうすれば下ネタを操れるのか頭をこねくり回すのが特に楽しかったです。「褥(しとね)」という言葉を使おうと思ったのは間違いなくサザンオールスターズ・桑田佳祐の影響です。
(1番)
荒野に風吹きすさビッチ
全員出動 並ビッチ
必殺技名 叫ビッチ
夜は歌舞伎町で 遊ビッチ(ハイ!ハイ!ハイ!)
いい加減朝帰り ほどほどにしてくれ(ハイ!ハイ!ハイ!)
Yes, you are ヒーローズ だけど本当はアバズレ
詰まるところ、ここで聴くべきはバ行五段活用あるいは上一段活用の活用となります。大箱で「ビーッチ!」の大合唱は起こるのでしょうか?
「カーマ・スートラ」とは、古代インドに伝わる”愛”と”性”に関する書物です。
「性典」とも称されます。
続いて間奏部分です。2番が終わってしばらく聞いていると、何やら会話が聴こえてきます(上記「間奏2(シナリオ)」部分)。
「ビッチマン秘技 四十八手」
ストイコビッチ:フッフッフ…ここだと思ってたよ
リトルビッチ:知ってただろ?
ストイコビッチ:あぁ、”ブルー・ジュエル”のユーキちゃんだっけ?本当おまえツラ重視だよな
リトルビッチ:うっせーぞ!お前こそ指名したコ片っ端からメガネさせてんの知ってんぞ!ww
ストイコビッチ:このビッチが
リトルビッチ:メ、メガネ好きならいっそ、メガネザルさんハメりゃいいのにwwww
ストイコビッチ:おい正気か
リトルビッチ:あとブルー・ジュエルじゃなくてブルー・ジュエル”ズ”な、”ズ”!
ショスタコービッチ:ブルーだって!?僕の出番なのかい!?
ストイコビッチ:あんたじゃねえ
ワサビッチ:ねえねえ、無性に寿司食いたくなる時ってない?俺それが今なんだ(笑)誰か一緒に…
下谷ビッチョリーヌ:そろそろ最後のサビよ~ん!!
実はこれ、アニメ第1話に実際に登場したセリフをアレンジャーがサンプリングして使った「という設定」なんです。配信限定のアニメは視聴者のリズムで観られるものなのでリアタイも後追いもありませんが、第1話であれば「観ていないから意味不明」みたいな事態になりにくいという配慮もうかがえます。しつこいようですがアニメは架空です。
もちろんこのパートは「早撃ち★TVサイズ」では使われないので、フルの音源を買った人が最初に驚くことになるパターンです。
ただ一つ、「メガネ好きなら~」の部分は私の記憶だと「メ、メガネ好きならいっそ、メガネフレームハメりゃいいのにwwww」って記録したような気がするんですが、録ったらなんか違う事言ってました。リトルビッチが脳内人立入したということにしておきましょう。
2番「勇気汚す者を成敗するまで」という詞が、後に出てくる「”ブルー・ジュエル”のユーキちゃん」に呼応していたり、小ネタ的なのはいくつもあります。ここだけの話、数ある仕掛けの中でも一番は、歌詞の本文(”ストイコビッチ:”などのセリフを示す表記を含めた)中に「ビッチ」「BITCH」の文字が48回=「ビッチマン秘技 四十八手」登場することです。これはほぼほぼ偶然でした。
この先は
HARD&SOFT全曲解説2「阿婆擦戦隊ビッチマン」~エッチマン:B*TCHMANの先に何を見たか~
に続きます。
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