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専業主婦を狙う「隠れ増税」(エッセイ集 Article 15)


財務省の「見せかけの黒字化」――PB試算の問題点を見抜く

2025年、日本の財政は本当に黒字化するのか――。財務省は「基礎的財政収支(PB)が黒字化する」と胸を張りますが、その試算の裏にある矛盾点には、目を向けているでしょうか?

まず最初に知ってほしいのは、財務省が主張するPBの数字が、政府全体の財政状況を反映していないという点です。これは非常に重要な問題です。財務省の試算は、中央銀行を含む統合政府全体のバランスシートではなく、一部だけを切り取った「見せかけの数字」を元に作成されています。本来、統合政府の視点で財政状況を分析すれば、PBは既に黒字化しているのです。国際通貨基金(IMF)のデータによれば、日本の統合政府の財政健全度は、主要先進国(G7)の中でカナダに次いで2位。この現実を、なぜ財務省は無視し続けるのでしょうか?

財務省がPBの黒字化を掲げる理由は明白です。財政の健全性をアピールすることで、増税や保険料の引き上げを正当化する土台を作りたいのです。しかし、これが本当に国民の利益に繋がるのでしょうか?

例えば、2025年度の名目経済成長率について、昨年7月に発表された試算では「3.0%(2024年)」から「2.8%(2025年)」とされていましたが、わずか数ヶ月後の12月にはそれぞれ「2.9%」と「2.7%」に引き下げられました。このような見通しの変更は、経済環境が楽観視できないことを示しています。それでも、財務省は「黒字化は問題ない」と主張しますが、この楽観的な前提が実現しなければどうなるのでしょうか?その答えは、「さらなる負担増」が国民に押し付けられる未来です。

さらに問題なのは、財務省が「103万円の壁」問題を口実に、専業主婦向けの手当や3号被保険者制度の廃止を検討している点です。この動きは一見、公平性を高めるように思えます。しかし、その背後には「新たな保険料収入を確保したい」という思惑が透けて見えます。専業主婦層をターゲットにした政策変更は、家庭全体に経済的な圧迫をもたらし、社会の安定に逆行する可能性をはらんでいます。

財務省は「防衛力強化」や「子ども・子育て政策」の恒常的な支出増に対応するため、PB黒字化をあくまで旗印として掲げています。しかし、これらの政策を真に持続可能なものにするためには、統合政府としての財政健全化を前提にした議論が必要です。現在の試算モデルは、減税が経済にもたらす効果を過小評価しています。政府が使う「減税乗数」が異常に低いままでは、減税による経済成長の可能性を正当に評価できません。

石破氏が支持する政策の背後にある、財務省の矛盾と問題点。これを直視することで、私たちは初めて、本当に必要な議論を始められるのではないでしょうか。次のページでは、財務省が進める「隠れ増税」の実態について掘り下げていきます。


By 高倉龍之介

財務省の「隠れ増税」――専業主婦と家庭への新たな負担

財務省の進める政策を詳しく見ていくと、「隠れ増税」とも言える動きが浮かび上がります。それは、専業主婦や家庭をターゲットにした手当や保険制度の改変です。ここに隠された問題について考えてみましょう。

近年、「103万円の壁」という言葉を耳にする機会が増えました。この問題は、一部の専業主婦が収入を抑えざるを得ない状況を生むとして批判されてきました。財務省はこの壁を撤廃するために動く一方で、専業主婦らが対象となる「3号被保険者制度」を廃止し、新たな保険料収入を確保しようとしています。これが、いわゆる「隠れ増税」の本質です。

3号被保険者制度とは、専業主婦や一部のパート労働者が年金保険料を支払わずに年金を受け取れる仕組みです。しかし、財務省はこれを「不公平」と指摘し、企業に対応を求めることで制度廃止の布石を打っています。この変更が実現すれば、専業主婦やその家庭に新たな経済的負担がのしかかることは間違いありません。

さらに問題なのは、財務省がこの政策を「公平性の向上」として打ち出している点です。一見すると、全ての国民が等しく負担を担うことは合理的に見えます。しかし、実際には「保険料」という形で家計に隠れた増税を課し、さらに労働力供給を増やすことで経済成長を図ろうとする、財務省の策略が垣間見えます。家計が苦しむ中で、果たしてこれが本当に「公平」と言えるのでしょうか?

