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オープンソース戦略の無限の可能性(後編)
前編では、フリーランス時代の話をしつつ、自身で作ったオープンソースの話をしましたが、後編については、法人設立の経緯や今後の話について書きたいと思います。
前編はこちら。
キャッチアップの設立
そして話は変わり、自身の会社であるキャッチアップの話を。
冒頭に触れましたが、僕はフリーランスとして活動をしていました。その中で、前述の福岡工業大学のWebサイトの案件がありましたが、その規模は僕一人で対応できるものではありませんでした。
そこで、5名程度に外注し助けてもらったのですが、それでも困難な作業でした。その経験を通じて、苦労を共有した2名と共に、baserCMSをさらに普及させていきたいと思いから、2012年1月に株式会社キャッチアップを設立することになります。
そのうちの一人はだいぶ前に既に退社していますが、もう一人は現在も頑張ってくれています。渕上さん、いつもありがとう。(もちろん、他の社員のみんなも!)
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会社を設立する際に気をつけたのは、baserCMSを会社の所有にしなかったこと。コミュニティの方々が協力して作り上げたパッケージが会社の所有物だとすると、がっかりする方もいるかなと思ったからです。そのため、コミュニティの所有という形にしました。
株式会社キャッチアップは、世の中の変化に柔軟に適応しながら、お陰さまで11年目に突入しています。
オープンソースの魅力とは
ここまで読んで頂いたらお分かりかと思いますが、タイトルにあるような明示的な戦略に基づいて行動してきたわけではありません。むしろオープンソースを選択したのは、振り返ってみると、無数の経験と判断の結果として自然な流れだったのだと思います。
経験したことがないことばかりだったので戦略を練るような余裕はなく、目の前の課題に対して、その都度、最善と思える選択をしてきました。
そうしてたどり着いた結論として、オープンソースの魅力は何かと問われたら、僕はすぐに「人との繋がり」と答えます。
特に、baserCMSというオープンソースは、OSCなどの様々なイベントを通じて、僕に非常に多くの出会いの機会を提供してくれました。これらの出会いは、僕だけでは絶対に得ることのできない人々との繋がりを可能し、新たな視野を開くきっかけとなりました。
過去に何度か開催したデザインテーマのコンテストでは、Microsoftのような大手企業がスポンサーになってくれるという、僕にとっては驚くような出来事もありました。
また、その活動の中で、baserCMSの基盤となる私たちの会社であるキャッチアップの経営が傾いたこともありました。傾くことは何度も経験しましたが、、、営業力不足からいよいよ解散の危機に直面したことがあります。その際、福岡を本拠地とするデザイン会社「ディーゼロ」に相談しました。
迅速に経営陣と会談する機会を得て、代表の矢野さんともつながることができ、オープンソースの活動についてプレゼンしました。
「この会社は潰してはいけない」
矢野さんからはこのように言って頂き、それ以降、ディーゼロ社から多くの仕事のオファーが舞い込んできました。
「これで会社を潰さずに、baserCMSの活動を継続できる・・・!」
本当にありがたかった。泣けた・・・。
ディーゼロ社のおかげでピンチを乗り越えることができました。現在でも取引は続いており、今ではbaserCMSのスポンサーにもなっていただいています。
このように、様々な人々の力が結集して初めて今のbaserCMSが存在しています。
オープンソースというエコシステムは、人の思いや目的によって、人と人との繋がりを生み出し、それが自然に、あるいは時には意図的に「コミュニティ」が形成されます。
このコミュニティというものは人の成長を促します。知らない人と出会い、未知のことを学び、協力してくれる人々が現れ、背中を押してくれる人が現れます。そうした様々な経験を通じて自分自身が強くなることができます。
もし、baserCMSを商用プロダクトにしていたら、こんな経験はできませんでした。
2014年にbaserCMSプロジェクトの支援団体として、NPO法人ベーサー・ファウンデーションを設立しました。ここでは、コミュニティ活動を促進するため、ミートアップイベントと合宿イベントを開催しています。
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近頃はコロナ禍の影響で頻繁に開催することが難しい状況でしたが、今後は更に活発に開催できたらいいな。
baserCMSの未来
先日、baserCMSの最新版、「baserCMS5」をリリースしました。
そのリリースでの最大の特徴は、遅ればせながらではありますが「ヘッドレス化」です。SaaSのヘッドレスCMSはたくさんありますが、オープンソースのヘッドレスCMSはかなり希少です。
この機能を活用すると、クリエイターは様々なデータ構造をノーコードで管理画面から直感的に定義することができます。さらに、それらのデータはAPI経由で容易に取得できます。この機能により、ユーザーがデータの形状と流れを自由に制御でき、アプリケーション開発が簡単になります。
詳しくは、baserCMS5特設サイトをご覧ください。
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今後は、CMSとしてだけでなく、様々なアプリケーションの開発プラットフォームとしても利用できるようにしていきたいと考えています。
僕たちの目指す未来は、baserCMSが単なるCMSから、多様なアプリケーションの開発プラットフォームへと進化することです。そのために、僕たちは革新的な技術を絶えず取り入れ、ユーザーと共に成長し続ける必要があります。
それが可能なのも、僕たちがオープンソースの哲学を採用しているからです。「オープンソース」とはただの開発手法ではなく、「みんなの集合知」であり、一人では達成できない目標を追求する究極のエコシステムです。これからもbaserCMSはオープンソースの力を活かし、全てのユーザーがより良い体験を享受できるようにしていきたい。
まだまだ始まったばかり。これからもbaserCMSとともに、さらなる進化を目指して、ユーザーと共に可能性を追求していけたらいいですね。
最後に
#note初投稿 でだらだらと長文を書いてしまいました。
文章を書くのがあまり得意でないので、あまり、自分の意志や考えを表に出すことが少ないですが、書いてみると、たまにはいいかもなと思いました。
改めて色んな方々に支えられているなあと。実感。
キャッチアップの役員や社員やお客様、コミュニティやOSCの方々。ここに書ききれないぐらい非常に多くの方々に助けて頂きました。
みなさまいつもありがとうございます、今後もキャッチアップとbaserCMSをよろしくお願いします!