新生活の気配

4月の空気が好き。
新生活を迎える人たちが放つ独特のオーラで、日本全体が浮き足だっているような暖かい空気。


何年経っても思い出す、新卒の新人研修の日々。
もう20年近く前になってしまった。

「どう見ても新人です、本当にありがとうございました」と背中に貼り出されたような黒いスーツを着て電車に乗るのは恥ずかしかった。
研修期間中に同じマンスリーマンションに住んでいた同期の声が車内に響いて、なおさら恥ずかしかった。
でもどこか誇らしい、嬉し恥ずかし会社員。
まだそんな時代だったなぁ。

私たちは微妙な世代だった。
まだオフィスの陰に男尊女卑が潜む中で、男女平等に活躍せよと口先だけで鼓舞された。

実態は想像できていたので、私たち自身はどこか冷めた目でそれを聞きながらニコニコしていた。
ご指導ご鞭撻するおじさんが、口先だけなのも分かっていた。
お互いに分かっていて言わなかった。

でも、今は本当に口先だけじゃない時代になった。20年弱で。
早かったのかな、遅かったのかな。
心にはなくても言葉にしていくことで、だんだん社会は変わっていくものなんだろう。それを肌で感じた。
そうせざるを得なかったのもあるんだろうが。

多分この季節になると、一生あの頃を思い出すだろうな。
あのフワフワした空気と、フワフワしてた私たちを。

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