例えば、専業主婦が保険料を支払うことになれば、家庭の可処分所得は減少します。これが家計に与える影響は甚大です。特に、中低所得層の家庭では、教育費や生活費の削減を余儀なくされる可能性があります。こうした状況が進めば、専業主婦の労働市場への流入が期待される一方で、家庭や地域社会で担っていた非労働市場の重要な役割が失われるリスクも生まれるのです。

また、財務省は「防衛費」や「子ども・子育て政策」の財源確保を理由に、こうした負担増を正当化しています。しかし、この財源の使い道が本当に国民全体の利益に繋がっているかは疑問です。「子ども・子育て政策」の名のもとで徴収される拠出金が、NPO団体に丸投げされている現状は、その象徴と言えます。国民が負担を引き受ける一方で、支出の効果が適切に検証されていないのでは、納得できる政策運営とは言えません。

そして、見過ごしてはならないのが、これらの「隠れ増税」が進む中でも、財務省がプライマリーバランス(PB)黒字化をひたすら掲げ続けている点です。彼らが目指す「PB黒字化」の旗印は、国民生活への負担を伴うだけでなく、経済成長を阻害するリスクを孕んでいます。家計を圧迫しつつ、無理に「黒字化」を達成しようとする姿勢は、本当に日本の未来にとって必要なものなのでしょうか?

財務省が進める政策の背後にある矛盾と、それが国民生活に与える影響をしっかりと見つめ直す必要があります。次のポイントでは、財務省が見逃している「減税の可能性」と、石破氏をはじめとする一部の政治家がその方向性を軽視している問題について掘り下げます。


by 高倉龍之介

見過ごされる「減税の可能性」――経済活性化の鍵を握る政策の軽視

財務省が掲げる「財政健全化」の旗印の下、増税や新たな負担増が次々と提案されています。しかし、この一方で見過ごされているのが「減税」という政策の可能性です。減税は、本来であれば経済を活性化させ、結果的に財政基盤を強化する効果を持つはずですが、財務省や石破氏はこれを軽視しているように見えます。この問題について掘り下げてみましょう。

財務省が使う経済モデルでは、「減税乗数」と呼ばれる、減税が国内総支出に与える影響を示す数値が異常に低く設定されています。このため、減税が経済成長を促す効果を過小評価する結果となり、財政運営の選択肢として減税が議論の俎上にすら上がらないのです。しかし、最近の研究では、減税乗数が政府支出乗数と同じか、それを上回るケースが多いことが示されています。これを踏まえれば、減税が経済を押し上げる有効な政策である可能性を無視することは、極めて非合理的です。

例えば、消費税の一時的な減税は、家計の可処分所得を増加させ、消費を促進する直接的な効果を持ちます。さらに、企業の投資意欲を高める法人税減税は、長期的な経済成長にも繋がります。こうした減税効果を正当に評価しないまま、増税一辺倒の議論が続くことは、日本経済にとって大きな損失です。

石破氏は、防衛費や社会保障費の財源確保を名目に増税を支持する姿勢を示してきました。しかし、彼の主張には「減税による経済成長」という視点が欠けています。石破氏が支持する政策は一見「現実的」に映るかもしれませんが、その根底には、経済全体を活性化する視野の狭さがあると言わざるを得ません。経済のダイナミズムを軽視し、目先の財政均衡を優先する姿勢は、将来的に国民生活をさらに厳しいものにするリスクを孕んでいます。

また、財務省が減税を軽視する背景には、自らの権限を維持し強化したいという官僚機構の論理が透けて見えます。減税は、一時的に財政収入を減少させる可能性があるため、財務省がその選択肢を嫌うのは理解できなくもありません。しかし、この短期的な視点に固執することで、長期的な経済成長を犠牲にしている現状を無視するべきではありません。

さらに、減税には社会的なメリットもあります。たとえば、消費税の軽減や廃止は、低所得層に大きな恩恵をもたらします。現在の税制が逆進性を強く持つ中、減税は所得格差の是正にも寄与します。こうした効果を十分に考慮しないまま進められる増税政策は、国民の支持を得られるでしょうか?答えは明白でしょう。

これまでの議論を踏まえると、減税の可能性を適切に議論の中心に据えることが、日本経済の持続可能な成長を確保する鍵となるはずです。しかし、財務省と石破氏の姿勢が変わらない限り、この議論が進むことは期待できないでしょう。だからこそ、私たち国民が声を上げ、この偏った政策運営にメスを入れる必要があります。

次に進むべきは、減税を含む政策の効果を正当に評価し、透明性のある議論を進めることです。財務省や石破氏が示す「現実的」な道筋の裏にある課題を直視することが、日本の未来をより良いものにする第一歩ではないでしょうか。

結論――国民が求めるべき「真の財政政策」

財務省と石破氏の政策運営には、短期的な目標に偏った視点が目立ちます。私たち国民が今必要としているのは、統合政府の視点に立った透明性の高い議論、そして減税を含む成長戦略の検討です。これを実現するためには、見せかけの数字に惑わされず、本質的な問題に目を向けることが求められます。

◆YouTube:https://youtu.be/bo2dAZpphQw
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※高倉 龍之介(政治フリージャーナリスト・映像クリエイター)


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