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防大お客様期間1日目 これは嵐の前の静けさなのか?

##前回までのあらすじ

防衛大学校への着校日。
横須賀のホテルを出発し、京急線で浦賀へ。
そこから待ち受けていたのは、異常なほどの急こう配の坂道だった。
息を切らしながら防大の門をくぐると、展示された戦車と機雷が目に入る。
そこは、ただの大学ではない。
緊張感に包まれた俺は、3大隊1中隊3小隊――通称「ユニコーン大隊」に
配属されることになった。

そして寮に向かうと、そこで出会ったのは俺の「上対番」となる
2学年のたかしさん
彼は穏やかな口調で話してくれたが、
安心感を覚えた。

しかし、その後現れた3学年の中川さんという男は別格だった。
細く吊り上がった眉毛、鋭い目つき、
冷たく威圧的な口調。
「声が小せぇな?」と一言で場を支配するその圧力に、俺は言葉を失った。

ここが防衛大学校
俺の新しい生活が、いよいよ始まる――。



 ##防大の「対番制度」

「荷物を置いたら、制服の採寸に行こう!」

たかしさんの指示に従い、俺は部屋に入った。
寮の部屋は8人部屋で、1年生2人、2年生2人、3年生2人、4年生2人の構成。
だが、この時期は1年生と2年生が分かれて生活するらしい。

「防大には“対番制度”ってのがあるんだ。」

初めて聞く言葉だった。

「簡単に言うと、1年生には2年生が一人ずつついて、生活を教育する制度。俺がりゅうせいの上対番ってわけだね。」

「そうなんですね……」

「ま、最初のうちは気楽にやればいいよ。まだみんな優しいから。」

まだ――?
その言葉に引っかかりながらも、俺は黙って頷いた。

頷きながら下を向くと
彼の両手にはテーピングが巻かれているのが見えた。

「それ、どうしたんですか?」

「カッター競技のせいだよ。」

2年生はこの時期、「カッター競技」という手漕ぎボートの訓練に
全力を注ぐらしい。
“奴隷船”と呼ばれるその競技のせいで、手の皮が裂けるほどの
練習をするのだという。

「1年生もそのうち、楽しいこといっぱいあるよ。」

そう言って、たかしさんは微笑んだ。
俺は、”楽しい”という言葉がどんな意味を示すのかわからず、
ひきつった笑いになった。


 ##初めての食堂での食事

午前中の制服の採寸を終え、昼食の時間になった。
防大の食堂は想像以上に広く、
2000人が一斉に食事を取れるほどの規模だった。

「セルフで好きなだけご飯やおかずを盛っていいよ。」

たかしさんに言われ、俺は喜んで食堂の列に並んだ。
今日のメニューはカレーライス

「りゅうせい、結構食べるんだな。」

「カレー好きなんですよ。思ったより美味しいですね!」

スパイスが効いていて、具もしっかり入っている。
たかしさんは苦笑しながら「最初のうちはな」と呟いた。

「金曜日は毎週カレーだよ。」

「じゃあ、しばらくは楽しみですね!」

たかしさんが「そのうち飽きるよ」と笑ったが、
俺は気にせず大盛りのカレーを頬張った。


##午後の健康診断

昼食後、健康診断の時間がやってきた。

「600人の新入生が一斉に受けるから、かなり時間かかるぞ。」

その言葉の通り、待ち時間が異常に長い
廊下でずっと立ちっぱなし、進んだと思ったらまた待機。
昼ご飯で満たされたはずの体も、次第に疲労が募っていく。

「早く終わんねぇかな……」

他の新入生もボソボソと呟く。

最終的に健康診断が終わる頃には、夕方近くになっていた。
足は棒のようになり、俺はすでにぐったりしていた。


##寮の生活が始まる

あっという間に夜ご飯とお風呂の時間が来た。
だが、寮に戻ってもたかしさんの姿はない。
カッター競技という地獄の訓練に行っているらしい・・・

すると部屋の
赤名札を付けた4年生のサブ長が声をかけてきた。

「新入生、一緒に風呂行こうか?持ち物確認してね」

俺たちは緊張しながら頷いた。

「は、はい!」

シャワーを浴びながら、俺は今日一日の出来事を思い返していた。
思っていたのとは真逆のかなり優しい先輩たち――。

だが、時々言動が気になる。
新入生には変に丁寧な言葉を使ったり
2学年に指導したと思ったらいきなり俺に笑顔で話しかけてくるし

19時15分から夕方の清掃開始
あと5分で清掃が始まる。
思ったより落ち着いていた防衛大学校に
清掃ではなく戦争という名が似合う時間が来るとは
まだ思ってもみなかった。

この先、俺たちに何が待っているのだろうか――。

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