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【ポーカー】綾野剛に負けた話
1章 綾野剛との出会い
誰にでも「顔は分かるが名前を知らない人」はいるだろう。
ポーカーをしていると、そんな人が日に日に増えていく。
名前の分からぬそいつを、僕は勝手に綾野剛と呼んでいた。
決してイケメンと呼ぶには遠いが、黒髪ゆるパーマに細眼鏡をかけており、地面師の綾野剛に似ていたからだ。
(私見だが、ポーカー界隈はピエール瀧のようなおじさんが多い)
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綾野剛との出会いは、某アミューズメントだった。
トーナメントで同卓していたのだが、僕のミスで綾野剛にスタックを全弾献上してしまい、一方的に嫌っていた。
剛に一つも非は無いのだが、嫌いになってしまったものは仕方ない。
積み上げたスタックが消えるその瞬間、誰かのせいにしないと心が保たない程度のメンタルであることを、剛には許してほしい。
ただ一方、心のどこかで申し訳なさも感じていた。
2章 再開
それから数カ月、JOPTで剛と再開した。
偶然同卓し、僕は剛の左隣に座ることになった。
目はあったものの、初めて会ったかのようなそっけない態度を示してしまい、一度も話すことはなかった。
そんなこんなで打っていると、気が付けばFTバブルの緊迫した状況。
A卓には剛と僕を含めた5人
B卓にはショート3人を含めた5人
僕はハンドに参加していないときは、適宜B卓に移動し偵察していた。
一人飛べばプライズが大幅に上がるため重要な局面である。
『早くショート飛べ、早く、早く』
そう祈りながらB卓を偵察していると、突然誰かが僕の肩を叩いた。
そこには剛がいて、「次BBだから戻りな」という。
剛とは一度も話したことがなかったが、僕のハンドがキルされないように丁寧に呼んでくれだのだ。
しかも、僕がBBのときに。
少しでもチップを増やしたい状況で、僕のハンドがキルされると剛にとってはチップを増やす機会になる。
わざわざ僕を呼ぶメリットなど一つもない。
しかし、剛はわざわざ呼んでくれた。。。
神か?
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というか、神である。
優しいという点においてはどちらかというと女神の方がお似合いかもしれない。
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あまりの優しさに感動して、何故呼んでくれたのかを聞いてみた。
「いやーなんかフェアじゃないと思ったので」
かっこよすぎるだろ。
そのマインドは綾野剛じゃん。
身勝手に剛を嫌っていた自分を嫌い、剛の優しさにただただ惚れるしかなかった。
これがスポーツマンシップか、これが人のあるべき姿か。
全ての優しさを学んだような気がした。
3章 終わりに
呼び止められて参加したハンドは、BUからのオープンに剛と僕がフォールドすることになった。
残念ながらBUに2BB取られた。
それでもいい。
なぜなら僕は剛からの愛を受け取ったのだから。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
皆さん、卓の人とはなるべく仲良くしましょう。