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「準備力 ✕ 対応力 ✕ フォアザチーム ✕ ナイスガイ = マクブルーム」
【第21回】
はじめに
ライアン・マクブルーム。
コロナ関連で来日が遅れ、開幕には間に合わない可能性が高いという報道がなされた時は、入団前から「ハズレ外国人」のレッテルを貼るようなコメントもしばしば見受けられた。
しかし蓋を開けてみればどうだ。
カープ不動の4番に定着。
おまけにナイスガイ。
瞬く間にカープファンから愛される選手になった。
「鈴木誠也の穴を埋めた」という表現は今回は控えるが(僕は誠也の穴は一人で埋められるモノではないと考えている)、誠也の不在を感じさせないような活躍ぶりを、毎日魅せてくれている。
そんな彼を今日は取り上げてみたい。
参考記事
現代では飽和状態と思えるほど色んな野球関連のサイトがあるわけだが、僕のお気に入りは「Number Web」と「文春オンライン」の2つ。
今回は、本文中の言葉をピックアップして、僕が思ったことや感じたことを綴ってみる。
①:競争心と闘争心
「いつも“競争心と闘争心”を持ってゲームを迎えられるようにしっかり準備している。結果は自分でコントロールすることはできないが“競争心と闘争心”、そういう強い気持ちをもって毎日ゲームに挑んでいる」
僕はマクブルームを見ていて「冷静沈着なプレースタイルだな」と良く感じる。
一見、競争心と闘争心という言葉のイメージからはかけ離れているようにも思えるので、余計に印象に残るのだろう。
つまり「心は熱く、身体は冷静に」という状態。心身のコントロールが保たれているわけだ。言うは易く行うは難し。自己コントロール能力が高くないとなかなか出来ないことだ。
その話で行くと今シーズンの遠藤淳志を見ていても似たようなことを感じる。
彼もまた、気持ちの強さとは対照的に落ち着いたマウンドさばきが印象的だ。まだ若い(1999年4月生まれ)のに凄い。僕も見習わないと・・・。
②:左投げ右打ち
熱いハートの持ち主・マクブルーム選手は球界では珍しい“左投げ右打ち”の選手だ。今シーズンNPBでプレーする左投げ右打ちの野手はマクブルーム選手のみ。
歴代の左投げ右打ちのプロ野球選手を調べている記事があったので貼っておく。
・合計 :21名
・日本人選手:8名
・外国人選手:13名
僕の感想としては「思った以上に居たな」といったところ。
主にロッテに所属した竹原直隆は割と有名だったんじゃないかと思う。マクブルームの話と関連して、竹原の名前が出されることも多かったな。
僕の印象は、当たれば飛ぶパワーヒッター。ただ確実性の低さが災いして、なかなか一軍で大活躍とは行かなかった。そんなイメージ。
潜在能力の高さ故に「惜しい」と周囲に思わせるイメージもある。記録よりも記憶に残るタイプの選手だったと言えるのかもしれない。
あと「え、左投げ右打ちだったの?」と思った選手は、阪神に所属したジェフ・ウィリアムス。
自慢の左腕でボールを投げ込む姿は幾度となく見てきたのだが、バッターボックスに立っている姿はちょっと思い出せない。
ウィキペディアを覗いてみたが、投手成績のみ書かれていたので、打席に立ったことはないのかもしれない。
③:安定した守備力
普段から右手を使っているからかファーストミットを持つ右手のハンドリングも実になめらかだ。安定した守備力は“両利き”によってもたらされているのかもしれない。
実は僕も左利き。
両利きではないんだけどね。
マクブルームは「字を書く時やお箸を持つ時は右手を使う。投げること以外、すべて右利きだよ」とのことなんだけど、最初の利き手は、どっちだったのだろう?
