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2024年4月17日(水)|“宿敵”と“天敵”と“かねて”

球団初の日本一を達成した1985年にバース、掛布、岡田のクリーンアップが“バックスクリーン3連発”を放ったのがこの日と同じ水曜日の4月17日。メモリアルな一日に、投打がかみあって天敵に完勝した。

本文引用

(天敵・・・?)

引っ掛かったので、辞書を引いてみることに。

ある生物に対して寄生者や捕食者となる他の生物。青虫などに対する寄生蜂 (きせいばち) や、昆虫に対する鳥、カエルに対する蛇など。

天敵|デジタル大辞泉(小学館)

寄生者や捕食者・・・。

いや、まあ確かに、阪神-巨人戦を「天王山」と形容することに違和感を覚える野球ファンも居るのは分かる。事実、生まれも育ちも関西、生粋の阪神ファンの父親ですらも、自虐をこめながら「巨人からライバル扱いされるほど阪神は強くない」と言っていたりもする。ちなみに、「弱くて『なにやってんねん!』とヤジを飛ばすのが生き甲斐の一つなんや」とも付け加えているが。そのくせ、昨年日本一になった時は、それはそれは、恵比寿顔だったものだが。良い気なものである。そんな父親が僕は好きだ。僕も僕で良い気なものだ。「蛙の子は蛙」といったところか。

それはともかく、この文脈で「天敵」の語彙をあてるのは、ちょっと違うような気がする。これではまるで、阪神が巨人を大の苦手にしているような意味合いになってしまう。まあ確かに、通算成績を出すと、阪神よりも巨人の方が大きく勝ち越している気がしないでもないが、メディアは、そういう取り上げ方をしていない。だったら「天王山」なんて言い方はしないはずだ。

(宿敵の間違いじゃね・・・?)

再度、辞書を引いてみた。

かねてからの敵。年来の敵。

宿敵|デジタル大辞泉(小学館)

おー。シンプルイズベスト。シンプル過ぎて逆にピンと来ないパターン。うーん、ライバルとニアリーイコールと思って良いのかしら。まぁでも、天敵よりかは、宿敵の方が、上記に挙げた記事の文脈としては、適している気がする。

(それはともかく・・・)
(かねてから・・・?)

あーっと、また引っかかってしまった。

僕は「かねてから」「かねてより」という表現は重複にあたるため「かねて」と書くべきだ、という指導を受けた覚えがある。それ以降、(そもそも使う機会自体少ないが)「かねて」と書くようにしている。心の中で「から|より」と唱えながら。人間、一度、間違えて覚えてしまうと、どうしても、その癖が抜け切らないものだ。

(それなのにいったい・・・?)

これも調べざるを得ないか・・・。

なぜ「かねてから」が重複表現になるのだろうか。「かねて」は、動詞「かぬ(兼)」の連用形に接続助詞「て」がついたものであるが、「兼ぬ」には一つの物が二つ以上の働きを合わせもつという意味のほかに、将来のことまで考える、予想するという意味もあった。この意味の「兼ぬ」に「て」がついて一語化し、副詞として使われるようになり、「以前から」「あらかじめ」の意味になっていくのである。だからそれに「から」をつけて「かねてから」とすると、以前からという意味が重なってしまうというわけである。

本文引用①

うん。理屈は大体分かった。僕は日本語の専門家ではないから、とりあえず、どっちの使い方が適しているのか、さえ分かれば良い。僕のように、すぐに引っかかってしまう面倒臭いマンのセンサーに引っかからなければ、それで良いのだから。

なら、辞書に書かれている言葉が誤っているということで、これまで通り「かねて」を使っていけば良い・・・、と思ったら、おやおや?

確かにその通りなのだが、「かねてから」という語はけっこう古くから使われているのである。たとえば、幸田露伴の小説『五重塔』(1891~92)には、

「いづれ親方親方と多くのものに立てらるる棟梁株とは、予(かね)てから知り居る馴染のお伝という女が」

という例がある。

さらに、「かねてから」よりも古い「かねてより」という言い方も存在する。こちらなどは、『日本国語大辞典』によれば、『古今和歌集』や『源氏物語』といった平安時代の用例がある。

このように「かねてから」「かねてより」の用例が古くからある存在することから、これらを歴史的に見れば重ねことばとは言えないと考えて、国語辞典では「かねて」の例文の中に「かねてから」「かねてより」の形も同時に示しているものが多い。

新聞の立場と辞書の立場とが異なっている語の1つである。

本文引用②

おやおや・・・。

なるほど。「かねて」を採用しているのが新聞で、「かねてから|かねてより」を採用しているのが辞書と来たか。そういうパターンね・・・。

「かねて」を使用する理由としては、日本語の品詞の観点から考えると重複表現になる。う〜ん。これぞシンプルイズベスト。わかりやすい。腑に落ちる。

「かねてから|かねてより」を使用する理由としては、過去を辿れば平安時代の頃から、そういった表現が用いられているため、ロジック的には誤りなのかもしれないが、長年使われてきたことを考慮すれば、慣用表現的な観点で使用しても問題ない、といった感じか。ふむ、なるほど・・・。確かに一理ある。

じゃあ、どうすればいいんだってばよ・・・。

NARUTOエンド。

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