また、雨が降ってきた

近所の八百屋の店主がやけに静かだ。
あらゆる家のベランダには洗濯物が見当たらない。
色とりどりの格好をした子供たちがいる。
また、あのカップルが喧嘩している。

あぁ、そうか。
今日は雨なんだな。

傘もささずに歩き続ける者もいれば
相手に傘をさしてやっている者もいる。

赤い傘、黄色い傘、緑のカッパ、青いタオル、
黒い鞄、透明のビニール傘。

まるでその色たちは人の心情を表していた。

傘をささぬ者よ、何があった。
雨よりも泣きじゃくる者よ、何があった。
下ばかり向いて歩く者よ、何があった。

わたしでよければ聞いてやる。

雨が降ると、人は明日こそ晴れろと期待を込めてわたしを作る。

ある人はそれを一種の怨念であるかのごとく、
ある人は何も考えずただぼんやりと、
またある人は誰かへの想いをのせて。

空が泣いている。

あぁ、また今日もわたしが生み出されるのか。

あの子が泣いている。

あぁ、またわたしが相談に乗ってやろう。

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