なんとなくだけど、右利きに矯正するという教育が行われたが、ボールを投げることだけは右に変えられなかった・・・。そんなような気がする。
あくまでも「気がする」なので話半分で。
僕自身左利きだからなのか、自然と左利きの知り合いや友人は周りに居たりする。
そういう人は「なんちゃって両利き」だったりする。おそらく、多かれ少なかれ、右利きに矯正された経験が活きてるのではないかと僕は思っている。
そんなことを書いている僕は「純粋な左利き」である。右は全くといっていいほど使えない。
なぜなら両親に矯正されなかったからだ。「左利きってカッコいいじゃん」と思ったらしい。感性が若い両親なのだ。それは名付けを見ても分かる。ココでは本名は晒さないけど。
学生時代はバスケットボール部に所属していたのだが、右ドリブルが笑えないレベルで使えなかったので、黙々と右だけ練習させられていたのを思い出す。おかげで、ドリブルだけは左よりも上手くなった。
人間、練習を積めば、なんだってある程度は上達する。「やればできる」。今思えば、貴重な体験が出来て良かった。
個人的な話が長くなって申し訳ない。
マクブルームの守備はホントに上手い。おそらくカープファン以外の人はそれほど認知していないと思うので、是非注目してもらいたいものだ。
特に、今シーズンからサードを守っている坂倉将吾は、マクブルームには沢山助けられていることだろう。
ワンバウンドやショートバウンド、難しい捕球も後ろに逸らすことなくキャッチしてくれる安心感。
それが坂倉のサード守備の向上、技術力や安定感の向上に繋がっているのは間違いない。
④:準備力
コンスタントに成績を残す秘訣は〈準備〉にあるのではないかと考える。マクブルーム選手に伺うと試合前に行うルーティンを教えてくれた。
「単純なルーティンだが、練習前に必ずウエイトルームに寄って、まずは下半身をどっしりさせる運動をする。それからマシン打撃。これは速さ対策で、とにかく速いボールを片手で打ったり、バランスを考えながら打ったりして、練習に臨む前にすべきことは必ずやっている」
マクブルームの魅力は何と言っても「安定感」にあると感じているカープファンは多いだろう。その理由がココからもうかがえる。
本人いわく「単純なルーティン」とのことだが、これが良い。単純だからこそ継続して取り組める。そのことが本人も分かっているんだと思う。
「継続は力なり」という言葉を知っている人はゴマンと居るが、それを常日頃から実践するのはなかなか難しいものだ。
また、続けようと思ったことを続けられない原因は「意志の弱さ」にあると思いがちだが、実はそうではないと僕は考えている。
意志が強い / 弱いことよりも、作業量が多かったり、作業内容が複雑であるなど「はじめから長期間続けるのが困難」だからこそ続けられない。そんな場合の方が多いように思われる。
そういう意味で、マクブルームのルーチンワークは理に適っている。それが安定した成績に繋がっているのだろう。
あともう一つ。
これは余談になるが、以前、ヒーローインタビューで語っていた「ウエイトルームで鍛えます」というジョークの伏線回収をしてくれたのも、何気に嬉しかった。
毎日ルーティンとして取り組んでいたからこそ、あの場で出た言葉だったんだね。ファンを笑わせて楽しませるためだけではなく、自らの戒めでもあったわけだ。ますます好きになったよ。
※当時のコメントが載っていたのでリンクを貼っておきます。
明日すぐにウエートルームに行って、パワーがないことが分かったのでしっかりウエートを上げたいと思います。
⑤:対応力
マクブルーム選手を語る上で欠かせないワードの1つが〈対応力〉だ。
本人に打席での心構えを聞いた。「非常にシンプルだが、とにかくバッターボックスではバタバタしないこと」。確かにマクブルーム選手が打席の中で慌てた様子は記憶にない。マクブルーム選手は続ける。「投手との1対1の対決の中で、自分がその打席で何ができるか。どうすればチームの勝ちに貢献できる打席内容になるかを考えながら毎打席調整している」。
そう。
マクブルームといえば対応力。
入団会見で「自分の強みはアジャストメント能力だ」と語っていたのが懐かしい。言葉通りの活躍ぶりをここまで魅せている。それが何よりも頼もしい。
>バッターボックスでバタバタしない。
確かにそうだ。悠然と構え、悠然とボールを見る。常にそういう姿勢を崩さない。ポーカーフェイスとは思わないが「乱れる」ことがない。まさに4番らしく堂々とプレーしている。
特に僕が印象に残っているのは「頷く仕草」。
