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曇りガラスと赤裸の心

 勿体ぶった記事タイトルを用意したがあまり深い意味はない。駄文をしたためるにあたってせめて書き出しだけでも仰々しくあろうと、さわり程度も履修したことのないボードレールの作品群を調べたものの驚くほど相応しい文節が見当たらなかった名残りである。

 本文は「あおきみどろ(@NEOmidori02)」氏の著作、『ノアの消せない一頁』読後の所感を取りまとめたものである。

 サンアカ3から1週間経過したこのタイミングで今更サンアカ2の頒布物の感想を出すのも随分間の抜けた話であるが、本書に関しては長らく「ちゃんとしたフォーマットで長文感想送りつけるから!」とレポを先延ばしにしていたところ、当のサンアカ3でみどろ本人から『ノア本の感想と引き換えの新刊割引』を受けてしまい、ようやっと重い腰をあげて筆を取った次第である。note開設までに丸半年もかかって大変申し訳なく思っている。いやホント。
 感想文と呼ぶにはあまりに拙く、当事者以外にはほとほと面白みのない散文であるが何卒ご容赦いただきたい。


1.あらすじ

突如連邦生徒会に転部したノア。
ユウカを避け、大人のカードを奪い、
「私は、どの先生の死に際も忘れられないんです」
先生の死を回避すべく何度も同じ一週間を繰り返していた。
運命と悪夢、二人は乗り越えられるのか。
あったかもしれない結末を描くブルーアーカイブ二次創作小説。

裏表紙より引用

 あらすじから分かる通り、本書は「先生」と「生塩ノア」の2人を中心に、時間軸のループをテーマとして進行していく。
 ある日突然セミナーからの脱退と連邦生徒会入りを告げたノアは、親友であるはずのユウカに対してもすげなく接し、まるで人が変わったかのような態度を示す。その裏では、自身の誕生日前日…4月12日までに死ぬ運命が決定付けられた先生を救うため、ゲマトリアから譲り受けた"手記"を手に、幾度とない時間軸のループを繰り返していた。ループするたびその手記に、そして自身の記憶に、忘れることのできない先生の死に様を刻み込みながら。
 度重なるループにノアが精神を摩耗させていく中、とある時間軸でループに気づく先生。先生の死を回避しループを抜け出すために、2人が選択する行動とは……

2.構成について

 このような周回遅れの感想文にわざわざお目通しいただいている方であれば本編はとうに読了しているものとして、ここから先は遠慮なく終盤の展開についても触れさせていただこう。
 読後何よりも印象に残るのは、あおきみどろ氏のストーリー構成力の高さであろう。ノアの持つ「記録者」、「観測者」といった属性にフィーチャーしつつ、先生の死に様をセンセーショナルに描いたループの開示をミスリードとし、『夢』の発覚を皮切りにノアの秘した心情に迫っていく様からは氏の筆ノリを大いに感じた。時折思い起こされるノアのメモリアルロビーのエピソードが、「いずれ消えゆくもの」として『夢』というキーフレーズにかかってくるのも、キャラクター解像度の高さと共に作品全体の雰囲気に寄与して味わい深い。随所に散りばめられた伏線も丁寧で、わざとらしさを感じさせずにクライマックスでしっかりと結実するのが何ともないえないカタルシスを醸し出す。
 特に、冒頭からノアが繰り返し口にする「セミナーの書記である以前に、『生塩ノア』という個である」という皮肉混じりの方便を受け、夢のループの最終日に心のうちを問いただす場面には思わず膝を打たされた。展開そのものに大きな影響を及ぼすものではないが、こういった台詞回しの妙にこそ氏の文才が見て取れるだろう。
 本書をお手持ちの読者は是非に、ノアとのデートを経た後は、プロローグへと立ち返っていただきたい。

3.あおきみどろ氏の"生塩ノア"像

 SNS各所で氏は「生塩ノアに負けている」と揶揄され、『ノアちゅきエレファント』などという愉快な不名誉な渾名を賜るまでに至っている。
 これらの文言に対し、「負けてないが?」「オレを象と呼ぶな!」などと返すのが定型と化しているが、本書における「生塩ノア」というキャラクターの描写を顧みるとなるほど確かに、我々が揶揄するよりもずっと誠実な立ち位置で「生塩ノア」というキャラクターに歩み寄ろうとしているのが感じられた。
 前項でもある程度述べたが、観測者としてのノアのガワを取り払い、心の内を暴き出すまでの流れが非常に丁寧に展開されている。安易にイタズラ好きなツワモノ属性であったり、あるいはユウカの当て馬としての負けヒロイン属性であったり、そういったインスタントなレッテル貼りに帰結せず、「生塩ノア」を物語の中心に据えた手腕に惜しみない拍手を送りたい。
 でも負けてはいないだけで別に勝ってはいないよね?

 余談になるが作中ノアの髪色を「ガラスのような」と形容しているのが、メモロビを踏襲しつつ文学的なテイストを感じてとても好ましかった。


4.総括

長々と書いて疲れたのと褒めたいとこはあらかた褒めたのであとはもう流します、本文おもろい!連邦帰宅部員さんのイラストも最高!しげるの謎マンガも付いてくる!電子あるのであとはみんな買って読んだらヨシ!!

ノア本感想出すのに半年かかったのでアコ本と逆ミカの感想は多分年明けになります。マジ?

PS.あとこれはかなり驕った蛇足だけどみどろの文せっかく面白いのに誤字脱字気になるのでゲラ送って!!!!!推敲手伝うから!!!

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