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ストイックにアグレッシブに、マイクロファイナンスで世界の貧困問題と向き合う起業家がいる。五常・アンド・カンパニーの慎社長だ。

世界には金融アクセスを持たない成人が17億人いるといわれている。
五常は貧困地域で低所得者、特に女性の経済的自立を支援する少額事業融資などを手掛けている。マイクロファイナンスの先駆者であるバングラデシュのグラミン銀行の名を知る人も多いだろう。グラミンの創設者は「スモールビジネスへの少額融資」の形で貧困に向き合い、2006年にノーベル平和賞を受賞した。

この10~20年で貧困国のインフラとなったマイクロファイナンスだが、多くの課題があった。識字率30%という田舎にまで足を運び、2万、3万円からの少額な融資を人そのものを見て実施する。その人海戦術的な構造ゆえに農村など地域ごとに分散し大きくなりづらく、資金調達的に規模の限界があった。

五常はインド、カンボジア、スリランカ、ミャンマーの4国で、複数のマイクロファイナンス組織を子会社化し、国を超えた連合体を作っている。これで一気に大銀行や世界規模のファンドの融資対象となった。コロナ禍でも強い耐性を見せる。

五常の融資先のなんと99%が女性だ。彼らの事業内容は上位から、

(1)家畜を買う
(2)日用品ショップ経営
(3)内職
(4)農業

「特ににわとり(鶏)を買うのはリターンが良くおすすめです」と慎社長が例をあげ、以下のように解説してくれた。

●鶏は一羽500円。
●羽が1年間で200個の卵を産む。
●途上国でも卵は1個10円で売れるので、一羽が年間 2000円を稼ぐ。
●ケージは要らず、適当に網を立ておけばよく、エサもその辺にある。
●100羽買って1年間育てると、5万円の投資に対し20万円分の収入になる。
➡︎➡︎ 年間のROI(投下資本利益率)は300%だ。

「しかも家畜は日照りや洪水の時、一緒に逃がせるんですよ。稲には足がなく逃げられないのに対し。」
・・・なるほど、家畜は「動産」なのだ。

慎社長は現地に頻繁に出向く。農村の金融事情を、彼らと地べたに座り、
寝食を共にしながら感じ取っている。インドのキラナショップ(日用品を売る路面店)は意外に在庫回転率が高いことが、彼は肌感覚で分かっている。その上で「貧困地域の資本の限界生産性が高いのは人件費の安さに起因する」とシャープに分析してくれる。

なんといってもこの多国籍マイクロファイナンス連合体が、東証で上場を目指すところに夢がある。複数のSDGs目標達成に挑むこのフィンテック・スタートアップを通して、日本人が株式投資の形で応援できるからだ。

人類史上最大級の資本流動性を、それが必要だが届いていない人たちに、
五常が日本資本市場の力を使って届けようとしている。



[日経産業新聞 Smart Times「貧困地域へ資金を束ねる」
 2021年5月17日付]

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