海外投資規制や、海外投資におけるKYCについて
実務にタッチしていないとピンときにくい話だが、実は大きなネックになっていることとして、このKYCがあげられる。
世界中でどんどん規制強化されているのだ。
例えば当社には、13年に設立した海外投資専用のファンドがある。(わずか20億円のファンドだがアジア中のfintechに複数リード投資して3社ユニコーンが出せることが見えている。GMO Global Payment Fund)
しかしこのファンド、日本の投資家から募集し、ケイマン籍等の外国ファンドだとファンド投資出来ないという声も強かったので、国内設立のファンドで海外投資ファンド、ということで消去法的に任意組合(NK)という形式に落ち着いた。有責組合(LPS)だと海外に投資出来る上限が50%なので(これが今回の記事の「規制」だ)選択出来なかった。NKには海外投資規制などがないからだ。
しかしNKの弱点は2つある。
1 ファンド出資者(LP)は無限責任であること。これを嫌って出資しない機関投資家もいるし、社内決裁に多大な労力と長大な時間を要することもあった。
2 法人格がなく登記されない(よって、公的な登記簿、がない)
1もファンド募集時には逆風になるが、投資活動における問題は2である。
登記簿がないとどうなるか。
例えばシンガポールのスタートアップに投資するときに当局(の意向をうけた弁護士等)が、
「ファンドの実在性を証明するものを提出してください」と言ってくる。
何ですかと聞くと、「登記簿とか、あるでしょう」となる。
そこで「日本のNKというファンドは登記簿がないんですよ、あったとしても日本語ですけど。」と回答すると、それでは投資出来ないです、という押し問答になるのだ。
ちなみにベトナムだとこれが理由で投資出来なかったこともある。
LPSなら登記簿がある。それならいいかと聞くと、英訳してそれを弁護士に証明してもらえ、とか、公証してくれ、等となる。
現場では、投資条件の交渉やDDが佳境なときに、こういうやりとりをしている余裕はないのだ。
しかもこの規制(KYC)強化傾向は、どの国でも年々加速しているのである。背景にはグローバルなテロ資金を根絶するとか、米中対立とかいろいろある。
ここまで書けば読者のみなさんはお気づきだと思う。
グローバルな投資促進のためには、海外投資比率を撤廃すること(今回前進するようだ)、登記を英文でも出来るようにすることが(課税まわりとか他にも多々課題があるが)まずは入口として必須な打ち手であると。
人口500万人の小国シンガポールにグローバルな資金とアジア中のメガスタートアップの登記上の本社機能が集まっているのには理由がある。登記が英文でオンラインで即日出来るのだ。税制等他にもあるが、現場の実感としては何といってもこれが大きい。
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