相手ピッチャーがボールを投げた後に「うんうん」というリアクションを取ることが多い。
映像屋でデータだけでなく、実際に打席に立ってボールを見ることで、ピッチャーの球筋や今日の調子などをインプットして、バッティングに活かしているのだろう。
>自分がその打席で何ができるか。どうすればチームの勝ちに貢献できる打席内容になるか
ここも興味深い。
マクブルームは良い意味で「外国人らしくないバッター」とも言える。なぜなら、バットを振り回すことは滅多にないし、ボールをじっくり見てフォアボールを選ぶ能力にも長けているからだ。
それだけではない。「フォアザチームの精神」も彼からは強く感じる。本人がコメントに残している通り、自分の成績よりも、チームの勝ちを優先したプレーが出来るのだ。
少なくとも僕は、勝負どころの場面で、ボールをじっくり見極めて、フォアボールで塁に出る外国人選手は、ちょっと記憶にない。
選球眼といえば阪神のジェフリー・マルテを連想する野球ファンも多いだろうが、マクブルームからは、選球眼よりも「後ろに繋ぐ姿勢」を強く感じるのだ。
おそらく、5番に得点圏打率の高い坂倉が控えているからこそ、よりチームバッティングに徹しているのはあると思う。
「つなぎのカープ」というチームスタイルを理解してプレーしてくれているのもあるだろう。そういうことが出来る選手なのだ、マクブルームという男は。好き。
こうやって書いていると改めて感じるが、チームプレーに徹する姿勢を、異国の地で、それもチームに所属して間もない頃から実践している。これってホントに凄いことだと思う。
これもマクブルームの人間性が成せる業と言っていいだろう。「野球はチームスポーツである」という考えが体に染み付いている証拠でもあるかな。
⑥:明るくて親しみやすい性格
私の質問にも時折笑顔を見せながら答えてくれたマクブルーム選手。普段はどのような人柄なのか。佐々木通訳は、「明るくて親しみやすい性格」と分析する。
うん。プレーしている姿を見ているだけでも、それは伝わってくる。
「冷静沈着・バタバタしない」のもマクブルームの特徴であり強みでもあるのだが、それと同時に「喜怒哀楽・表情豊か」なのもまた、彼らしさなのだ。
ある日、こんなプレーがあった。
一塁線に転がったボールを、ファウルになると判断してウェイティング(ボールを触らずに見送る)したが、記録はフェア。結果として判断ミスになってしまった。
あの時は体全身で驚きを表す仕草をしていたのを思い出す。
カープファンとしては痛いプレー、ともすれば、怒りの矛先がマクブルームの守備に向かう人も居たかもしれない。
だけど僕としては、彼のオーバーとも取れるリアクションに和まされてしまったので、プラスマイナスゼロ。むしろプラスだ。
プラスは言い過ぎかな(笑)
けれども「多少のミスはご愛嬌」と流せてしまう人柄の良さを感じさせるのもマクブルームの魅力である。一言でいえばナイスガイ。
ちなみにカープにやってくる外国人選手はナイスガイが多い。これは助っ人選手を選考する上で「性格面」も考慮しているからだろう。そういうところも好きだぜ、広島東洋カープ。
あと、マクブルームの顔に着目しても、パッチリとした目が何とも愛らしい。
最初見た時は「常に目を見開いているような選手だな」と思ったほどだ。言い表すなら、キュートさとコミカルさがミックスされたような感じ。要するに「愛され助っ人」の要素を兼ね備えているわけ。
おわりに
こうやって書いてみると、自分が思っていた以上に「マクブルーム愛」が強かったのを再認識することができた。
おかげで記事作成時間が目安時間よりも大幅にオーバーしてしまった。僕の予定を崩された。なんてことをしてくれるんだマクブルーム!
これを人は「嬉しい悲鳴」と呼ぶ。
成績だけを見れば「パッとしない」と感じる人も居るかもしれない。だけど彼のプレーを毎日見ていれば、そんな気持ちは抱かないだろう。そういう魅力がある。
故に、カープファン以外には、あんまりマクブルームの魅力が伝わらない。そんな気がする。いや、単に僕が好き過ぎるだけかもしれない。書きながら分からなくなってきた。
他球団のファンから過小評価されているのか、それとも、カープファンが過大評価しているのか、どっちだろう・・・。
という疑問が頭に思い浮かんだけど、すぐに吹き飛んだ。
「まあ〜、ファンやったら過大評価ぐらいがちょうどええやろ(^_^)!」
マクブルームよ、エルドレッドを超える以上に、カープファンから愛される助っ人外国人になってくれ。
カープに来てくれて、ありがとう。