【夢日記】<後編>プロ野球選手になった僕は、1軍初登板&初先発を経験することになり・・・。
※前編
僕は、チームメイト達と、ハイタッチやハグを交わし合って、健闘をたたえ合った。12回裏まで戦い抜いての勝利の味は格別だった。「勝利投手の権利が消えた」なんてことは、とうの昔のように感じられていた。というか、勝った直後は、そんなこと、頭の片隅にも残っていなかった。ただただ、チームが勝ったことへの喜びを、みんなと分かち合っていたのだ。
殊勲打を放った西川龍馬(便宜上、敬称略の表記になっているが、当然、僕は『龍馬さ~ん!』と言っている)にも、僕は、ハイタッチとハグを求めに行ったのだけれど、彼は、”されるがまま”、といったテイで、拒否されることは無かったが、相手の方からハイタッチされたりとか、相手もハグを返してくれたり、といったことは無かった。それもまた、僕がイメージする西川龍馬と合致していたので、人としても選手としても、もっと好きになった。
ただ、なぜか、ヒーローインタビューは、Yが行なっていた。話している様子から察するに、11回裏を抑えた直後の12回表で勝ち越し点が入り、そのままチームが勝利を収めたので、勝ち星が付いたらしい。それも、記念すべき初勝利だったようだ。
「前編」で触れたように、今日の試合は、バンテリンドーム、ビジターゲームだったため、ヒーローインタビューで呼ばれた選手は一人だけだった。ゆえに、殊勲打の西川龍馬は呼ばれず、初勝利を挙げたYが呼ばれたらしい。新井貴浩監督と記念撮影を行なったりもしていた。
正直、その光景を見ると、自分も早く初勝利を挙げたいという気持ちが、フツフツと湧いて来る感覚があった。
とはいえ、今日のような投球内容で「味方に勝たせてもらう」よりも、もっと長いイニングを投げて、もっと失点を少なくして、「チームに勝利を導く快投で勝ち取る」ような初勝利が挙げられたら良いなぁ、などと思いながら、新井監督とYのことを眺めていた。
Yが新井監督と別れた後、僕は、彼のもとへ歩み寄って「先を越されちゃったな」と声を掛けていた。Yもまた「こういうのは巡り合わせだから」「お前もすぐ勝てるって」などと、僕をねぎらう言葉を掛けてくれた。
激闘から一夜明けて・・・。
僕は、登板翌日、完全オフではなく、クールダウンがてら、マツダスタジアムで、軽く体を動かしていた。
昨日、バンテリンドームで投げたことを考えると、いわゆる「投げ抹消」的な感じで、1回お試しで先発させてみて、内容次第で、次にチャンスを与えるか否か考える、そんな形での昇格だったのかもしれない。
それはともかく、僕は、地元である広島のインタビュアーから、昨日の試合についての感想であったり、今後に向けての抱負など、色々なことを聞かれていた。
僕は、そういった経験も、ガッツリと行なったことは無かったので、少し緊張しつつも、けれど、自分が言いたいことはちゃんと言おうと思って、”それっぽい回答”、ではなく、”自分らしい回答”、を返せるように心掛けて、受け答えをしていた。
<インタビュアー>
「坂倉選手(坂倉将吾)が『流星(僕の名前)のストレートは適度に散らばってたのが良かった』と仰っていたのですが、それについては、ご自身ではどうお考えでしょうか?」
<僕>
「ストレートの制球に関しては、”アバウトながらもコースは間違えず”、を意識して、投げるようにはしていますね。よく『9分割』とか言ったりしますけど、そこまで操れないんで。だからアバウトに。『2分割』か『4分割』をイメージして投げるようにしています。で、その中でも、特にコースは、間違えないように。インサイドを要求されたのにアウトサイドとか、アウトサイドを要求されたのにインサイドとか。いわゆる『逆球』の割合を減らすことは、僕の中で強く意識している部分の一つですね。逆に言えば、高さの面は、割と甘いです。『高さもコースも間違えないように』だと、どうしても置きに行っちゃうトコがあるんで。それで打たれるのが一番悔いが残るんで。だから、低め要求だけど高めに行っちゃった、でもコースは要求通りだからOK、そんな感じです。」
(息継ぎのために一呼吸置いて)
「ストライク率も意識していますね・・・。自分を助けるためでもあるし、味方の野手が守りやすくするためでもあるし、守備の時間をなるべく短くして攻撃にリズムを繋げたいのもあるし。あらゆる観点から考えても、ストライク先行で、投手有利のカウントを作れた方が良いって、僕は思っているので。そこで、先ほど話した、”アバウトながらも”、に繋がってくるわけです。『厳しいゾーンを狙い過ぎない』っていうのは、僕の中で重要なテーマですね。言い方を変えれば『打たれることを恐れない』とも言えるかもしれません。フォアボールって、何にも学べないし、100%、出塁を許すわけじゃないですか。だけど、たとえド真ん中の失投でも、100%打たれるかと言えば、実はそうじゃない。打ちミスする可能性もあるし、甘過ぎて逆に手が出なかったり、頭に無いボールで空振りしたり・・・。それに、ドカンってやられたとしても、打たれたなら、反省材料を得ることが出来た、と捉えることも出来るわけで。そういうのが無いんですよ。フォアボールは。だからこそ、ストライク率を意識して、ね。」
<インタビュアー>
「なるほど・・・。え~っと・・・、」
僕が、まくし立てるように話してしまったのが良くなかったのか、インタビュアーの方が、面食らったような表情で、二の句が継げない、といった感じになってしまったので、これは良くない空気だぞ、と僕は察知して、沈黙を破るように、自ら話を続けた。
<僕>
「すいませんね・・・。口を開くと、大体、こうなるんですよ。何となくお気付きかもしれませんが『深みにハマる』ことが、結構あるタイプでして。油断すると、すぐ、頭でっかちみたいなことになるんで。それもあって『アバウト』と言ってるフシもあるんですけどね。もっと、野性味、とでも言うのかな、そういうのが出せたら、もう一つ、上のレベルに行ける気が、なんとなくしていて。そんな一面もあるんですよ。『理性』よりも『感情』で動く自分も居るんです。さっきのフォアボールの話だってそうですよ。それっぽいこと並べ立てて話してましたけど、根っこの部分では『歩かせるぐらいなら打たれた方がマシだ』みたいな闘争本能から来ている部分も多分にあります。まぁ、ケースバイケースなんで、戦術として、歩かせることも考えて投げないといけないこともあるんですけど・・・。基本的には、好きじゃないですね。”やるかやられるか”。そっちの方がスッキリするタイプなんで。」
<インタビュアー>
「・・・なるほど!そうですか!人となりが伝わって来るような話を沢山して頂いて、どうもありがとうございました!それでは失礼致します!」
<僕>
「いえいえ、どういたしまして。こちらこそ、お時間取らせてしまって、申し訳なかったです。それでは、また。」
僕は、軽く会釈をしながら、その場を離れて、クールダウンメニューの、ダッシュやウエイトなどに取り組んでいたのだが、突然、何かに気付いき、ハッとして、心の中で、呟いた。
「(俺、さっき、『お時間取らせてしまって』って言ったけど、立場的に考えれば、俺じゃなくて、相手が言うべきセリフだったかもしれん・・・。俺ばっかり話してしまったから、つい、いつもの調子で謝ってしまったよ・・・。)」
僕は、二つの意味で「やれやれ、まいったな・・・。」と思っているところで、目が覚めた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?